ナルトの場合


バタバタと騒がしい気配をさせてやって来る。その気配に目が覚める。
本当はもうこんなに気配を出す事なく、誰にも悟られずにやって来る事だって出来る筈なのに。
なのに、敢えてそれをしないのはカカシを驚かせまいとするナルトの優しさなのだろう。
程なくナルトが遠慮もなく部屋の中へと入って来る。


「カカシ先生、風邪引いたんだって?」
「何よ、いきなり」
「ああ、けっこう熱あんな。薬は飲んだのかよ?」


人の問いにはあっさり無視をして、自分の言いたい事だけ言ってくる。人の話を聞かないところは昔から変わらない。


「…飲んだよ」
「ホントか?」
「何よ、疑り深い子だね」
「そんなんじゃねぇけどさ…、飲んでないなら、飲ませてやろうと思ってさ」


ニシシ…と笑う。その屈託のない笑顔も昔と変わらず、それが妙にカカシを安心させた。


「けっこうだ。それより用がそれだけならさっさと帰れ。風邪移るぞ」
「別に平気だってばよ。風邪引いたってオレの場合直ぐに治っちまうし、第一、オレは先生と違って若いってばよ」
「悪かったな、年寄りで」
「睨むなって。そんな事ねぇって、先生は凄く可愛いってば…」


そんなわけないだろうと反論する言葉は、ナルトの口づけによって塞がれた。


「カカシ先生、そんな目で睨まれたって、ちっとも怖くない。寧ろ誘われてるって思うってばよ」
「誘ってない! どうしてお前は「ンな事言ったって、そんなに潤んだ瞳で見つめられたら、オレ我慢出来ないってばよ」


そう言って再び口づけてくる。おまけにごそごそと手を動かし、シャツの中に侵入してくる始末。
やめろと言いたくても口は塞がれ、逃れようにもナルトにのし掛かられ思うように身体を動かせない。
ようやく離れれば、カカシの息はすっかり上がっていた。


「…ったく、お前は…」
「へへ…だって、オレってばセンセーの事抱きてぇし」
「抱くって…」
「こんなエロいセンセー見たら我慢出来ないってば」
「や、やめなさいって」
「ムリ!」


そう言って愛撫を再開するナルト。カカシはそっぽを向き、シーツをぎゅっと握りしめた。
眉を寄せ何かに耐えるようなカカシの様子に気付き、カカシの頬に手を添え自分の方へ向かせた。


「どうしたってば?」
「…別に…どうもしない…」


こんな時は何かあるのだ。伊達に長年カカシと一緒にいるわけじゃない。

「なんかあんだろ? オレに隠し事は通用しないってばよ」
「何もないよ…」
「センセーは嘘つきだってばよ。ちゃんと言わないと酷い目にあうってばよ?」

これが脅しでも何でもない事をカカシは知っていた。胸に秘めておきたい事も、話さなければ話すまでナルトはカカシを解放しない事も。
カカシは大きくため息をつく。


「オレはやっぱり………か…?」
「え? なんだってば?」

カカシの声が小さくて聞き取れなかった。聞き返しても話してくれないカカシに焦れて、カカシの乳首を乱暴に摘まむ。


「っつ!」
「話さなけりゃセンセーの乳首、食い千切ってもいいんだぜ?」


そう言ってベロリと摘まんだ乳首を舐める。脅しではないぞと、カカシの目を見つめながら。
カカシは困ったように眉をへにょりと曲げながら再びため息をつき、呟くように話始めた。


「こんな時までセックスするなんて…やっぱりオレは性欲処理の相手にしかならないんだな…って思ったんだよ…」
「ちょっと待った! 何で性欲処理なんだよ? オレはそんなつもりでセンセーを抱いた事なんか一度もないってばよ!」
「……ムリしなくていい…」
「ムリなんかしてねぇ! 何でセンセーはそんなに後ろ向きな考えなんだよ!」
「別にそんな訳じゃ…」
「じゃあ、どんな訳だよ?」


今度はナルトが泣きそうな顔をする。
カカシは慰めるようにナルトの頬に手を添える。その手はいつもの冷たさはなく、ほんのり温かかった。


「もう…オレには飽きたんだなって…。若いお前にはオレなんかより、ずっとふさ「ストップ! それ、何回言ったら気が済むんだ? オレ、何度も言ってるってばよ? カカシ先生だけだって。信じてなかったってば?」
「そんな訳じゃ…。ただ、風邪とはいえ病人のオレを抱くなんてさ……。やっぱりって…」


ナルトはため息をついてカカシの上に伏した。


「カカシ先生〜。ごめんってばよ…。オレ、カカシ先生が病人だって事、忘れてたってばよ。あんまり先生がエロ可愛いから、つい…」
「何よ? エロ可愛いって…」
「センセーのほっぺはほんのり赤いし、目はうるうるだし…何か普段と違うし…」


当たり前だ。オレは風邪ひいて寝込んでたんだぞ。
そう思ったが口に出すことはなく、ただただ呆れていた。


「そしたら、センセーが凄く可愛くて、そんなセンセー抱きたいって思ったってばよ…。ごめん…」


しゅんとしてしまったナルトの頭をクシャッと撫でる。ナルトは顔を上げてカカシを見れば、カカシはほんのり微笑んでいた。


「ま、飽きられたんじゃなくて良かったよ…」
「飽きるなんて、あるわけねぇってばよ! オレはカカシ先生一筋だってばよ!」
「自分で言うかね、それ…」
「言わなかったら、先生に分かってもらえないってば」
「いや…、オレはそこまで頭悪い訳じゃ…」
「もういいってばよ。今日はカカシ先生抱くの我慢すっから、風邪治ったらたくさん抱かせてくれな?」
「ま、治ったらね」
「…………やったあ! カカシ先生、その言葉忘れんなよ!」


一瞬呆気にとられた後、満面の笑みを浮かべ喜ぶナルト。その喜びようを見て、早まったかな〜、とちょっぴり後悔するカカシであった。





11.11.04






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