夫婦喧嘩
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「はぁ…ん……ナル…ト…」
「気持ちイイってば?」


夜の営みは始まったばかり。新婚夫婦の閨は既に濃密な空気に包まれていた。



「あ…ナル……痛いってぇ…」
「お前は少しくらい痛い方が感じるのではないか?」
「え?」


ナルトらしくない物言いにまじまじと見つめる。ナルトの目は鋭さを増し、口許は意地悪気に歪んでいる。何よりその気は…。


「九尾!」
「ほれ…いい声で啼いてみせろ…」
「誰が…!」


いつもより鋭い爪に胸の突起を摘まれて、息が詰まる。


「いつものように啼いてワシを愉しませてみよ」
「ナ…ナルトはどうした!?」
「今はワシと交代しておる。ほら、どうした。啼かんか」
「くっ……」


お前の感じるところは全て知っているぞと笑う。
確かにナルトの顔なのに、九尾が表に出てきているせいで顔つきがきつくなっている。
いつもの成人し男くさくなった顔と違い、九尾の剣呑な顔。油断のできぬ気。
護衛する暗部達にも緊張が走る。
そんな気配を知ってか知らずか、九尾はカカシにのしかかったままカカシの身体を弄っていく。
ナルトの身体なのに、その手も伝えてくる熱さもナルトのものなのに、嫌悪で肌が粟立つ。
九尾のナルトの下で何とか逃れようともがく。が、いつにも増して強く押さえ付けられ、逃げることは適わなかった。


「やめろっ…」
「何をもがく。いつものように感じていればよい…。ほら、ここも…ここも…お前の感じるところだろう?」
「うっ……」


嫌だ。
気持ち悪い。
触るな。
ぞわぞわと悪寒が走る。
ナルトはどうしちゃったのよ?何で九尾が表に出てくるのよ?
と、カカシは泣きたい気分になってくる。

カカシの胸を弄っていた手が目的を持って下がっていく。
今まさにカカシの中心に触れようとした瞬間!

バチバチバチッ…

青白い光が目の前を走る。
一瞬怯んだその隙に、カカシは九尾ナルトの下から抜け出した。
ベッド上の九尾ナルトと対峙する。
控えていた暗部達も音もなく舞い降りてカカシの横に並び立つ。
九尾に対して構えるが、カカシが片手を上げてそれを制する。


「お前、夫に雷切るのか?」
「オレはお前の妻になった覚えはないんでね。それより、何でお前が表に出てくるのよ?」


カカシが乱れた寝間着を直しつつ聞けば、そんなことと九尾がフッと笑う。


「ワシはナルトの中からいつもお前を見ていた。ナルトもお前を抱きながらワシに自慢していた。『綺麗だろう』『可愛いだろう』とな。こやつの趣味なぞどうでもいいがな、お前の淫れっぷりにワシも啼かせてみたくなっての…。ナルトに交替しろと言ったらすんなり交替したぞ?」


カカシの額に青筋が浮かぶ。静かな怒りのオーラが身体を取り巻き、陽炎のようにゆらりと揺らめき立つ。傍にいた暗部達は思わず1〜2歩後ろに下がった。それほどカカシの怒りは恐ろしかった。
そんなことは物ともせず九尾ナルトは言ってのける。


「さあ、カカシ…大人しくワシに抱かれるがよい」

「…ナルト…聞こえてるんだろう? ちゃんとお前が出てこい」
「ムダだ…今はワシが相手だ…」
「ナルト、出てこないなら離婚だからね!」

「何を悪あが…ぐわっ…やめ…ろ…「うわ〜ん!そりゃないってばよ!カカシセンセー!」


いつものナルトが半泣きでカカシに駆け寄って来る。今まさに抱き着かんとしたところでカカシに躱され、手刀を食らう。


ビタッ!
ガラッ
ブンッ!


この一連の音が終わるまで3秒あったろうか?
手刀を食らったナルトがぶざまに倒れ、カカシが窓を開け放ち、倒れているナルトの襟首をむんずと掴んで思いっきり窓の外に投げ飛ばしたのだ。
傍にいた暗部達は風を切る音を聞いた後、風を感じたという。
カカシは窓を閉めると、火影邸全体に結界を張った。これで中にいる者も出られず、外からも入って来られない。


「お前ら、今日はもう帰っていいぞ。火影様は外で反省中だ」
「はあ…」


カカシはそう言うと、早々にベッドに潜り込む。
暗部達はすごすごと引き上げていった。心の中で盛大にため息を吐きながら。





投げ飛ばされたナルトは、地面に叩きつけられた痛みと手刀の痛みに呻いていた。


「いたたた…。酷いってばよ、カカシ先生」


よろよろと立ち上がり火影邸へと帰って行く。が、帰り着けば結界が張られ入る事が出来ない。


「えっ? 」


結界に触れるとパチッと火花が飛んだ。雷遁で張られた結界。無理矢理入ろう、もしくは破ろうとすれば感電は免れないだろう。


「えっ? 何で!? センセー!入れてってば!カカシセンセー!」


大声で叫びながら、ドアをドンドンと叩くように結界を叩く。
途端バチバチと火花が散り、叩いた手が痺れる。


「うわっ! いって〜…。カカシセンセー! ごめんっばよ〜! 謝るから入れてってばよ〜!」


ウォォ…ン…と九尾の雄叫びがナルトの泣き叫ぶ声と共に里中に響き渡る。
真夜中の静まり返った里に響くナルトと九尾の咆哮。
眠りについていた人々は目を覚まし、幼子は恐怖に泣き喚く。
これがいつまで続くのかと、里人はげんなりとした時、ナルトの元へ駆け寄って来る姿があった。


「ナルトー! 睡眠不足はお肌の大敵なのよー!!」


ゴスッと音がしてナルトが沈んだ。
ナルトの咆哮に睡眠を妨害され、怒ったサクラに殴られたのだ。
大人しくなったナルトを見下ろし、サクラはほっと息を吐く。
そして結界の張られた火影邸を見上げて、またため息一つ。


「あんた…いったい何やったのよ…」










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