おはようのキスを君に


夜明け前、任務を終え帰って来た。報告書を提出し、さあ愛しいあの子の待つ部屋へ帰ろうと思ったが、今日の任務は暗殺。
返り血は浴びてはいないが、臭いに敏いあの子は気づいて起きてしまうだろう。
たしか予定ではあの子は日付が変わる頃戻ってくるはずだから、今頃は夢の中。
疲れているあの子を血の臭いで起こしてしまうのは可哀想だ。

どうせ起こすなら…。

ミナトは帰る前にアカデミーに備え付けてあるシャワールームへと足を運ぶ。
服を脱ぎかけてふと気付く。シャワーを浴びてもまたこの服に袖を通せば同じことになってしまう。はあ…とため息を零し上忍待機所のロッカールームへと向かった。そこには予備の忍服が置いてある筈だから。それを持ってまたシャワールームへと向かい、今度こそシャワーを浴びる。
そうしてのんびり浴びていれば、いつの間にか夜が明けてしまっていた。
まだ昇りたての朝日を浴びながら、人通りの少ない道をのんびり歩く。
清々しい程の朝日を浴びながら、してきた内容とのギャップに苦笑が漏れる。
任務だと割り切ってはいても、やはり気は重くなるものだ。

早くあの子に会いたい。

そう気は急くのに、足が早くなることはなかった。
ようやく家に帰り着き、音を立てぬよう中へ入る。汚れ物を洗濯機に放り込み、一つ大きく息を吐いてから寝室のドアを開けた。
そして目に映るのは、愛しい子の安らかな寝顔。それを見ただけで自分の中の何かが軽くなっていくのが分かる。

ああ、帰って来たんだ。

ミナトは体も軽くなっていくのを感じなから眠っているカカシの元へと近付く。
覗き込む程に近づいても目を覚まさないカカシに、己の気配に安心しきっているのだろうと微笑ましく思う。普段は人の気配に敏感な子だから。
ミナトはカカシの額にキスを落とす。そして唇に。

「おはよう、カカシ。朝だよ」

そっと囁くように。
カカシの瞳がゆっくりと開かれていく。寝ぼけ眼のカカシの顔が、ミナトを認めると嬉しそうに微笑んだ。

「おはよ…。お帰りなさい…」

寝起きの掠れた声で言われ、ミナトは微笑み返す。
そう、カカシを起こすのは自分のキスで。
カカシの嬉しそうに微笑むのが嬉しくて。心の中がほんわかと暖かくなるから。それはカカシにしか出来ないこと。
ミナトはもう一度カカシの唇に触れる。
そして綺麗に微笑んで。

「ただいま、カカシ…」







13/02/21







戻る











「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -