返品不可



離さないと誓ったのに。




嘘つき 嘘つき 嘘つき!





センセは明日火影に就任する。
それと同時に結婚もする。
赤毛のきれいで元気な女の人と…。




そう告げられた時、オレはセンセとの仲も終わりを告げられたと思った。

「おめでとう」なんて言えなかった。
どんな顔をしていたんだろう?
ただ黙ってセンセを見つめて、それから頷いた。




就任式直前まで、オレはセンセの傍にいた。


「じゃあカカシ、行ってくるね」


そう笑顔でセンセは部屋を出て行った。



就任式の間、オレは最後尾でセンセの事を見ていた。
式が終わると赤毛の女性が紹介された。仲睦まじく、幸せそうに笑う二人。


その姿に、オレは嫌という程打ちのめされた。
まるで足元が地割れを起こして大きく口を開け、底知れぬ闇に飲み込まれていくようだ。
二人を見ていたくなくて、そっと会場を抜け出して家に帰って来てしまった。



ベッドに身を沈めるとずきずきと胸が痛み、泣きたくもないのに涙が溢れ出た。

オレはどれだけセンセに依存して生きて来たんだろう。
センセのいなくなった部屋は、とても広く寒いと感じた。
止めようとしても止まらない涙。流れるに任せていたら、いつの間にか眠っていたのだろう。
誰かが部屋に入ってきた気配に目が覚めた。


これは…センセだ。


なんで?どうして?




「カカシ…」


センセはオレに手を延ばしてくる。オレは咄嗟にセンセの手を振り払った。
パシンという小気味よい音にハッとして、その場を逃げ出した。
今センセと顔合わせたくなかった。
そもそも何でセンセはオレの家に来たのだろう?
結婚したばかりなのに…。





走って走って、オレは生家に辿り着いた。

今は雑草に覆い尽くされ、ここに家があった事を感じさせるものは何も残されてはいなかった。

オレは地面に伏し、彼の人を想い啜り泣いた。


「父さん…父さん…」





ミナトは気配を消してカカシに近づいた。
カカシも気配を消していた為、捜すのに手間取ってしまった。


「父さん、父さん」と啜り泣くカカシに掛ける言葉が見つからない。
黙ってカカシを抱き起こし、細い身体を抱きしめた。


カカシを手放すつもりは毛頭ない。だが、泣かせるつもりもなかった。
自分のエゴでカカシを泣かせ、これからもカカシを苦しめてしまうと分かっていても、それでもカカシが欲しい。
すまない、すまないと心の中で謝りつつ、ただただカカシを抱きしめるのであった。




10.07.03






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