夫婦喧嘩 14
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ハナは優しく微笑みながら、それでも周りに聞こえないよう注意を払いながら話始めた。


「あなた様はお亡くなりになられたアミ様によう似ておいでです。アミ様は、この屋敷の主シン様の妹君であらせられました。お子をお産みになられて儚くなられてしまわれたのですが…」


カカシは自分の正体がバレたのではないと分かりほっとした。
そういえば、母さん身代わり任務をしていたんだっけとぼんやりと思い出す。


「守り袋を渡されなければ、行方不明のお子がお戻りになられたのかと…」


ほほ…と笑いながら滲んだ涙を拭うハナ。


「お幾つでらっしゃいますか?」
「16」
「え?」


目を丸くしてカカシを見るハナ。カカシはそんな彼女を少し首を傾げて見つめる。
そんなに驚く事だろうか? それとも、何か変な事を言ってしまったのだろうか?
そう顔に出して。
そう、この任務はそういう設定で潜入したのだ。その方が警戒を解きやすいだろうと綱手の助言もあった。
もしかしたら…の思いをハナに植え付けて。


「まあまあ、失礼致しました。シン様にお引き合わせしますね」


ハナはそう言うと松葉杖を渡しながら歩けますかと尋ねる。それに頷く事で返事を返しながら護衛の件ですがと依頼内容を聞く。


「はい。シン様は為政者ですから、それなりに狙われもします。それは覚悟もされてますし、外ではちゃんと護衛もつけてらっしゃるのですが…。屋敷の中まで護衛はいらぬと仰られて、護衛を付けてはくださらないのです。わたくし共は何度も付けるようにお願いしたのですが、聞き入れてはくださいませんでした」


確かに丸一日監視されていては気も休まらないだろう。家にいる時くらいリラックスして過ごしたいに違いない。
それを思うと、ナルトはよく我慢をしていると思う。火影の護衛はトイレ中は別としても、入浴時、果ては就寝時も張り付いているのだ。プライベートなんて無きに等しい。
まあ、暗部達が完全に気配を断っているから、見張られて…というのは語弊があるが、警護されていてもそんなに気にせずに済むのだろうが。
しかし、セックス時も覗かれているのかと思うといたたまれない。ナルトは滅多に結界を張らないから。代わりにカカシが結界を張るのだが、張る前に阻止される事も度々ある。
あれは絶対わざと暗部に聞かせる為にやっているのだ。そう思うと自然と顔が赤くなってくる。
まったく、任務中に何考えているんだ!
カカシはふるふると首を振って、ナルトの事を思考から追い出した。
それに気付いたハナがどうしました?と聞いてくる。


「何でもありません。すみません、続きを…」
「お顔が赤いですね。お熱が出てしまったでしょうか?」


ハナはカカシの額に手を伸ばしてくる。それを大丈夫と遮り、話の先を促すカカシ。
ハナは心配そうにしながらも話を続けた。
ここ最近の事、シンの小姓が相次いで亡くなっているのだ。その者達は皆身寄りの無い者達ばかり。また、シンが特に可愛がっていた者も含まれていた。
いずれも少しずつ体調を崩していき、それから亡くなっている為、最初は病死と誰も疑わなかった。が、それが次々と同じ死に方を繰り返すと、さすがに疑いを持つ。これまでに3人亡くなっている。
今は小姓で済んでいるが、シンが狙われないとも限らない。毒見の者はいるが、今のところ誰も毒に当たっていない。
警護の者も付けられない為、屋敷にいる間だけ護衛をお願いしたい。
ハナはそう語った。


「本当は死因が解れば対策も立てやすいのでしょうが、シン様が解剖を良しとされなかったので原因はうやむやのままなのです。やりにくいとは思いますが、シン様をお護りください」


そう言ってハナは頭を下げた。カカシはそれに頷き返す。
直ぐにシンの部屋の前に着いた。ハナがノックをすれば入れと声がする。
カカシにここで待つよう言うと、ハナは中へ入っていった。
少ししてお入りくださいとハナが顔を出す。中にはシンとカイが待っていた。
カカシの顔を見ると、シンは少し驚いた顔をしたが、すぐ笑顔を見せた。


「そなたがシアンか? カイがすまない事をした。ケガが治るまでゆっくりしてくれ」


うん、と頷きながらカカシは小首を傾げる。初めて会う人間なのだが、どこかで会ったことがあっただろうか? もしくは見かけたか…。


「どうかしたのか?」
「…何でも…ない…」
「いろいろ聞きたい事はあるが、今日はもう遅い。部屋を用意してやるから休め」


シンはそう言うとハナに部屋の指示を出す。もれ聞こえてきた部屋は、なんとシンの隣室だった。
そんな所に身元不確かな人物を配して平気なのか? と思いつつ、監視も含めているのか? とも思う。
だが、護衛の側近くにいられるのは有難い。
カカシはハナに案内され、部屋へ入った。







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