プロポーズ (ナルカカ)



「先生は結婚しねぇの?」


ナルトから発せられた言葉。カカシはその時≠ェとうとう来たと思った。




ナルトから好きだと告白されて付き合い始めたが、その時からカカシは別れる覚悟を持って付き合ってきた。
ナルトの夢は火影になることだ。火影になれば跡継ぎを残さねばならない。里の繁栄と希望の為に。
それに、ずっと一人だったナルトに家族が出来るということ。これは寂しがり屋のナルトにとっては喉から手が出るほど欲しいものに違いない。


かつて四代目の恋人であった時、やはり火影の責務としてミナトは妻を迎えた。あの時の悲しみと苦しみは今でも忘れてはいない。


ナルトは若い。まして今では里の英雄だ。その妻になりたがっている娘はたくさんいる。
その時≠ェ来たら、潔く別れようとカカシは決めていた。
そしてその時が来た。



「オレは結婚なんてしないよ…」
「何でだってばよ?」
「何でって…」


そう聞かれて答えに窮してしまう。
『好きになった人とは結婚できないから』なんて答えられない。


「オレは結婚したい」


ああ…とうとう別れの言葉を言われてしまった。


「そう……」


そっか、もう好きな娘(こ)出来たのね…。


平静を装って、それだけ答えるのが精一杯だった。



「先生、反応薄くね?」
「…そんな事ないでしょ」
「ぜってー薄いって!あーあ、驚く先生のリアクション見たかったなあ!」



ナルトは驚いて別れたくないとでも言って欲しかったのだろうか?
みっともなく泣いて、捨てないでとでも?
だが、自分にそんな事が出来る筈もない。
年上の大人らしく分別がある風を装って、後腐れなく別れてやるのが自分に出来る唯一の愛の証だ。


「オレ、すっげぇ結婚したい相手がいるんだ」


ナルトの告白を絶望的な気持ちで聞く。


「なあ、カカシ先生。そんな訳で、オレと結婚してください!」

「へ?」

「へ?じゃなくて、ここは『はい』じゃねぇの?」
「だっ、ダメに決まってるでしょ!」
「何でだよ?」
「当たり前でしょ。お前、火影になるんでしょ?」
「ああ、オレの夢だかんな」
「だったら…」
「先生、オレ前にも言ったよな?先生が好きだって。今はあの時以上に先生が好きだ。愛してる。だから結婚してください」
「ムリ…」
「ムリじゃねぇ!先生と一緒になれなきゃオレ、火影になんかなんねぇ!」
「ナルト!」
「だから先生、結婚しよ?」


「…お前…それ、脅迫って言うんだよ…」
「やだなぁ、先生。これは脅迫じゃなくてプロポーズなんだけど?」
「どこがよ…」
「だって、オレ、一緒に生きていきたいって思うの、カカシ先生しかいねぇもん」
「…………」
「だから、ね?」


「……木の葉は男同士の結婚は認められてないよ…」
「んなモン、オレが火影になったら認めさせてみせるさ」
「じゃあ、それまで結婚はお預けね」
「ええーっ!それって、オレとは結婚しないってコト?」
「お前ね、人の話はちゃんと聞きなさいね…。オレは、お預けって言ったんだよ」
「なあんだ、良かった。オレ、先生と結婚出来ねぇかと思っちまった。ん?じゃあ、今は婚約ってことか?」
「何でそうなるのよ?」
「だって、そうじゃねぇ?結婚はお預けってコトは婚約はしてるってコトだろ?」
「…お前の思考回路が分からないよ…」
「そう?けっこう単純な事だと思うけど?」


「だから、先生。オレと結婚してください」

「…認められたらな」
「よっしゃあ!嬉しいってばよ。カカシ先生…」


ナルトは顔を近づけ口づけてこようとした。それが途中で止まる。
訝しげにナルトを見るカカシを、これまた複雑な顔をしたナルトが見下ろしている。


「先生、もしかしてオレに好きな女の子が出来るまで、とか考えてねえ?」
「えっ?」


カカシは図星を指されて自分を取り繕うことさえ出来なかった。


「…やっぱり。あのなぁ、カカシ先生。オレ、何回も言うけど、オレは先生が好きなの。先生しか欲しくないの。だから、安心してその身も心もオレに任せてくれってばよ」


そう言われても、カカシ先生の瞳は不安げに揺れている。


「先生の不安も分からないじゃないけどさ。けど、オレは四代目とは違う。まっすぐ自分の言葉は曲げねぇ。だから先生、安心してオレについてきなよ」


「…かっこいいね、お前…」
「だろ?だから、いいね?」


ナルトはそう言って口づける。けれどそれは唇に触れるだけの優しいものだった。


「だけど、先生は素直じゃねぇし捻くれてっからな。オレの事信じられるようになるまで、その身体に叩き込んでやっから」
「え? うわっ!ちょっ…」


ナルトはニタッと意地の悪い笑みを浮かべると、カカシをベッドへ押し倒した。
カカシは抵抗する暇さえなく、ナルトの愛撫に翻弄されていく。



それでカカシの不安が消えていくわけではないけれど、それでも自分を信じて欲しいと願うナルトだった。




10.06.14






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