夫婦喧嘩 24
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少しして先ほどカカシ達の元に駆け寄って行った者が複雑な顔をして戻ってきた。


「あの…、キハダ様方の演奏ではなく、シン様の演奏が聴きたいとの事なんですが…」
「私の?」


シンがカカシ達を見れば、カカシは別としてカイ達兄弟がニヤニヤと笑っていた。


「へぇ…聴きたいってばよ」
「私の演奏など、火影様にはお耳汚しにしかなりませんが…」


とりあえずカカシ達がもう一曲披露してから、一曲奏でましょうという事になった。
カカシ達が演奏してる間、ナルトはカカシだけを見ていた。この後、何とかしてカカシと会って誤解を解きたい。そして謝って。許してくれるまで何度でも。


「何か気になる者でもおりましたかな?」
「へっ?」
「いや、あまりにも真剣に見られていたので…」
「ああ…、ごめんってばよ。った…」


不意に軽く頭を殴られた。振り替えればサクラがナルトを睨んでいた。


「ナルト、なんて言葉遣いしてんの! 失礼でしょ!」
「はは…構いませんよ。あまり畏まれると、こちらまで緊張してしまいます。どうぞお気楽に願います」
「…すみません…」
「ありがとだってば」
「ああ、演奏が終わったようですね。シアン!」


シンはいきなりカカシを呼んだ。ぎょっとするカカシ。嫌な予感が走る。


「シアン、笛を持ってこちらへ」


カカシはひきつった顔を見せるが、カイに促されてゆっくりとシンの元に来た。カカシはこんなにも近くに来たというのに、ナルトとは目を合わせようともしなかった。


「シアン、笛を…」


カカシは笛を渡すと引き返そうとした。ナルトの近くに出来ればいたくなかった。
どんな顔をすればいいのか分からない。ナルトと目を合わせるのが何となく怖かった。
が、そんなカカシをシンが引き止めた。


「ここにいなさい。私の隣に」


そう言って隣の席を指し示す。嫌そうな顔を隠しもせずにカカシが座る。
普段ならそんな顔はせずにいたのだろうが、今は少年らしい、そんな態度だった。
ナルトはそんなカカシが珍しく、また、近くにカカシが来た事で緊張もしていた。
いつ話そう。どうやって話そう…。
そんな事ばかりが頭の中を駆け巡った。
そんな中、シンの演奏が始まる。優しい調べのどことなく懐かしさを感じる曲であった。
曲がサビにきた時であろうか、それまで俯き加減だったカカシの顔が上がった。そして懐かしそうに目が細められる。
実際カカシにとって懐かしい曲であった。まだ本当に幼い頃、父サクモが時折口ずさんでいた曲だった。幼すぎた為僅かにしか覚えていなかったが、確か母の好きだった曲だとサクモから聞いた記憶がある。
懐かしさに目を瞑り曲に聞き入っていると、床下に潜んでいた者の動く気配を感じた。大分前から潜んでいたのには気づいていたが、何かあれば警備に来ている里の忍達が動くであろうし、傍にはナルトもいる。シンの安全は確保されている。ま、オレもいるしね、とのんびりと構えていた。
演奏が終わった途端、それは襲いかかってきた。カカシに。


「覚悟めされよ!」

へっ? オレ!?


てっきりシンを襲うものと思っていたカカシは一瞬呆気に取られる。
ヒュンッと音を立ててクナイまで飛んで来る。
キン!と金属の弾ける音と共に、斬りかかって来た男がカカシの手によって取り押さえられた。


「誰、あんた?」
「くっ…」


ほんの少し力を入れれば、小さな呻き声をあげた。


「シアン、そのくらいにしてくれないか」
「キハダ様…。だから申しましたのに…」
「はは…すまぬ」


二人の様子にカカシは取り押さえた男を放した。


「驚かせてすまなかった。彼は私の剣術の師匠でね。シアンの実力を量る為にこんな事をして頂いたのだよ」
「オレの、実力?」
「すみません、お話はその辺にしてもらえませんか? 彼の手当てをしたいのですが」


サクラが話に割って入る。カカシの肩にクナイが突き刺さっていた。
先ほど斬りかかられた時、警備していた忍から放たれた物。カカシにとって避ける事など造作もない事だが、今は“お小姓のシアン”なのだ。だから、敢えて避ける事をしなかった。
一度男の刀によって弾かれている為、そんなに深く刺さっているわけではない。サクラは手当てをしながらお小言を繰り出した。


「全く、何でこんな無茶をするんです?」
「無茶なんてしてないでしょ?」
「こんな怪我をして、どこが『無茶してない』んですか!? 傷が浅かったから良かったものの、下手をしたら動脈だって傷つけかねないんですよ?」
「いや、そんなヘマは…」
「とにかく! 暫くは腕を動かさないでください。それと、他に身体の調子が悪い所はありませんか?」
「…無いよ」
「ホントに?」


うんと頷くカカシに、声を潜めて忍にしか聞こえないであろう声でサクラが囁く。


「カカシ先生…」


あらら…、オレだってバレちゃってるのね…。ま、当たり前か。まんま若くなっただけだもんねぇ。
のほほんとそう思う。
そんなカカシに、ナルトが近寄ってきた。








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