四さまの子育て奮戦記 2
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「う…寒…」


寒さに目覚めれば、窓は全開されており、そこから射し込む陽は既に高く昇っている。


「な、何で窓が開いてるの?」


晴れているとはいえ、冬の陽射しは弱い。
部屋を暖めるべく窓を閉めたところに、カカシが入ってきた。


「あ、センセ、おはよう」
「おはよう、カカシ。もしかして窓開けたのカカシ?」
「うん…お酒くさかったから…」
「え? そんなに臭う?」
「部屋の中、じゅうまんしてた…」

「…そっか…ごめん…」



シャワーを浴び、埃と汗を流し出てみると、カカシが待っていた。


「どうしたの?」
「センセ、薬とかいる?」


ちょっと心配そうに聞いてくる。そのつぶらな瞳の可愛いこと!


「ん、大丈夫だよ」


きっとカカシは二日酔いのことを心配したのだろう。その後もいろいろと聞いてくる。


「ごはん、食べれる?」
「んー、今はいいかなぁ?…コーヒーが飲みたいな」
「わかった」


とてとてと台所へ向かう。慣れない手つきで入れる姿はどことなく愛しく感じる。


「あ…あのさ、センセ…」
「なあに?」


コポコポと音を立ててコーヒーが入る。やけどをしないようにと、ちょっとハラハラしながらあぶなっかしい手つきを見守る。


「…オレ、やっぱりベッドいいや」
「そう?…じゃ何か他に欲しいモノある?」
「ううん…ない…」
「遠慮しないの」
「え…と、あの…じゃあ、いつか修行みて…?」
「ん、お易いご用だよ。今日は夕方から任務入ってるから…次の休みにね」


うん、と嬉しそうに笑うカカシ。
いつもそういう笑顔が見られたらいいね。君はいつも大人びたふうを装っているからね。



そして休みの日。

約束通り修行を見てやる。

カカシは素直にオレの教えを吸収する。体術や忍術を使う時の癖なんかもオレに似てきている。
この春カカシを下忍チームに組んでから、特に伸びやかに成長した。



たとえ中忍とはいえ、子供のカカシを大人の中に置いといては、カカシは心を閉ざしたまま成長してしまう。そう危惧したから、中忍になっていたカカシを、年の近いオビト達とチームを組ませた。
もちろん、三代目に相談してからだけど。
実際、組ませて良かったと思う。やはり、子供同士。ケンカしながらも良い影響を与え合っている。



一通り修行が済んだあと、本日のメインプログラムに移ることにした。

──メインプログラム──

そう、今日はクリスマスだ。カカシはあまり興味はなさそうだけど、子供にとっては楽しみなイベントの一つだろう。
オレは、またカカシの屈託のない笑顔が見たくて、密かに準備していた。
帰り路、あちこちの商店で買い物をして帰った。



家に着いたら、汗を流すべく二人でお風呂に入る。
何故二人で入るかというと、スキンシップというのもあるけど、ケガの確認というのもある。なんせカカシは、ケガしたこと報告しないからね。こうして確かめているわけ。
スキンシップもとれるし、一石二鳥でしょ?

ケガの確認もし、よーく暖まったところで出る。そして二人で夕飯の仕度。




「あれ?センセ、野菜の天ぷらなんて食べるの?(クリスマスに天ぷら?)」
「んー、野菜はカカシに任せる。オレはエビとイカ食べる」
「えー」


テーブルにてんこ盛りに盛られた天ぷらが並ぶ。それと同時に大きなクリスマスケーキが2つ。


「…センセ…これ、二人で食べるの?」
「そ!」


油っこい匂いと甘い匂いが混ざり、胸やけがするようだ。


「センセ、ちょっと待ってて」


そう言うと、匂いから逃げるように台所から出て行く。が、直ぐに細長いリボンのかけられた箱をちょっと重そうに持ってきた。


「あのね、今日クリスマスでしょ? だからこれ、センセにプレゼント」


はい、と言って手渡される。


「わ、ありがと、カカシ」


開けてみれば、それはお酒だった。


「な、何にしようかと思ったんだけど、センセの欲しいモノわかんなかったから…。この間センセいっぱい飲んでたから…」


子供のカカシが酒屋で酒を買うなんて大変だったろう。普通は売ってくれない筈。聞けば偶々通りかかった奈良に助け舟を出してもらったらしい。後でお礼を言っとかなきゃな。


「ありがとう、カカシ。大切に飲ませてもらうよ」


ニコーッと嬉しそうに笑った。うん、こういう顔が見たかったんだよ!

さて、貰ってばかりはいられない。オレもカカシにプレゼントを渡す。


「はい、これはオレからカカシにプレゼント」


読書好きのカカシに本をプレゼントした。あんまり色気のないものだけど。


「ありがと、センセ。大切にする」


こんなものでもカカシは嬉しそうに笑ってくれた。




ここまでは良かったんだ、ここまでは!

この後、二人で食事をしてたら、だんだんカカシの顔色が悪くなって来て、とうとう洗面所へと駆け込んでしまった。
そこで苦しそうに吐いている。背中を摩ってやりながら大丈夫か聞くと、首を横に振った。
戻すだけ戻した後、脱水症状になるといけないから、ポカリを飲ませ(水は吐き気があるときに飲ませると余計に吐く)、寝かしつけた。


その日以来、カカシは天ぷらとケーキ(というより甘いもの)は食べなくなった…。




子育てって難しい。




そう実感したクリスマスだった。






end.
06.12.18




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