「またふったんだ」
茶化すように言うと彼女はあんたって情報通だよね、と呟いた。彼女に告白した男は五人、そしてその誰一人としていい返事をもらった奴はいない。つまり彼女は全員ふったのだ。
「もしかして好きな人がいるの?」
「いや、ないない。今まで私に好きな人なんかいたことないって、知ってるでしょ」
「確かに聞いたことはないけど…じゃあ気になる人は?」
「それもない」
「えー、ほんとにほんと?」
「ほんとだって」
そう笑う彼女に嘘をついている様子は見られない。俺ならわかる。結構長い間つるんできたんだ。それにずっと、彼女を見てきたから。 しかし好きな人がいないっていうのは、喜ぶべきか悲しむべきか。
「千石は好きな子多いよね」
ぎくっという効果音が付きそうな反応をしてしまい、とりあえず苦笑いを浮かべる。あれはさ、違うんだ、本当に好きってわけじゃないんだよ。弁解したいのは山々なんだけど。弁解しても、だから何、私にはどっちにしろ関係ないことじゃない、と言われるのがオチだ。彼女への想いを告白しなければ説明がつかなくなる。
「どうかした?」
「え、いや…」
無言のまましばらくの間目が合う。恥ずかしくなって俺が先に目を反らしてしまった。 今言うべきか、言わないでおくべきか。そんなことを考える余裕はなく、俺の口からは心の中でずっと願い続けていた素直な想いがこぼれた。
「ねえ、俺を好きになってよ」
081215
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