愛弟子 2
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翌日、アカデミーの屋上で待ち合わせをした。
カカシ君は集合時間の10分前に現れた。ん、ちゃんと寝坊しないで来れたね、えらいえらい。


「ん、じゃあ今日の予定を言うね。これからお昼までオレと鬼ごっこをやるから。カカシが鬼で、お昼までにオレを捕まえること。どんな手段を使ってもいいよ」
「もし、捕まえられなかったらアカデミー戻り?」
「ん〜、どうだろうね? それじゃあ始めるよ」


オレは瞬身の術を使ってその場から消えた。
三人いれば、鈴取りさせたんだけどね。かつてオレが下忍認定試験を自来也から受けた時みたいに。



移動した場所で暫く待っていると、カカシがやって来た。よく此処が分かったな。
まあ、気配は消してないけど、普段から気配が薄いと言われているから、卒業したてのカカシに気配を読むのは難しいと思ってたんだけどな。


すると、カカシは手裏剣を投げてきた。キラリと細く光るものがあったから、糸を繋げているんだろう。
だけど、そんなんじゃオレは捕まえられないよ?
するりとかわしたら、バッチリカカシと目が合って、オレはまた移動する。いくら可愛いカカシ君といえど、そう簡単に捕まってあげる気はないからね。
それに、オレはまだ迷ってるんだ。まだ5歳のカカシを忍にしていいものかどうか。あのサクモさんだって、下忍になったのは自来也と同じ6歳だし。


そんなことを悩みながら、少しずつ移動を繰り返し、いつの間にか街中に入って来ていた。ちょうどお昼時で、至る所から食事を作るいい匂いがしていた。

と、前方からカカシが向かって来るのが見えた。
オレの移動の仕方から、移動ポイントを見つけたのかな?
感心していると、ふとカカシが上を見上げたかと思うといきなりジャンプした。
上には三階のベランダから落ちかけている幼子がいた。カカシがジャンプした時、ツルッと幼子がベランダから落ち、なんとかカカシがその子を抱きとめたが、バランスを崩した。急いで二人を受けとめ着地したけど、幼子は驚きわんわん大きな声で泣き出した。
その声で母親が気づき、慌てて出てきて我が子を抱き取った。お昼の支度をしていて目を離した隙の出来事だったらしい。母親は何度もお礼を述べ、帰って行った。


「じゃ、オレ達もお昼にしようか」

カカシの頭をくしゃっと撫でながら言ったが、カカシは俯いたまま何も言わなかった。

カカシを抱えあげ、お気に入りの場所へとやって来たオレは、持ってきたお弁当をカカシに渡して腰を降ろした。
カカシは黙って受け取ったけど、俯いたままだ。

「どうしたの? お腹空いたでしょ? 食べていいよ」

カカシはそれでも顔を上げず、暫くしてようやく口を開いた。

「オレ…アカデミーに戻るの?」


お昼までに捕まえられなかったし、どころか反対に抱きかかえられちゃったしね。気になるのは仕方ないよね。
だから、こっちも気になっていることを聞くことにした。


「んー、その前に聞きたいんだなけど。カカシ君、オレに追いつくのけっこう早かったよね? さっきは先回りもしてたみたいだし。どうしてオレの居場所が分かったの?」

「え…と、匂い…」
「匂い?」
「うん…センセの気配って、父さんと一緒で感じにくかったから…でも、匂いは残ってたから、それで…」
「匂いを辿って追いかけたってこと?」
「うん…。父さんとも時々かくれんぼしたりしてたから…。その時も匂いで場所見つけたりしてたから」

犬みたいだなって思った。

「カカシは鼻がいいんだね。驚いたよ。でも、さっきの子は? あの子はオレが助けるとは思わなかったの?それにあの子をほっといてオレを捕まえようとは思わなかったの? 捕まえたら合格だったのに」
「あ…そんなこと考えなかった。とにかく助けなきゃって…。そっか…センセが助けるって思わなかった…。考える前に動いてたから…」
「そっか…ん!合格」
「へ?」

カカシは大きな目を見開いてオレを見上げてきた。

「オレ、センセのこと捕まえられなかったよ?」
「ん、確かにね。今日のカカシがやらなきゃいけないことは、オレを捕まえることだからね。任務に於いて依頼された内容をきちんとやるのは基本中の基本で、それから外れるのはもってのほかなんだけどね。だけど、忍ってのは任務を忠実にこなすだけが忍じゃないんだよ。例えばさっきのカカシ君みたいにね。忍は瞬時に…瞬時というのはあっという間という感じかな、判断しなくちゃいけない場面がたくさん出てくるんだ。だから、その判断力というのが必要になってくる。カカシ君はそれが出来たからね。だから、合格」

そう言うと、カカシはにっこり笑った。


カカシのあの判断力は大したものだと思う。5歳という年齢を考えてもだ。普通なら見上げて指差すか、大声を上げる程度だろう。
それをあの小さな身体で助けようと動き出したのは大したものだ。


カカシは同年代の子ども達とチームワークを学ぶ機会を逸してしまったが、それはオレが教えてやろう。
いや、それだけじゃない。忍の全てを、オレの持っているもの全てを教えてあげる。



「明日から任務だからね。頑張ろうね、カカシ君」

「はい! よろしくお願いします!」



こうしてオレの手の中に、オレの大切な光の子がやってきた。



08.06.08





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