バレンタイン(2012)



「おかえり、カカシ」


任務から帰って来ると、ニタニタと嫌な顔で笑ってるセンセ。いや〜な予感に襲われながらも報告書を提出した。


「ん、ご苦労様。はい、ご褒美」
「…何です、これ?」
「何って、バレンタインでしょ? 今日」
「ああ…、オレ、甘いの苦手…」
「知ってるよ。でも、いいから開けてみな」
「え? ここで?」
「そ。構わないから」


ニタニタ笑うセンセに、何を企んでいるんだろうと不審に思いながら包みを開く。と、出てきたのは──


「さんま!?」


クスクス笑い出すセンセ。呆気に取られたオレはまじまじとサンマを見つめる。
良く見ると、それは本物のサンマではなく、サンマを写真に撮りそれを袋にしたものだった。それを本物のサンマのように白いトレーに入れて、あたかも本物のように見せている。
良く出来ているな〜と感心して見ていると、センセが笑いながら言ってきた。


「前にカエルのチョコを貰った事があるでしょ? それでカカシはそういうのが好きなのかなと思って、選んでみました」
「いや、あれは……」
「あれは驚いたな〜。すっごいリアルだったもん。食べるの気が引けたよ」
「その…ごめんなさい」
「何で謝るの? 美味しかったよ?」
「…………」


じゃあ、これは何なんだよ。カエルの仕返しかと思ったけど、違うのか?甘いの苦手なの知ってるくせに何で…。


「ははっ、心配しないでもちゃんとしたのも用意してあるよ」
「そうじゃなくて…。何で…?」
「だって、バレンタインだよ? 恋人同士が甘く過ごすのに必須でしょ?」
(そうか? 必須?)


オレが疑問符を飛ばしていると、センセがやんわりオレを抱きしめてきた。
センセの腕に囲われていると、センセの唇がおりてくる。
その口づけに身を委ねようとした時、チョコが口移しで入ってきた。あまりの甘さに離れようとしたけど、がっちり押さえられていて逃げる事は叶わなかった。


「うえー、甘…」
「でも、美味しいでしょ?」
「オレには甘すぎて、美味しいんだか何だか…」
「そ? じゃあ、もっと味わって「わー!もういいです! オレはチョコじゃなくて、センセだけでいい!」


ピタッとセンセの動きが止まり、オレはハッとする。もしかして、オレはとんでもない事を口走ったんじゃ…。
センセがにっこり笑う。オレは顔を引きつらせた。


「カカシってば誘い上手になったね」
「誘ってない! 誘ってないから!」


だいたい此処は執務室でしょ。こんな所で何をしようっての、センセは!
そう言ったら、センセは笑顔でのたまった。


「ん、じゃあお望み通り寝室に行こうか」


仕事は!? というオレの言葉は、センセの口の中に消えていった。





12.01.18






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