ニャンともわんダブル 3
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抱いていいと言われて、はいそうですかと抱けるわけがない。
猫語で話す少年カカシは可愛くて堪らないが、カカシの事を死なせたい訳ではない。
ナルトは抱いていた腕をゆっくりと離した。


「…何もしないってばよ…。でも、オレはカカシ先生の傍にいたいから…、一緒に寝させてくれってば…」


ナルトはカカシと少し離れた所に横になる。このままくっついていたら、何もしないという保証は出来なかった。だが、別室でというのは淋しすぎる。せめて一つのベッドで。そう思った。
カカシからの(いら)えはなかった。が、先ほどのような拒絶はなく、ゆっくりと目を瞑れば静かな寝息が聞こえてきた。それにほっと息を漏らし、ナルトもまた眠りについた。
暫くすると小さな声が聞こえた。空耳かと思いきや、再び聞こえてきた呻き声のような啜り泣きのような声。


「カカシ先生?」


カカシを覗き込めば、左目から涙を流し泣いていた。そんなに悲しい夢でも見ているのだろうか。ナルトはそっとカカシの涙を拭った。
それで目が覚めたのだろうか。カカシの色違いの瞳が開く。それでもまだ夢の中を漂っているのか、ぼうっとした目でナルトを見ている。


「夢見たのか?」


そう言って頬を撫でれば「センセ…」と呟いてまた一筋涙を流した。
その瞬間、グサリと冷たい刄がナルトの胸を突き刺した。その冷たさに身体が凍って動けない。
ナルトを見ていた悲しげな瞳はゆっくりと閉じていき、カカシは再び夢の中へと帰っていった。

分かっている。
分かっていた。どんなに愛そうと、肌を重ね愛を囁いても、カカシの心は自分には無いと──。
あの優しい笑顔は、心の奥底に踏み込ませない為の堅く結われた(しめ)なのだ。
でも、それでもいいと思っていた。そんなカカシが好きだと思っていた。
けれど、そんなのはただの思い上がりだ。
愛したのなら愛し返されたい。その総てでもって。
ナルトは眠っているカカシに口づけた。
愛してる。
愛してる。だからオレの事も愛して。
そんな切ない思いだった。
その口づけにカカシの睡眠は破られた。驚きに目を丸くするカカシ。逃れようと逃れられず、やがて諦めてカカシは身体の力を抜いた。
それを了承と取ったのか、ナルトはカカシの首筋に唇を移し、愛撫を始めた。


「やだ、触らにゃいでよ…」
「していいって、さっき言った」
「…言ったけど、このままじゃ嫌にゃ。術を解いて元の姿に戻してくれ。ガキの頃の姿にゃんて嫌にゃ…」
「解いたらカカシ先生猫になっちまうってば?」
「術を掛けた本人にゃら大丈夫にゃ…」
「そうなのか?」
「多分…」
「多分って…、ホントに大丈夫なのかよ」
「試してみれば?」
「解術の印が分からねぇ…」
「巻物に書いてあるでしょ」


少々呆れて言えば、ナルトは巻物を取りに部屋を出て行った。その背中を見送り、ほっと息を吐く。
このチャクラ切れの状態で身体を少年に変えられ、その上でセックスなんかしたら確実にあの世逝きだなと思う。そして、それでもいいや、と思ってる自分に苦笑する。
しかし、死んでもいいと思いながら、この少年の姿で抱かれるのだけは嫌だと思う。
この姿はミナトのものだ。
ミナトに愛された身体で他の者に愛されるのは嫌だ。
そう思っていると、ナルトが巻物を持って戻って来た。
が、直ぐに解術はせず、じっとカカシを見つめている。どうしたの?と不思議に思い小首を傾げてナルトを見れば、ナルトはヘタヘタと座り込んでしまった。


「先生ってば、どうしてそんなに可愛いんだってばよ…」
「また始まったよ」
「しょーがねぇじゃん、ホントに可愛いをだから。…なんかもったいないな、元に戻しちまうの」
「…お前は偽りの姿の方がいいにょか?」
「へ?」
「この姿はオレであってオレじゃにゃい…。そんにゃ偽りのオレがいいにょか?」
「偽りって…」
「ああ、それともやっぱり若い方がいいか…。こんにゃおっさん抱くより」
「そんな事ないってば!若いからとか、おっさんだからとか関係ねぇってば! オレはカカシ先生だから、どんなカカシ先生だって抱きたいって思うってばよ!」


カカシは困ったように微笑むと、ナルトから目を逸らした。
そうは言われても、やはり若い方がいいのではないかと思う。
それに──。
ナルトはオレに飽きたんじゃないか? だから少年にしたり、猫耳をつけたりしたんじゃないか?
多分…きっとそう…。
いつかナルトがオレに飽きる時がくる。それまで……。そう思って付き合ってきたけど、いざその時が来ると辛いものだな…。


「先生、今、変な事考えているだろ?」
「え?」


思考が中断されナルトを見れば、少し厳しい顔をしてカカシを見ていた。
ナルトはカカシと目が合うと、おおげさにため息をついた。



「オレには先生だけって言ったの、信じてねぇの?」








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