夫婦喧嘩 18
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翌朝、静かに隣にあった温もりが離れていくのを感じ、目が覚めた。
だるい…。
夕べ散々貫かれたせいなのか、捻挫したせいなのか、熱も出ているようだった。
まずいな…これでは調べが出来ない。
解熱剤も普通のでは自分には効かない。
持ってきた薬はズボンのポケットの中。昨日転んで泥だらけにしちゃったもんなぁ…。解毒剤どうしよう?
腰痛い。
熱のせいか考えがまとまらない。
もそりと動いたカカシに気付いたのか、ボーッとした目をしているカカシの元にシンが戻って来た。


「起きたのか」


声を掛けても返事をしないカカシに、眠いならもう少し寝てなさいと声を掛け、優しくカカシの髪を梳く。


「ああ、熱があるな。夕べ、無理をさせ過ぎたか…」

シンが苦笑しながら呟けば、カカシは困ったように眉を寄せた。
そこへコンコンとノックの音。入れとシンが声を掛けると失礼しますとハナが入って来た。


「ああ、ハナ。シアンに解熱剤を頼む。夕べ無理をさせ過ぎた」
「はい、かしこまりました」


ハナに夕べセックスした事がバレてカカシはいたたまれないが、ハナは平然としている。
慣れているのか、はたまたさすが女官長と言ったところか。
シンが出て行くと、ハナは寝ているようにカカシに言うとシンの後を追って出て言った。
カカシは一応この部屋も調べておくかと、ゆっくりと身体を起こす。
いるのね…精力絶倫な奴って…。
腰の痛みにため息が出る。
ミナトといいナルトといい、オレが気を失うまで止めなかったし…。
世の中、どんだけいるんだ?これが毎晩続いたら、オレ絶対壊れる。
里にいた時もナルトに毎晩のように可愛がられていたのに、ここに来てそう思う。
前提が違うからだろう。愛されての愛撫と、性欲処理の道具では天と地程に受ける方の負担が違う。
嫌だと思うのに、反応を示す己の身体に情けなくなる。反応を示さなければ任務にもならないのだが…。
…ナルトはオレが誰に抱かれても悦ぶと思っているんだろうな…。
実際、身体だけはシンの愛撫に応えて射精した。心を伴わない快楽のなんと虚しいことか。
カカシはベッドの上で項垂れた。

少ししてハナが戻って来ると、カカシは薬を飲まされた。効かないからいらないと言っても、三白眼で睨まれ渋々飲んだのだ。まるで里にいる女傑のようだという感想を残して。


「お薬は飲みましたね? ては、お身体をお拭き致しましょう」
「え? 拭く?」


ハナについてきた侍女がお湯で絞った温かいタオルでカカシの身体を拭き始めた。カカシは慌てて身体を捩る。


「じっ自分で出来るからっ!」
「恥ずかしがる事はありませんよ。今までシン様のお相手をした人達も、こうして拭いて差し上げたのですから」


それに、お身体だるいでしょう? とハナに言われてしまった。
いくら何でも恥ずかし過ぎる。確かにだるいけど、そこは黙ってて欲しかった。
とにかく侍女からタオルを取り上げ、自分で拭くからと真っ赤な顔で断った。
足の怪我さえなければ逃げ出せたのにと、ちょっぴり後悔するカカシであった。
あーあ、一般人装うのも楽じゃないな…。
身体を拭き終わると何故か寝間着を渡された。首を傾げると、お熱がありますからと言われた。


「いや、オレ病人じゃないし」
「ですが怪我人です。お薬を取り替えますから、こちらのソファに座って頂けますか?」


ハナの言葉はお願いだが、逆らえない強さがそこにはあった。
この屋敷で使用人達を取り仕切り、命令することに慣れた者が持ち合わせるものなのだろう。カカシは大人しくびっこをひきながらソファに腰掛けた。
ハナが湿布を取り替えてる間に侍女がシーツを取り替える。情事の跡が残るそれを見られるのはいたたまれない。が、侍女は慣れているのか、躾が行き届いているのか顔には何も現さず、シーツを新しくすると二人に頭を下げ、出て行った。


「シン様はシアン様がずいぶんとお気に召したようですね」
「オレを?」
「はい。シアン様はアミ様によう似ておいでです。もしかしたらあなたにアミ様の面影を重ねてらっしゃるのかもしれません」
「アミ様? 確か妹御でしたね?」
「はい。腹違いの方なんですが、シン様は大変可愛がられておいででした」


ハナは優しい顔で、昔を懐かしむように微笑んだ。


「今回、シアン様がお使いになられてる部屋も、元はアミ様のお部屋でした」
「そんな大切な部屋をオレに?」
「はい。ですから、かなりシアン様をお気に召されたのだと…。ここは元々はアミ様のお屋敷だったのです。それをご長男のキハダ様が成人なさったのを機に、こちらにお移りになられたのです」


亡き人との思い出の場所。愛しい人の面影を求めて移り住んだのだろうか。
その気持ちは何となく判るなと思った。カカシもミナトとの思い出の場所にたまに訪れては、思い出に浸る時があるのだ。
そんな事を思った時、ふとシンはどことなくミナトに似ているかもしれないと思った。
髪も瞳の色もまるっきり違うというのに。



いつまでもミナトを求めてしまう自分に、カカシは苦笑を溢すしかなかった。







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