火影の愛人?(ナルカカ)


天井裏から妄想しましたが、天井裏とはちょっと(かなり?)ズレてます。

※紫陽花文庫様の企画「天井裏」で『居酒屋プロポーズ』というタイトルで掲載されています。



********************



がやがやとほど好いざわめきの中、テーブル毎に区切られた後ろの席に見知らぬ集団が座る。
彼らはこちらに気付く事なく話し始める。


「なあ、六代目は結婚しないのかなあ?」

(へ?オレ?)

「まだ早いだろ?」
「いや、愛人がいるって話だ」

(愛人じゃねぇ!恋人だ!誤解生むような事言うなー!)

「まじかよ?」
「あ、オレも聞いた。なんでも絶世の美女だとか」

(うん、うん。センセーは美人だ)

「さすが火影様だな。羨ましい」
「だけど、火影様も気が気じゃないだろ?そんな美女だとよ。引く手数多だろ?」
「そのうち婚約発表とかすんじゃね?」
「あれ?六代目、カカシ上忍が恋人とか宣言しなかったか?」
「ありゃ冗談だろうよ。男だぞ? カカシ上忍。それに六代目はあの自来也様の弟子だろ? 男が恋人だなんてありえねーって」

(恋人なんだけど…)

「だな。なんでもその愛人を毎晩可愛がってるって聞いたぞ」
「ひゃー、羨ましいねぇ!」
「しかし、そんなにお盛んなら気ィつけないとな」
「何を?」
「刺客だよ、刺客」
「あっ、何時だったか襲われたらしいぞ?」
「マジかよ?」
「なんでもその愛人が倒したんだってよ?」
「すげえな、その愛人」
「しかも、指一本も使わずに倒したんだとか」
「指一本使わず?どんな忍術使ったんだ?」
「さあ…、しかし凄いよな。ま、火影の愛人になるにゃあ、なまじっかな忍じゃ勤まらんってこったな」


うんうんと頷くのを黙って聞いていたカカシは頭を抱えた。
ここの機密管理はどうなっているのよ?と、目の前に座る影の部隊長を勤める女暗部にジトッと目を向ける。
と、女暗部は私じゃないとブンブン首を振る。隣のサクラに目を向ければ、また然り。
それじゃお前かとナルトに目を向ける。


「オレは何もしてないってばよ」


顔を引き攣らせ否定する。
後ろの会話はまだ続いている。



「何時結婚なさるのかねぇ?」
「気ィ早えよ。婚約だってまだだろうに」
「だけどよ、毎晩可愛がられてるんだろ?そのうち妊娠なんて事だってあるだろうよ」
「あー、できちゃった婚かあ」
「新郎、妊婦の登場です、ってか?」


どっと笑いが起こる。
それに顔を赤くしながら怒りマークを浮かべるカカシ。
それにオロオロしながら、それでもナルトは口走る。


「きっとカカシ先生には白は似合うってばよ」


ギロリとカカシが睨む。


「…オレに何を着せようっての?」


いつもより低い声でカカシが問う。

(まずい!カカシ先生怒ってる…。やべぇよ、このままじゃ今晩ヤらしてもらえないってばよ…)


「え、いや、あのー…」
「ウエディングドレスでしょ、カカシ先生」
「サッ、サクラちゃん!?」
「きっと似合いますよ」
「あのね…」


そう呟いて深いため息を零すカカシ。


「結婚自体ありえないでしょうよ…」
「な、何でだってば?」
「何が?」
「先生、オレと結婚したくないってば?」
「え?」
「オレ、何度も愛してるって言ったってば。信じてなかったってば?それにオレはもう夫婦のつもりでいたってばよ」
「お前ね…何で夫婦よ?籍だって入ってないでしょうが。しかも、こんな所で…」
「こんな所でもあんな所でも言うってばよ!先生、愛してる!だっ!」
「デカイ声出すな」


ゴチンと頭を殴られ、ちょっと涙目になるナルト。その一方で赤くなった顔を背けるカカシ。
そのカカシを可愛いと見つめる女二人。


「ろっ六代目!?」


ナルトの大声に後ろにいた連中が慌てる。ナルトを餌にろくでもない話をしていたのだ、無理もない。


「…結婚出来なかったら、お前らのせいだからな」


ナルトが恨み言を言えば、その者達は青くなる。


「人のせいにするな」


またカカシに怒られる。


「じゃあ、結婚してくれるってば?」
「それとこれとは話が別でしょうが。責任転嫁するなって言ってるの」


「あ、あの…」


オロオロする連中に気にするなと微笑んで。


「分かったってば。だから、結婚してくれるってば?」
「何で話がそーなるのよ?」
「だって、そうだってば。先生さっき結婚なんてありえないって言ったってば…」
「そりゃそーでしょうよ。木の葉では男同士なんて認められてないんだからな」
「そんなの、オレが認めればいいってばよ」
「あのねぇ、そういう訳にはいかないの。法ってものがあるんだから」
「そんなもん、オレが変えてみせるってばよ!」


そう言うナルトに呆れるカカシ。何とか言ってやってと女二人を見るが、女達は肩を竦めただけだった。


「諦めた方がいいですよ、カカシ先生」
「そうですね。六代目は絶対諦めませんからね」
「先生のウエディング姿、楽しみにしてますね」
「お前らなあ…」


がっくりと肩を落とすカカシ。そんなカカシの肩を掴み自分の方へ向かせ問い質す。


「結婚してくれるってば?」
「…する訳ないでしょうが!」


赤くなり、ゴチンと軽くナルトを殴って姿を消す。


「カカシ先生!?」
「あんたもバカね。こんな所でプロポーズするなんて」
「いくら何でも返事しにくいですよね。カカシ先輩、恥ずかしがり屋だし」
「ったく、デリカシーってもんがないんだから」


火影に対して散々な言いようである。
が、カカシがいなくなった事に動揺しているナルトは気づかない。気づいたとしても、この二人なら気にしないであろうが。


「ンな事言ったって…サクラちゃん…」
「早く追いかけて仲直りした方がいいんじゃないの?」
「そうだってばよ」


ごめんサクラちゃんといいながら、ナルトも姿を消す。
やれやれと女二人ため息を吐く。


「今夜も天井裏は大変だわ」
「ふふ…任務前に献血よろしくね」
「ええ、たっぷり取っておいてちょうだい」


一連の行動を見守っていた連中が呟く。
「六代目の愛人って、カカシ上忍だったんだ…」

「あんた達、それを広めたら命ないわよ?」


コクコクと頷くも、翌日には里中にその噂は広まったのだった。






11.03.02






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