
『団長さん、何か髪の毛がいい匂いです!何使ってるんですか?』 雑誌を読んでいた一見中性的な少女、そしてメカクシ団の団長ことキドに キサラギと呼ばれる金髪の少女が口を開いた。 「は?いきなり何を言うんだ」 まぁ、いち髪をぼそりと言葉を漏らす彼女に、へぇと一つ頷いて髪を触る金髪。 「前は使ってなかったですよね?団長さん髪が長いからか、私と同じもの使ってもこんなに違うとは」 金髪の彼女もまた、メカクシ団に居る時は風呂を共有しているために多少落胆したような 声色で口を開きながらキドの髪の毛を弄った。 「やめろ、キサラギ。任務はないのか」 多少苛立つキドを、ソファの横に座る、また金髪の少年がケラケラと笑った。 「キサラギちゃん、キドは髪の毛の事言われると怒るからやめといたほうがいいよ?結構乙女なんだし…ぐふぉっ」 見本にしたくなる位の滑舌のいい言葉を発し、途中でわき腹に攻撃を喰らいもだえる少年こと、カノ。 「…ああ、もう!俺は晩飯の支度をする!」 怒りを堪えきれなくなったキドは雑誌を投げるとソファから立ち上がり、キッチンに置いてある 『技』と刺繍が施されたエプロンを片手に台所へ消えていった。 「怒らせてるのカノさんじゃないですか」 「だって〜、あんなに顔赤くさせてるキドをみたらさぁ〜」 先ほどの鉄槌など気にする様子もなく、楽しそうに笑みをこぼすカノ。 まったく、と腰に手と当てるキサラギに、また満悦そうな笑みを浮かべてカノは言葉を紡いだ。 「いやね、あのシャンプーセットさぁ…僕が買ったんだよね」 「はい?でもあれ、女性用ですよね?」 「勿論しってるよ。ほら、プレゼント的な?」 僕たちはお金の工面に困ってるからと、貧乏じみた遠い目線を向けるカノに 何となくだが察したキサラギは、あぁ、と首を縦に動かした。 息を飲み込む様な堪え笑いをするカノは続けて口を開く。 「僕にお金が入ったときにさ、キドのシャンプーとか切れちゃって、で… たまには女の子らしく専用のシャンプーでもかってやろうかなって」 「カノさんにしては良い心がけですね」 「失礼な!僕はいつでも全力なのに!」 大胆且つ大袈裟、アメリカンコメディの様な身振り手振りをするカノに キサラギは大きく溜め息を吐いた。 これは惚気が始まる前兆だと。 「それでね、僕キサラギちゃんの使ってるシャンプーとかチェックしてさ」 「プライバシーの侵害ですよカノさん」 まぁまぁ、とカノはキサラギを宥めながら両手を肩の横に開いて足を組んだ。 「これ、キドならつかうかな〜とか思って『キドのために買ってきたんだよ』って言ったら 最初は文句言ってたんだけど、なんだかんだ気に入って使ってくれててさぁ〜」 「僕もあの匂い好きなんだけど。もー、素直じゃないところが可愛いんだよね」 キドの居なくなった場所で、まさか髪の毛から壮絶な惚気話を聞くはめになるとは 彼女も災難で。呆れ顔でカノを見る目には【リア充爆発しろ】の言葉しか出てこなかった。 ご満悦に喋るカノが頭を打たれるまで数秒。キッチンに居たはずのキドが お玉を持ってカノの後ろに立っていた。 「何て話をしてやがるんだお前は!!」 「いっだあああぁあああ!」 一人、キドは能力である『目隠し』の能力を使って盗み聞きをしていたようで。 顔を耳まで赤くさせながら小刻みに震えていた。 「もう、あのシャンプーは使わないからな!!」 踵を返して戻っていくキドを後ろ目に、キサラギもその場所から抜けようと 手伝います、なんて言いわけをカノに伝えて去っていった。 後日、キドが変わりなくいち髪を使って髪を洗っているのをカノは確認しつつ 「そうゆうところが可愛いんだよ」 と、一人ソファの上でまた満悦な笑みを浮かべた。 しおりを挟む back |