好きです、付き合ってください。真っ直ぐ目を見てそう言うと彼女は目を丸くして困惑を示した後、少し頬を赤らめて睫を伏せ、小さく頷いた。最高にフィーバーだった俺は断りもなく軽く唇を奪ってやった。初めてだって言うから更に嬉しかった。

彼女が俺を好きじゃないことは言われなくても知ってたし、気になる人がいるのもわかってた。でもその人には恋人がいたし人の頼みなどを断れない彼女の性格も知っていたから気持を伝えれば付き合えることは確定していて、そうなればもうこっちのもの。いや何か言い方悪くなったけど勘違いしないでね。そもそも自分から告白なんてしたことがないし、今まで付き合ったら長くても一ヶ月以内には大人の階段上ってた俺が二ヶ月経ってもキス止まり。こんなにも俺は彼女を大事だと思ってるんだよ。

「ねえ今日はマックにでも寄ってかない?」
「…あのね、千石くん、今日は話があって、」
「あっでもミスドもいーよねあの新作食べてみたいし」
「千石くん、」
「でもでも今のフルーリーもまだ食べてないんだよね、どっちもってゆうのも」
「千石くん!」

普段大人しい彼女が珍しく大声を出したので少しびっくりした。だけど俺は笑顔を絶やさない。

「ずっと、言おうと思ってたんだけど、やっぱり」
「駄目だよ」

困った様子の彼女に、もう一度言ってやる。駄目だよ。

付き合ってて時間が経ったら自然にあいつのことも忘れていくんだと思ってた。だけどやっぱり彼女の目の先には自分じゃなくてあいつがいる。知ってたんだ俺は、最初からわかってたんだ。でもだからって、俺が諦めて頑張れーって、言ってあげるのが正しいの?そうだとしたら俺は間違ってるよね。みんな口を揃えてしつこい男だと罵るだろうね。だけどもうそんなことどうだっていいよ、だって俺は君のことすごくすごく愛してるんだ。愛してる、ってだけじゃ表しきれないほど愛してる。理由はそれだけで十分でしょ?

「俺のこと好きじゃなくてもいいよ。ただ、俺から離れていかないで」
「…でも、私、」
「それでもいやだって言うなら、…俺、何するかわかんないなあ」

そう言うと怯えた目で俺を見た。ああやっと俺の目を見てくれた。あいつじゃなくて、今は俺を。でも明日にはまた、あいつを、見るのかな?

「泣いてる、の?」

え、あれ。そうなのかもしれない。そういえばほっぺたが冷たいような気がする。なんでなんで俺はさっきまで笑ってたのに彼女はまだ別れるだなんて言ってないのになんで。

「さっき、は、好きじゃなくても、いいって言ったけど、やっぱいや、だ。俺を好きになってほしい、愛して、ほしいよ、俺のこと」
「千石、くん」

だだをこねる子供のようにすがる俺につられたのか彼女の目も潤んでいた。


090312