華穂様 | ナノ

華穂様より

これは久しぶりな光景を目にした、と。


「お」

「・・あれ?八?」

「・・寝てるな」

「寝てるね」


三郎達は2人部屋を1人で使っている八左ヱ門が、部屋の中。


「かー・・・zzz」


昼間から口を大きく開けながら、だらしなくも涎を垂らして眠りこけている八左ヱ門を見て、ぱちぱちと瞬きを繰り返した。





☆君の隣は誰のもの?☆








自分達が近づいても珍しく起きない八左ヱ門の姿に、彼を探していた三郎、雷蔵、兵助、勘右衛門は口元に手を当て、しげしげと大の字になって眠っている八左ヱ門を見下ろしていた。




「・・見事に熟睡だな」

「・・うん」



三郎がどれどれと、ぐぐっと顔を近づければ・・確かに呼吸は安定しており、その寝顔からしても熟睡している事は明らかであった。

生物委員会では、基本大小の毒虫達の脱走が毎日のように行われているし、何より生物の命を預かる彼の朝は誰よりも早く、夜は誰よりも遅い事が多いのだ。

さすがの八左ヱ門も疲れがたまっていたのかもしれない。



「ここまで熟睡していると、起こすのも気が引けちゃうね」




・・なんだか僕も眠たくなってきたかも。



と、続けるのはあくびを漏らした雷蔵であった。


特に午後の用事がなかったとはいえ、一人欠けていた八左ヱ門を見つけ、遊ぼうとでも思ったが・・彼の様子じゃ寝かせた方がいいだろう。

ついでに眠るのもいいかもしれないと、続ければ。




「じゃあ、俺八左ヱ門の隣ね!」

「まてこら」

「む、俺も!」

「ちゃっかりしてるよね」




はいはーい!、と。

片腕を上げてちゃっかり八左ヱ門の隣に移動しようとしたのは勘右衛門であった。

その姿に待て待てと、すかさず同じ委員会仲間である三郎が抑えれば―――勘右衛門に続いてちゃっかり移動しようとしていた兵助を止めたのは雷蔵であった。




「「「・・・」」」




その瞬間、彼らの間でばちりと火花が散る。

また、唇を吊り上げ矢羽音を飛ばしたのも同時であった。


【ちょっと、邪魔しないでくれる?】

【うるさい、何八左ヱ門の隣を取ろうとしているんだ】

【いいじゃん!三郎や雷蔵はいつだって八左ヱ門の隣にいるんだから!】




ぐぎぎーっと、先に動いたのは三郎の頬に手を伸ばした勘右衛門であった。


すぐに頬を引っ張られながらも、三郎はぎっと勘右衛門を抑えつけ、押し相撲を始めながら矢羽音で罵倒を飛ばした。



【雷蔵・・】

【駄目】

【・・・】


そんな2人を尻目に、雷蔵と兵助は恐ろしいほど静かであった。
兵助が何かを言うたびに、それを押さえつけるように雷蔵が笑いながら「駄目」と続ける。


【どうしてもか】

【駄目】

【・・な、【駄目だっつてんだろ】


が、それでも諦めぬ兵助についに雷蔵が拳を握りしめた時。


「―――なんだよ・・さっきから・・」

「「「!?」」」




不意にそれまで豪快に熟睡していた八左ヱ門が、さすがに真上で飛び交う矢羽音に気付いたのだろう、ぐずるような声を上げ、とろんとした瞼を持ち上げ眠気に捕らわれた瞳を揺らした。

そうして驚く三郎達を見上げるも、八左ヱ門はいつの間に、自分の傍に彼らが来たのだろうかと思う―――も、いつにない貴重な睡眠に思考が奪われ、とりあえず・・。



「けんかすんなよぉ〜・・みんないっしょにねむりゅんだぁ〜」

「「「おわっ!?」」」



彼はすぐにほんの少しだけ上半身を起こすと、左右にいた三郎と兵助を己の方に引っ張り、呆気なく倒れ込んだ2人に満足し。

続けざまに勘右衛門、雷蔵を引っ張って己の腹や足に目を丸くする彼らを押し付けると、ふにゃりと・・だらしのない笑みを浮かべ、すぐに。


「ぐぅ・・」

「「「って、眠るのか!?」」」



それはそれは幸せそうな笑みを浮かべてかくりと、頭を動かし夢の世界に再び旅立っていったのだった。

それにたまらず4人が突っ込むが、・・すぐに馬鹿らしくなったのだろう。

三郎達の唇に笑みが浮かび、彼らは自分らを引きよせた八左ヱ門の左右を陣取り、そしてお腹や足を陣取るとぐりぐりと己の身体を押し付け、くつくつと喉で笑った。




「・・寝るか」

「そうだね」「うん」

「さすが俺たちの八左ヱ門」



そうしてそのうち。


彼らもまた、八左ヱ門の寝息と体温を感じることでするりと、驚くほどあっという間に夢の世界へと引きずりこまれたのだった。



「「「くぅ・・」」」




――――その後5年の長屋にて・・穏やかな寝息が5つ、確かに夕方頃まで続く。




以下感想

サイト『空を仰げば』を管理、運営されております華穂様より相互記念として頂きましたvV

何が宜しいですか?とリクエストして下さいましたので
「寝ている竹谷の隣を取り合うほのぼの」を図々しくもお願いしましたら……
何と予想以上の素晴らしい作品が、にゃんちきの手元に来ましたよこれ(*≧∇≦*)


寝ぼけ八左ヱ門の「ねむりゅんだぁ〜」に心を射止められ、
次いで雷蔵と勘右衛門が陣取りました腹と足に、やましい想像を働かせてしまい……
更に雷蔵の容赦なさも追加されたお話に、


始終にゃんちきの口はニヤニヤとまるで他人様に見せられない表情となってしまいました(*´Д`)


華穂様、どうもありがとうございました!!!
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