憧れの… 3
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「や〜れやれ、これからがまた大変だ…」


里へ帰る途中、休憩を取るというのでとある洞窟の中に入った。
この洞窟は入口が背の高い雑草や蔦に覆われ、あまり目立たない為都合がよかった。

万が一の時に備えあまり奥に入る事はなかったが、かなり奥深いようだ。


その洞窟に腰を降ろした時、カカシがぽつりと零したのだ。


「まあ、そうぼやくな。仕方ないさ、ここからが勝負なんだから」


「…判ってるよ。これでおとなしくなってくれたら、有り難いんだけどねぇ」


カカシとヒエンがそんな会話をしているのをなんとなく聞いていたテンゾウ。その内容であることに気付いた。
『僕達の任務はまだ終わってない?』


ちらりとモズを見やれば、モズはコクンと頷いた。

「確かにまだ続いてるけどね、俺達はここまでだよ。後は別の部隊が後を引き継いでる」

テンゾウは声に出して問うたわけではなかったが、モズはそう答えた。


「…国内で収まればいいな…」

「うっわ〜、ヒエン、不吉なこと言わないでよ」
「ごめんごめん。でも、草や土の大名も絡んでる可能性も外せないって話だ」


「それ、これからかもよ? さっきのお姫様、土の大名のところに嫁ぐ予定だったし」

はあと大きなため息を吐いてカカシが呟いた。

ヒエンが何も言わずただカカシの髪をクシャクシャと撫でれば、カカシはバツの悪そうな困ったような顔をした。


その顔を見たテンゾウは、思わず可愛いと思ってしまった。

何故そんな風に思ったのかは判らないが、じっとカカシを見ているとモズが小声で話し掛けてきた。


「テンゾウ、カカシは駄目だよ。やめておいた方がいい」


「え?」

「カカシは駄目なんだよ…」


何が駄目なんだろう?
疑問に思いながらカカシを見れば、いつものカカシがそこにいた。

先程可愛いと思ったのは微塵も感じられない。
じっと見ていたテンゾウは、不意にカカシがこちらを見たことでうろたえた。
カカシの色違いの瞳は冷たくて、心の奥底まで見透かされそうだった。

ドキリと心臓が跳ねる。

そのまま早鐘を打ち始める己が心臓。
その音がカカシにまで聞こえてしまうのではないかと思う程、強く脈打った。



自分が他人に対してここまで反応するのは初めてのことであった。
ドキドキする自分と、それを冷静に見つめる自分がいる。
この先、その答えを出せる時が来るのであろうか?




焦らなくていいと自分に言い聞かせる。
焦っても良い答えは出せないから。


繰り返し心の中で呪文のように唱えるテンゾウ。



もう既にカカシに囚われていることに気付かないまま…。





end.
08.04.11




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