夫婦喧嘩 8
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「サクラちゃん、ありがとな。オレ、どうかしてたってばよ。…でも、どうしよう…。カカシ先生、見つけらんねぇ…」
「ナルトに見つけられなかったら、この里でカカシ先生見つけられる人なんていないわよ」
「う〜、どうしたらいいってばよ…」


ナルトは頭を抱えた。


「カカシ先生も黙ってないで、ナルトの事を怒りに来てくれたらいいのにね…」

ため息混じりのサクラの言葉に、パッと顔を上げ驚きの眼でサクラを見るナルト。


「それだっ!」
「えっ? どれ!?」


突然の大声にサクラは対処出来なかった。


「それだよ、サクラちゃん。見つけらんないなら、出てきてもらえばいいってばよ!」
「どうやって?」


ニタ〜、と笑うナルト。


「任務だってばよ。カカシ先生は忍だから、任務を受けにオレの所に来なくちゃならないだろう?」
「あっ、そうか」
「だから、任務の呼び出しをすればいいんじゃん」


オレって頭いいと言わんばかりの笑顔。ここに入って来た時の真っ青な顔とは大違いな事にサクラは笑いを堪える。だが、この笑顔が一番ナルトに似合ってると心底思う。


「さすがね、ナルト。で、どうやってカカシ先生を呼び出すの?」


ピタリとナルトが固まる。
そうだった。カカシが何処にいるか分からない状態で、呼び出しなんて出来る訳がない。再び頭を抱えるナルト。


「あ〜、振り出しに戻ったってばよ…」
「ま、地道に探せって事ね」


頑張れ、ナルトとサクラがポンとナルトの肩を叩く。と、些かナルトのチャクラに乱れを感じた。


「あら、ナルト。あんた幻術にでもかかってるの?」
「へ?」


だから可笑しな言動だったのかと、サクラは苦笑しながらチャクラの乱れを直してやる。
ナルトはきょとんとした顔をしていたが、チャクラの乱れが無くなると、少しすっきりとした顔つきになった。


「ありがとだってば、サクラちゃん。なんかすっきりした」
「どういたしまして」


(それにしてもカカシ先生、ナルトに幻術かけてまで見つかりたくなかった…というより会いたくなかったのか…)


これはナルトかなり苦労するなと、密かに思う。


「まあ、とにかく今夜はゆっくり休みなさいよ。一晩置いた方がお互い冷静になれるでしょ?」





そして翌朝。
ナルトは眠そうな目をして執務室に現れた。
きっとカカシの事を思って眠れなかったのだろうと、周りの者は皆そう思った。
二人がケンカする度、早く仲直りしてくれと切実に願う。
とにかく、ナルトの落ち込み方がうっとうしい程なのだ。また、怒っていれば、不穏なチャクラがダダ漏れになる。
勘弁してくれと、誰しもが思う。
今回は、多少は落ち込んでいそうだが、解決策を見いだしたのかいつもよりは明るかった。
そこへサクラが顔を出す。


「あら、ナルト。何か良い方法思い付いたの?」
「サクラちゃん。夕べ一晩考えたってばよ。で、カカシ先生に頼む任務、思い付いたってばよ」
「へえ…。カカシ先生の居場所は判ったの?」
「ああ。サクラちゃんにチャクラの乱れを直してもらってから探ったら判ったってば」
「何処にいたの?」
「それが先生の部屋に居たってばよ。オレ、そんなに会いたくなかったのかって、ずいぶん落ち込んだってばよ…」


サクラは苦笑するしかなかった。まあ、カカシにしてみれば、自分の貞操を疑われたのだから無理もないと思う。
しかし、よくナルトはカカシに会いに行くのを我慢したなと感心する。


「でも、まあ良かったじゃない。カカシ先生見つかって。で?任務内容決まったの?」
「うん。カカシ先生今日は休みだから、明日頼む」
「聞いても?」
「これ…」


ピラリと見せた任務内容。
Dランクの判がある。
カカシ先生にDランク? と訝しげに思いつつ読んでみれば…。

『オレンジデーというものがあるが、どういうものなのか調べて報告せよ。物証があれば尚良し』

カカシ先生怒らないかな?
サクラの第一印象だ。カカシの事だから、任務に好き嫌いは言わないだろうが。

「これで仲直りのきっかけに…って、思ったってばよ」


ちょっと困ったような笑顔で話すナルト。
こういうイベントに疎いカカシの事だ。オレンジデーがどのようなものか知らないだろうから、きちんと調べるだろう。だが、内容を知った時、どのような反応を示すのだろうか…。
まあ、結局はナルトにほだされてカカシが折れるのだろう。サクラは勝手に結論づけ、ナルトに微笑んだ。

「頑張るのよ? ナルト」
「おうっ!ってばよ」


ニカッと笑うナルト。それじゃあ今日は医療当番だからと、木の葉病院に出勤するサクラ。
ナルトの事が心配で、出勤前に様子を見に来ていたのだ。
ありがとサクラちゃんとサクラを見送って、ナルトは山積みされた書類に目を落とす。
本当は直ぐにでもカカシに会いに行きたかった。
だが、自分に幻術掛けてまで会う事を拒否したカカシだ。今行ってまた拒否されたらと思ってしまう。全くもって自分らしくないと思う。
カカシが会ってくれない今、謝ることさえ出来ないから。この任務をきっかけに仲直りしたいと思う。
だから、今は我慢だってばよ、とナルトは自分に言い聞かせる。
明日、明日になれば…全て上手くいく。
そう思っていた。










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