火影の愛人?(ナルカカ)
天井裏から妄想しましたが、天井裏とはちょっと(かなり?)ズレてます。
※紫陽花文庫様の企画「天井裏」で『居酒屋プロポーズ』というタイトルで掲載されています。
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がやがやとほど好いざわめきの中、テーブル毎に区切られた後ろの席に見知らぬ集団が座る。
彼らはこちらに気付く事なく話し始める。
「なあ、六代目は結婚しないのかなあ?」
(へ?オレ?)
「まだ早いだろ?」
「いや、愛人がいるって話だ」
(愛人じゃねぇ!恋人だ!誤解生むような事言うなー!)
「まじかよ?」
「あ、オレも聞いた。なんでも絶世の美女だとか」
(うん、うん。センセーは美人だ)
「さすが火影様だな。羨ましい」
「だけど、火影様も気が気じゃないだろ?そんな美女だとよ。引く手数多だろ?」
「そのうち婚約発表とかすんじゃね?」
「あれ?六代目、カカシ上忍が恋人とか宣言しなかったか?」
「ありゃ冗談だろうよ。男だぞ? カカシ上忍。それに六代目はあの自来也様の弟子だろ? 男が恋人だなんてありえねーって」
(恋人なんだけど…)
「だな。なんでもその愛人を毎晩可愛がってるって聞いたぞ」
「ひゃー、羨ましいねぇ!」
「しかし、そんなにお盛んなら気ィつけないとな」
「何を?」
「刺客だよ、刺客」
「あっ、何時だったか襲われたらしいぞ?」
「マジかよ?」
「なんでもその愛人が倒したんだってよ?」
「すげえな、その愛人」
「しかも、指一本も使わずに倒したんだとか」
「指一本使わず?どんな忍術使ったんだ?」
「さあ…、しかし凄いよな。ま、火影の愛人になるにゃあ、なまじっかな忍じゃ勤まらんってこったな」
うんうんと頷くのを黙って聞いていたカカシは頭を抱えた。
ここの機密管理はどうなっているのよ?と、目の前に座る影の部隊長を勤める女暗部にジトッと目を向ける。
と、女暗部は私じゃないとブンブン首を振る。隣のサクラに目を向ければ、また然り。
それじゃお前かとナルトに目を向ける。
「オレは何もしてないってばよ」
顔を引き攣らせ否定する。
後ろの会話はまだ続いている。
「何時結婚なさるのかねぇ?」
「気ィ早えよ。婚約だってまだだろうに」
「だけどよ、毎晩可愛がられてるんだろ?そのうち妊娠なんて事だってあるだろうよ」
「あー、できちゃった婚かあ」
「新郎、妊婦の登場です、ってか?」
どっと笑いが起こる。
それに顔を赤くしながら怒りマークを浮かべるカカシ。
それにオロオロしながら、それでもナルトは口走る。
「きっとカカシ先生には白は似合うってばよ」
ギロリとカカシが睨む。
「…オレに何を着せようっての?」
いつもより低い声でカカシが問う。
(まずい!カカシ先生怒ってる…。やべぇよ、このままじゃ今晩ヤらしてもらえないってばよ…)
「え、いや、あのー…」
「ウエディングドレスでしょ、カカシ先生」
「サッ、サクラちゃん!?」
「きっと似合いますよ」
「あのね…」
そう呟いて深いため息を零すカカシ。
「結婚自体ありえないでしょうよ…」
「な、何でだってば?」
「何が?」
「先生、オレと結婚したくないってば?」
「え?」
「オレ、何度も愛してるって言ったってば。信じてなかったってば?それにオレはもう夫婦のつもりでいたってばよ」
「お前ね…何で夫婦よ?籍だって入ってないでしょうが。しかも、こんな所で…」
「こんな所でもあんな所でも言うってばよ!先生、愛してる!だっ!」
「デカイ声出すな」
ゴチンと頭を殴られ、ちょっと涙目になるナルト。その一方で赤くなった顔を背けるカカシ。
そのカカシを可愛いと見つめる女二人。
「ろっ六代目!?」
ナルトの大声に後ろにいた連中が慌てる。ナルトを餌にろくでもない話をしていたのだ、無理もない。
「…結婚出来なかったら、お前らのせいだからな」
ナルトが恨み言を言えば、その者達は青くなる。
「人のせいにするな」
またカカシに怒られる。
「じゃあ、結婚してくれるってば?」
「それとこれとは話が別でしょうが。責任転嫁するなって言ってるの」
「あ、あの…」
オロオロする連中に気にするなと微笑んで。
「分かったってば。だから、結婚してくれるってば?」
「何で話がそーなるのよ?」
「だって、そうだってば。先生さっき結婚なんてありえないって言ったってば…」
「そりゃそーでしょうよ。木の葉では男同士なんて認められてないんだからな」
「そんなの、オレが認めればいいってばよ」
「あのねぇ、そういう訳にはいかないの。法ってものがあるんだから」
「そんなもん、オレが変えてみせるってばよ!」
そう言うナルトに呆れるカカシ。何とか言ってやってと女二人を見るが、女達は肩を竦めただけだった。
「諦めた方がいいですよ、カカシ先生」
「そうですね。六代目は絶対諦めませんからね」
「先生のウエディング姿、楽しみにしてますね」
「お前らなあ…」
がっくりと肩を落とすカカシ。そんなカカシの肩を掴み自分の方へ向かせ問い質す。
「結婚してくれるってば?」
「…する訳ないでしょうが!」
赤くなり、ゴチンと軽くナルトを殴って姿を消す。
「カカシ先生!?」
「あんたもバカね。こんな所でプロポーズするなんて」
「いくら何でも返事しにくいですよね。カカシ先輩、恥ずかしがり屋だし」
「ったく、デリカシーってもんがないんだから」
火影に対して散々な言いようである。
が、カカシがいなくなった事に動揺しているナルトは気づかない。気づいたとしても、この二人なら気にしないであろうが。
「ンな事言ったって…サクラちゃん…」
「早く追いかけて仲直りした方がいいんじゃないの?」
「そうだってばよ」
ごめんサクラちゃんといいながら、ナルトも姿を消す。
やれやれと女二人ため息を吐く。
「今夜も天井裏は大変だわ」
「ふふ…任務前に献血よろしくね」
「ええ、たっぷり取っておいてちょうだい」
一連の行動を見守っていた連中が呟く。
「六代目の愛人って、カカシ上忍だったんだ…」
「あんた達、それを広めたら命ないわよ?」
コクコクと頷くも、翌日には里中にその噂は広まったのだった。
11.03.02
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