目隠しと冷たい掌。
真っ暗な視界には何一つ映らない。
温かくも冷たいそんな掌によって俺の視界は塞がれている、どうしてこうなったんだろう、どこで間違えたんだろう。
そんなことを聞くこと自体既に手遅れなんだと頭の隅でぼんやりと思う。アイツは今どんな顔をしているのか、塞がれた視界には何も映らない。
(震えてる…)
目から伝わる微かな震動、人の目を手のひらで隠しといて何を震えているんだ震えたいのはこっちだ、何も見えないんだぞ敏感になるのは感覚の感度だけだ。何がしたいんだ、さっきまで普通だったのに背後に回ったと思えば手のひらで目隠しだ。それから何も言葉を発さなければ何もしてこない。
「………」
「………」
「……なぁ」
「………」
返答もしないのか。
「俺にどうしてほしいの」
「………」
問いかければまるで何かを訴えかけるように微かだが手のひらに力が込められる、痛い。
「………」
小さくため息をつく。
知ってるよ、お前がいきなり目隠しをしてきた理由。見られたくないんだろ、知ってるし分かってるよ。
…泣いてるのも、分かってるよ。
「……なぁ」
そう言葉を掛けながら目を隠している温かくも冷たい手のひらにそっと自分の指を添える、大丈夫という気持ちを込めて。
「再来年」
「………」
「再来年まで待ってて」
「………」
「受験早く終わらせるから、再来年」
‐会いに行くよ。‐
そう伝え、手のひらを目から離し振り向けば嬉しそうに泣き笑うアイツがいた。
「再来年までがなげーよ」
転校して行くキミの温かくも冷たい掌を強く握り締める。
(再来年一緒に、また笑い合う日々を送ろう。)
高校生と転校していく同級生の話。
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