「カリガネ!」

「、!久しぶり、だな」

「会いたかったよー!!」

何年も離れていた恋人かのように見えるだろうが、実際会ってないのはたった一ヶ月だけ。この女が天鳥船に乗り損ねて、船が色々な地を転々としていると、こいつは自力で(と言っていたが多分人に頼りまくってたと思う)天鳥船を探してたみたいで、偶然ここで俺たちに会うことができたのだ。つくづく運のいい奴だと思う。

「怪我はないか?」

「全然大丈夫!」

「よかった…」

「え、わ、ちょっと、」

「俺も、会いたかった」

「カリガネ…!」
ちょっと大丈夫かこいつら。抱きついたよ。拒んでるつもりだろうけど嬉しいの隠しきれてないよ。普通に俺たちいるんだけどこんな人前で見せつけられても困るんだけど。いや、間違えた、いらつくんだけど。

風早はわざとらしく目を背けてるし忍人は呆れた顔してるしサザキは見てないふりして向こうへ歩き出すし柊はなんかにこやかに眺めてるし布都彦は焦ってるだけだし遠夜は目が点になってるし。

「…千尋、放ってこうよあいつら」

「き…気持ちは分かるけど、放ってくのは可哀想、だよ」

「そうそう。おもしろいやないの、見ていこうよ」

「楽しんでんのはあんただけだ」

「幸せな二人見てると、こっちも幸せな気持ちになるんどすえ」

「あっそう」

どうやら苛々してるのは俺だけみたいだ。と言うかあの女、他の仲間には何の言葉もなしにカリガネ一直線で走ってきたよな。別に声を掛けてほしい訳じゃないけど失礼極まりないってのわかってるんだろうか。わかってないだろうな。やっぱり放ってこうよこいつら。



異世界の二人



080828

那岐視点のお話。カリガネ出番少ないですごめんなさい。