歪に歪んだ×××


  あぁ、やっぱりコイツは何かを辛そうに耐えて苦しそうな顔が一番似合うな…なんて思ってしまう自分自身に嘲笑をしてしまう。


 姫堵を知ったのは高一の時だ、新入生のクラスとルームメイトが書かれた紙が張り出されているのは中庭にある中型のガラス張りの掲示板、そこで姫堵を見たのが最初。姫堵は俺に気が付いていなかったからアイツにとっての初対面はクラス内だろう。
 その時の印象は『とにかく平凡・凡人』、特徴といわれたらあの髪の色くらい、あの髪の色を黒とかにしたら全く頭に残らないなと思った、それ位アイツは特徴といえる特徴が無かった。
その印象は当たって、性格も飛び抜けて何かぶっ飛んでるわけもなくそれなりのコミュニケーション能力とそれなりの判断力。誰にでも隔てなく接して程よく平等に人との距離を取り八方美人だがそれを上手く使っていた、普通という言葉がよく似合うのだ。
 そんな姫堵とはクラス委員長とクラス副委員長という役職の関係上、関わるようになった。まぁルームメイトと分かっていた時点で最低限の付き合いをするんだろうなとは予想していたけれどそれ以上関わるつもりは毛頭もなかった、そのせいか最初の方は姫堵に嫌われていたもんだ。
事務的な伝言のため話しかけると嫌そうな顔をされ、俺の話題を振られる度一気に不機嫌になる。ある意味あの八方美人であるアイツにあからさまな顔や態度を取らせていた俺はすごいんじゃないかと思うほどだ、実際は全然凄くない。
 高二にもなれば、それなりにお互いのことを理解していて姫堵のトラウマの件はほんの些細なことで知った、人には言えないような内容でもあるトラウマの一部を知っているのは俺のみだというのも今では当たり前のことになった。
事情を知っているからというのもあるのだろう、コイツは幸せになるべきだと強く思う。
 だが残念な事に理解したことの中には俺ではどうしようもないことがある、そう体質だ。姫堵と知り合って二年、コイツはどうやら何かと不運に見舞われるらしい。別に病気になったとか事故にあったとかデカい不運じゃない。トラウマに関してはデカい不運だけれど俺が姫堵と知り合ってからの不運は本当に小さく些細なことだ、そのせいかトラウマを知ってから姫堵は限界が近くなると無意識に俺にSOSを発信してくる、声にしたり態度に出したりする訳でもなく本当にさり気ない方法で。
 さっきも言ったけれど姫堵は幸せになるべきだと思う、これは本心だ。姫堵は幸せになるべきだ、姫堵が俺を頼ってくるのは別に構わないし力になってやりたいと思ってる。でも俺が姫堵を幸せに出来るかと聞かれたら答えは『NO』だ、不幸体質のせいか姫堵は小さな事でも幸せに感じるようで他の奴からすればなんとも思わないことでも姫堵竜という男にとってはとても幸せなことの一つなのだ。
だからこそよく考えてほしい、幸せを噛みしめている時の表情より、辛いことを苦しそうに耐えてる時の表情の方が好きだと思っている奴がソイツを幸せに出来ると思うかどうか。例え本人がそれすらも「幸せだ」と言ったとしてもそれはもう頭がそういう風に捉えるよう洗脳されていると言っても過言ではないと俺は思う。

 姫堵が嬉しそうに笑っている顔は好きか嫌いかと聞かれたら好きだ、だけど姫堵は笑った顔でもどちらかというと【苦笑】や【困ったように笑った】顔の方が似合うのだ。もちろんこれは俺自身の価値観だから他の奴らからすればそんなことはないのかもしれないが俺は姫堵の困ったように笑う顔を見ているのが好きなんだと、ふとした時に思う。俺がそういう風に仕向けるんじゃなく、他の誰かが姫堵にそういう顔をさせて堪えきれなくなるまで我慢して、そして辛そうに手探り状態で俺に小さな子供のように縋りつく姫堵が好きなんだと、そういうことがある度これでもかっていうくらい認識してきた。

(最低だな、俺。)

 小さく自分を嘲笑する笑みが出てくるのもいつもの事だ。最後まで支えてやれるわけでもないのに縋らせて期待ばかり大きくさせてるのは十二分理解してる、お互いの為にならないって分かってるのに頭のどっかではそんな風に縋る姫堵を一番近くで見ていたいと思ってる。
そんなことしてはいけないし、する気もないのだけれど。

「どうしたの、高科?」
「いや…なんでもない。」

 なんてことを考えているなんて知らない姫堵は今まで通り、耐えられなくなるまで我慢して俺に縋りつくのだ。


(そんな弱ってる時が一番好きで愛おしいなんて。)







高科と姫堵



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