ボディソープ



センセが袋の中身を見て固まっている。
どうしたんだ?


「センセ?」



「カカシ……オレ、臭う?」
「は?」


オレの問いかけに、悠に何拍もおいて訳の解らない事を聞いてきた。


「そんなに臭い?」


センセはショックを隠しきれない顔で、クンクンと自分の匂いを嗅いでいる。


「臭くないですよ?」


そう答えれば、嘘つかないでいいと言われた。
何で?


「オレ、嘘なんかついてない」
「じゃあ、これは何?」


センセが袋の中から取り出したのは、柿渋エキス入りのボディソープ。オレが薬局で買ってきたやつだ。


「オレが臭いから、こんなもん買ってきたんでしょ?」
「や、違うから」
「オレ…オレ…そんなにカカシに臭い思いさせてたなんて…!」


ホントに違うから。人の話聞いてください…。
完全に自分の世界に入っちゃってるセンセは、オレの声が届かない。オレは遠慮もなく盛大なため息をついて、センセの頬を両手で挟んで無理矢理オレの方へ向けさせた。


「センセが臭うから買ってきたんじゃないから。薬局行ってら、いつものボディソープが売り切れてて…。だから…」
「でも、柿渋エキス入りを買ってきたって事は、それなりに臭いを気にしてるって事でしょ?」
「だって、オレだって忍だし、それにセン…」
「それに? オレがどうしたって?」


ああ、もう! こういう事だけは聞き逃さないんだから…。


「やっぱり、臭うんだ…」
「違うから! センセじゃないから! オレが…臭うんでしょ?」
「カカシが? カカシは体臭ちゃんと消してるでしょ? 臭わないよ?」
「センセこそ、嘘つかないでよ…」
「え? オレ、嘘ついてないよ?」
「嘘だっ!」
「嘘だって…何? カカシはオレの事、嘘つき呼ばわりするわけ?」
「だって、そうじゃないか。センセ、オレのこと……臭うって…」
「オレ、そんな事言った覚えないよ!」
「いつも言ってるじゃないか!」
「言ってない! オレが、いつそんな事を言った!?」


何だよ…。センセ、いつもいつも言ってるじゃないか…。オレを抱き締めて、オレの臭いだって…。

そう言おうと思っても、言葉が喉に詰まり出て来なかった。
俯いて答えないオレにため息をついて、センセはボディソープを手に取りしばし見つめていた。やがてオレの手を掴み、風呂に入ろうと浴室に引っ張って行かれた。
「センセ?」
「ん、せっかくだから使ってみよう」


センセはさくさく服を脱ぎ、オレの事も脱がしさっさと浴室に入った。オレはセンセが何を考えているか分からず戸惑っていたし、脱がされるのもあっという間だったから、さすが閃光なんて、あさっての方へ思考が飛んでいた。
ざっとシャワーで身体を濡らし、タオルにボディソープを垂らす。


「うわ…くっさ…」
「ホント、渋い臭いだね」


タオルに垂らされた茶色い、柿色より気持ち濃い色をした液体は、柿渋を表現するような臭いだった。
こんなんじゃ、臭いを取っても柿渋の臭いが身体に染み付きそうだ。
そんな事を思ってる間に、センセがオレの身体を洗っていく。センセはオレの身体を悪戯しながら洗っていくから、ちょっと困ってしまう。ヘンな声だって出そうになるし…。
しかもセンセはオレのナニを洗う時はタオルは投げ出して、自分の手で洗うから始末に悪い。オレは声を抑えるのに必死になってしまう。


「カカシ、勃っちゃったね。気持ち良い?」


聞かないでよ、そんな事…。
センセは泡を洗い流すと、オレを抱き締めてきた。


「ん〜、ボディソープの臭いがきつくてカカシの匂いがしない…」
「やっぱ臭ってたんじゃん…。うそつき」
「え? カカシが言ってた臭いって…」
「センセいつも言ってたでしょ…オレの臭いって…」


センセはオレを抱き締めたまま絶句した。暫くして、はぁと呆れたようなため息を溢した。
あの、それ傷つくんですけど。


「あのね、カカシ。カカシの匂いって、きっとオレにだけ感じ取れるんだよ? カカシは臭ってないから大丈夫」
「そんな慰め…」
「慰めじゃないって。お前だってオレのにおいがする、って時々言うじゃない。それと一緒だよ」
「あれは…ホントに…」
「臭かった?」
「ううん…センセの匂いだって、安心って言うか…いい匂い?」
「ふふ…ありがと。カカシもおんなじだよ。オレにだけ判る、お前の匂いだ」


センセはそう言って、オレに口づけた。
オレは気が抜けたというか、安心したというか…。臭いを気にしてた自分が馬鹿馬鹿しくなった。そしたらボディソープの臭いが気になりだした。


「これ臭うし、失敗したな。なんとなく、肌が突っ張るし…」
「肌が突っ張る?」


ああ、必要な油分まで洗い流しちゃったんだね、とセンセはオレの身体にローションを塗りたくった。


「センセ! それ…」


センセが塗りたくっていたのはローションではなく、潤滑剤だった。
このあと、オレはセンセに弄られまくったのは言うまでもない。




ボディソープにはホントにご用心。
ちなみにセンセはちゃんとローションを塗っていたんだ。途中ですり替えてオレの反応を楽しんでいたらしい。
ああ…閃光の名は伊達じゃない…。






11.08.03






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