喪失という名の真実


昇っていく煙が、憎らしく…そして悔しく思えた。





最後の最後まで、彼奴は彼奴のままだったんだ。周りに気を使って嘘の笑顔貼り付けて良い人気取りして、周りの力を借りようとせず一人で抱え込んで…彼奴は最後までそうだった。
あの前、彼奴はなんて言った…?

「僕は、手駒なんかにはしないよ」
「生きて返すのが、仕事だって思ってる」
(何が生きて返すだ)
(何が手駒にしないだ)

目の前で飛び散った赤い水、最後まで責任やら失敗やら全部を一人で背負おうとしたのが丸分かりだ。なのに、目があった瞬間彼奴はいつものように笑ったんだ。
よく(俺の一方的だった気がするけど)言い争った、そこはそうじゃないとかなんであれをそう持ってくるんだとか…それが日常茶飯事だった。
任務やら仕事やら一緒に組まされて、俺はあからさまに嫌そうな顔をしてそんな俺を見て彼奴はいつも苦笑い。遅くまで残って仕事してたのも知ってる、彼奴は誰よりも責任感が強くて真面目な奴だったから。息抜きも必要だという理由でよくアリスと一緒になって彼奴にちょっかい出したものだ…いや、俺の場合は真面目に嫌がらせしてた気がするけど。
彼奴は周りから妬まれる役は自分から買って出る奴だった、多分…精神的にはボロボロだったんだろう、と今思う。かなり酷い事を言われたりやられてた、誰かいると何でもないように笑っていたけど一人の時はそりゃもう酷い顔してたもんだ。疲れきった顔して、必死に何かを堪えてた。俺に見られてたの彼奴は知らないだろう、俺も吃驚したくらいだからな。
アリスが彼奴から聞いた『人間ほど恐ろしく怖い物はない』、意味がわからなかったって言っていた。彼奴には、俺やダイヤ…アリスまでもがそう見えていたんだろう。周りの人間に怯え、恐怖を抱きながら…

「味方…として、仲間として見られてなかったってことか……」

最後の最後まで。
あの笑みは、バリアだったんだ―…大丈夫だよ、そっちに何も被害とか出さないから、責任は全部僕が背負うから、だからそれ以上は近寄らないで。そういう本心を隠す仮面だったんだ、嘘の笑顔貼り付けたんだ。
隣ではアリスは俯いてその隣ではダイヤが真っ直ぐ棺を見つめている、俺は空へ静かに昇っていく白い煙をじっと眺めながら思う、彼奴は俺を嫌っていたんだろうか、と…恐怖を抱いていたんだろうか、と。
例えそうだったとしても俺は…









(お前のこと、好きだったよ。)
失ってから真実に気が付く、盲点だな














クローバー



[TOP]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -