温もり
幼い頃、夜眠るのが怖かった。
いつも悪夢に魘されるから…。
父さんが笑ってて…いきなり泣きそうな顔をして…。
血が滝のように流れ落ちてきて、父さんの姿を隠してしまう。
だけど、オレは叫び声を上げる事すら出来なくて…。
恐かった…恐くて…苦しくて…。
吐き気とも違う何かがせり上がってきて、喉を痛めつける。
そして、胸が氷で冷やされたように縮んでいく──。
苦しくて、苦しくて足掻いていると、何か暖かいものに身体が包まれた。
それは冷え切った指先まで、じんわりと温めた。
その温もりに安心して、オレはひとつ息を吐く。
その温もりの正体がセンセだったという事は、後から知った。
夜中、目が覚めたらセンセの胸の中だったから。
最初は驚いたけど、その心地よさにオレは再び眠りへと戻っていく。
その時、額に何か柔らかくて温かいものが触れた。それがセンセの唇だと分かったのは、もう少し後のこと。
そして聞こえてきたやさしい声。
「おやすみ、カカシ」
そして、今度は優しい夢をみる。
センセと笑っている夢を──
09.10.17
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