俺はいつからこいつと仲良くなったんじゃろう。確かこいつはブンちゃんの幼馴染みでいつもブンちゃんにくっついてばかりで、俺のことも仁王くんから仁王に変わって、いつのまにか三人で仲良しこよし。あれ、結局いつからかとかわからんかったけど、まあいいか。

「なんか甘いものくれー」
「あらブンちゃんそんなにメタボになりたいの」
「うっ…」
「ブンちゃんは既にメタボ確定じゃから大丈夫ぜよ」
「そっかそうだったね、はいお好きなだけどうぞ!」
「な、なんか腑に落ちねえんだけど」

ブンちゃんはそろりとポッキーを一本だけ摘んで控えめにぽりぽりとかじった(それでもブンちゃんにしては我慢した方だと思う)。俺も大概人を弄ぶのは上手な方だけどこいつもさすがにブンちゃんの扱いには相当慣れてるのう、とつくづく感心する。

そういえば一度、二人でいる時にこんな話をした事がある。

「お前さん、ブンちゃんブンちゃんて相当ブンちゃんの事好きなんじゃなあ」
「えーあり得ない」
「隠しても無駄ぜよ」
「いやだからあり得ないってば」

かなり低いテンションで殆どあり得ないで済まされたけど、未だにあれは照れ隠しだと思ってる。ブンちゃんだって言い出せないだけできっとこいつの事が好きなはず。

そんな訳でブンちゃんにも話してみた。

「ブンちゃんいつになったらあいつに言うんじゃ」
「は、言うって何を」
「告白じゃ告白」
「え、お前、本気で言ってんの?」
「本気に決まっとるぜよ」

そう言うと何故かブンちゃんは恥ずかしいと言うより呆れた様子で溜め息をついて再びこっちを見た。

「じゃあ俺、今から言ってくる」
「男じゃのう!」
「いいんだな」
「当たり前じゃ」
「俺があいつと付き合っても」
「うん」
「手握ったり、ちゅーしたり、胸触ったりしても、」
「ブンちゃん大胆ぜよ」
「何も言わずに、見てられるんだな?」
「もちろん…」

ブンちゃんが、あいつに。想像してみるとにやけていた口もさすがに苦笑い。あ、うわ、やめんしゃいやめんしゃい。想像の中のブンちゃんを必死に止める。

「いらいらするだろ?」
「なんかブンちゃんにむかついてきたぜよ」
「むかついてって…まあいいや、うん、つまりそういうことだ」
「言ってることがよくわからんぜよ」
「ああもうお前面倒くせえ!」
「ご乱心かブンちゃん」
「仁王、あいつと付き合いてえか」
「…まあ、できれば」
「あいつとちゅーしてえか」
「したい」
「あいつとヤりてえか」
「ヤりたい」
「だったら今すぐ告ってこい!」
「了解ナリ!」

ブンちゃんにつられたのか、変に気持が高ぶって俺はあいつのいる資料室へ行こうと教室のドアをがらっと勢いよく開けた。開けてびっくりしたのは、そこにどっさりノートを持ったあいつがとてつもなく冷めた顔で俺たちを見ていたことだ。

「…最低」

その後しばらく俺とブンちゃんが何を話しかけても無視されたのは、言うまでもない。

100107

仁王が天然であほすぎてごめんなさい。