夫婦喧嘩 23
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シカマルに諭され、半ば強制的に屋敷へと帰ったナルト。
ベッドへ潜り込んでもカカシを想い、ジタバタと暴れていた。


「何でだってばよ…」


ナルトはドッグタグと指輪を見つめる。


「…先生、誤解なんだってばよ…」


頼むから別れる覚悟とかしないでくれ…。


「愛してるってば…」


カカシにこの想いが届くようにと祈りながら指輪に口づけた。





暫く経ったある日、カカシから経過報告が入った。
侵入形跡無し、毒薬発見の報告。毒薬入手経路調査中の簡単なものだったが、ナルトにとって久々に感じるカカシの匂いだった。
何度も読み直してしまう。愛しい人に触れられたような気がする。
愛しげに寂しげに報告書を見つめるナルトに、周りの者達は苦笑を溢す。
それでも何も言わないのは、ナルトの気持ちが痛いほど分かってしまうから。
愛する者に色任務を間違いとはいえ渡してしまった後悔。どんな想いで任務遂行しているのかと思うとやりきれない。取り消す事も出来ず、謝る事さえ出来ず。
そんな苦悩を抱えて過ごしていれば、カカシの任務先の大名から招待状が届く。
カカシが笛の練習をさせられている月の宴の招待状。警備の依頼と共にナルトに齎された。
カカシに会える!
その喜びにうち震えた。
これでこっそり会う事なく、堂々と会う事が出来る。この任務が手違いだったと伝える事が出来るかもしれない。たとえ任務の取消は出来なくても、ひと言、謝る事が出来る…。少なくともカカシの誤解は解いておきたい。
会えれば何とかなる。
ナルトはそう信じていた。



そんなこんなで浮かれ気分のまま宴にやって来たナルトは、カカシに会うのは至難の技だと思い知るのであった。
チラリと見かけた白銀の髪の少年。その少年はナルトを見ると、どこかへ消えてしまった。
あれ?カカシ先生?
ガキの姿だったけど、あれカカシ先生だよな? なんで避けるんだってば?
“避ける”と思った通り、逃げるようにその場を離れたカカシ。
それからは大名との挨拶、招待客との挨拶となかなかカカシを探す時間も取れない。
庭に設置された月見の席で酒を酌み交わしながら、ナルトはカカシの事ばかり考えていた。


「如何なさいました? 火影殿」
「あ…いや、綺麗な月だってばよ」


ナルトは、ハハハと笑ってカカシに想いを馳せていたのを誤魔化す。


「本当に。今宵は月の下でちょっとした演奏もありますので、楽しみにしててください」
「演奏?」
「我が子達の演奏ですが、この日の為に練習してきたんですよ」
「楽しみだってばよ」


じゃあ、その演奏の隙にカカシ先生を捜すか…。
そんな事を考えていれば、数人の若者が楽器を携えてやって来た。その中に銀色に輝く髪の少年もいる。
カカシ先生!
やっぱりカカシ先生だってばよ! なんでガキの姿なんかに変化してるってば…?
ああ、可愛いな。
あの姿も可愛いけど、やっぱり大人の方がいいってばよ。
先生、こっち向けって。
ナルトの視線は感じているだろうに、カカシは決してナルトの事を見る事はなかった。
演奏が始まる。
数人分の音が奏でられてる筈なのに、カカシに釘付けのナルトにはろくすっぽ聞こえてはいなかった。
カカシ先生、笛吹いてる。笛吹けたんだな…。帰って来たらもっとよく聴かせてもらおうかな…。
そんな事を考えていると、笛のソロに入った。
静かな流れの曲だった。
なんかカカシ先生みたいな曲だってば。
もっと聴いていたかったのに、合奏に入ってしまった。けれども一度カカシの音が耳に入ってしまったナルトには、カカシの音色がよく聴こえた。というより、カカシの音色しか耳に入らなかったというのが正解だろう。
パチパチと拍手が聞こえる。いつの間にか演奏が終わっていた。遅ればせながらナルトも拍手を贈る。素晴らしかったと愛を込めて。


「素晴らしかったってばよ」
「火影様にそう言って頂けるとは、光栄ですな」
「もっと聴きたかったってばよ」
「これはこれは…それほどお気に召して頂けるとは思いませんでした。では、リクエストにお応えして、もう一曲披露いたしましょう」


そう言う側近の者がカカシ達の元へ駆け寄って行き、今の成り行きを伝える。
カカシがあからさまに嫌な顔をしている。カイが何やら言ってカカシの頭を撫でている。きっと宥めているのだろう。
ナルトは、その仲良さそうな様子に少しムッとする。
カカシ先生はオレだけのもんなのに! 触るなってばよ!
そうして睨んでいると、横から小突かれる。
サクラである。サクラはお付きの者としてシカマルとともにこの宴に参加していたのだ。
ナルトの暴走を食い止める為と、カカシの体調の確認の為に。
忍術で子どもにされているカカシには、それなりの負担がかかっている。それに毒薬の事もある。綱手からそれとなくカカシの様子を診てくるよう頼まれていた。


「ちょっと、自制しなさいよ」
「痛いってばよ、サクラちゃん。分かってる…」


ナルトは大人しく成り行きを見守っていた。









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