夫婦喧嘩 3
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サクラに伸された後、何とか起き上がったものの、痛みと目眩でくらくらする。
結界のせいで屋敷には入れないし、どうしようかと思案したが思い浮かばず途方に暮れる。


「あ〜、どうすればいいってばよ…」
「六代目、とりあえず謝るのは明日にしても、今夜はどこかでお休みにならなくては…」
「そうは言っても、前に住んでたアパートは引き払っちまったし…」


うーんと護衛の暗部と共に悩むナルト。ふと暗部の者が思いついた。


「カカシ先輩の住んでた上忍寮は、引き払ってしまったのですか?」
「! まだだってばよ!」

ナルトが火影になり寝食を共にするようになっても、カカシはこの上忍寮を引き払うことはなかった。
任務で真夜中に帰って来た時や、ケンカした時などこちらに帰って来ていたのだ。また、ナルトが火影として里外に出た時など、一人寝の寂しさに耐えかねて戻って来てたりもした。
なので、こまめに掃除もしていたから埃もそんなには溜まっていないだろう。
ナルトはふらつきながらカカシの部屋へと向かった。
ベッドに倒れ込んで鼻を鳴らす。

(あ〜、カカシ先生の匂い残ってないってばよ…。明日っから任務入ってるし、いっぱい愛したかったってばよ…)

バカな事をしたと悔やみ、ちゃんと愛し合えなかった事を残念に思いながら眠りに落ちた。
そうしていつもより寝過ごしてしまい、執務室へとやって来た。


「あれ? カカシ先生は?」
「とっくに任務に出たわよ」
「えええ〜、そりゃないってばよ、カカシ先生…。長期任務だから会いたかったのに〜!」


ナルトは自分が寝過ごした事を後悔した。
だが、今回はそれだけでは済まなくなる事を、ナルトはこの時予想だにしなかった。


「ったく、寝坊するからでしょ!」
「ンなこと言ったって…頭くらくらして起き上がれなかったってばよ…」
「あ〜、ごめんなさい。でも、ナルトだって悪いのよ? あんな夜中に大声で喚いていたんだから」
「ごめんってばよ…」


しゅん…とするナルト。
確かに九尾と入れ替わらなければ、カカシと愛し合えたし、行ってらっしゃいのキスだって出来た筈だ。
本当にバカな事をしたと、今更ながら反省するナルトであった。


「カカシ先生寂しそうにしてたわよ? あんたが何したか知らないけど、帰って来たら、きちんと謝るのよ?」
「え? 先生寂しそうだった?」


うんと頷くサクラに嬉しそうな笑顔を見せるナルト。
寂しいのは自分だけじゃない、カカシも同じように寂しがっている、そう思うと嬉しかった。
ナルトは少し気を持ち直し、山積みにされた書類と向き合った。
カカシの任務は約1ヶ月。果たしてカカシが任務から帰って来た時、自分はどれだけ落ち着いていられるだろうか…と、書類とにらめっこをしながら考える。
多分、抑えが効かずカカシに飛び付いて、当のカカシに叱られるんだろうな。
そんな妄想が広がり、顔が自然とにやけてしまう。
そんなナルトを見て、ちゃんと仕事をしなさいとお小言を言うサクラであった。





そうして3週間が過ぎる頃、今か今かとカカシの帰りを待つナルト。
執務机と窓を行ったり来たりと落ち着きがない。
少し落ち着いて机に向かっていたかと思うと、すぐにそわそわし出す始末。何度サクラに怒鳴られた事だろう。
しかし、ナルトは一向に落ち着く気配を見せなかった。
とうとうサクラも呆れ果てた。


「いい加減にしなさいよ。どんなに待っても、あと1週間はカカシ先生は帰って来ないんだから」
「分かってけどさあ…。カカシ先生の事だから、少しは早めに終わらせて帰って来るんじゃないかなーなんて思っちまって…」


へへ…と照れ笑いを浮かべ後頭部を掻く。
あの時、顔も見ないで別れたまま。カカシ会いたさに夢にまで見る始末。
カカシを想い、一人慰める日々が続いていた。それも間もなく終わる。
カカシが帰って来たら謝って、このひと月の寂しさを埋めるのだ。
思う存分カカシの匂いを嗅いで肺を満たし、この腕にその温もりを閉じ込めて。きっと羞恥に頬を染めて、潤んだ瞳で自分を見上げてくることだろう。
そうしたら顔中にキスの雨を降らせて、深く口づける。そしてあの日出来なかったセックスの続きをするんだ。もちろん九尾との交代はナシ。
ニタ〜と鼻の下が下がる。
サクラに気持ち悪いから止めろと殴られるまで、ナルトの妄想は止まらなかった。



そして待ちに待ったカカシ帰還の日。ナルトは全神経を集中させてカカシの気配を探っていた。
カカシがあ・んの大門に辿り着いた時、よっぽど迎えに飛んで行こうかと思った。
いやいやいや…と首を振る。

(仮にも火影が一人の忍に贔屓はダメだってばよ。ここは大人しくカカシ先生が来るのを待つってばよ)

ナルトはじっと眉根を寄せてカカシを待つ。
目の前に広げられた書類には目もいかないようだ。
そんなナルトの様子から周りにいる者達は、カカシが帰って来たのに迎えに行くのを必死で堪えているんだろうと当たりをつけ、クスクスと笑っている。
だが、ナルトにはそんな周りの様子を気にかける余裕はないようで、ただひたすらカカシの到着をじりじりと焦がれる思いで待っていた。
大門からこの執務室までの距離がとてつもなく長く感じるのは何故だろう。待ち続けた1ヶ月に比べれば、何て事のない時間なのに。
カカシの気配が火影邸に迫った時、ナルトは堪えきれずに窓辺に駆け寄った。


待ち望んだ銀の光を捉えた時、青い瞳に映ったものは──。








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