あ、やってしまった。やつと目ががっつり合った。すぐに俺は目を反らすが、そいつは思った通りこちらへ向かってくる。
「なんで目反らすの」
「別に、反らす以前に見てない」
少し怒ってるように言うが実際全く怖くない。俺はそれに冷たい言葉を返し、ふいっと顔ごと横に向けてやった。そのまま反対方向へ歩こうとする俺をすぐに名前を呼んで引き止めた。
「なんで逃げるの」
「別に、逃げる以前にお前と関わってない」
さっきと同じように返してやると、クソ日吉!と大声で叫ばれた。おいおいそんなこと女が言うもんじゃないだろ。
「日吉アホし」
「なんだそれ」
「アホしアホし」
「意味不明」
「そういや日吉って下の名前もしで終わるんだね」
だからなんだ。どうせ語呂が悪いとかなんとか言うんだろ。結構気にしてんだよ。
「わかし!」
「な、んだよ」
思いついたように俺の名前を口に出し、いきなり下の名前で呼ばれた俺は焦った。断じて喜んでいる訳ではないのをわかってほしい。ただびっくりしただけなんだ。
「わっかしー」
「…」
「わっかし!わっかし!」
「…」
「わっかしわっかし!」
「俺その芸人嫌いなんだけど」
「うっそ面白いよ」
「人によって好みがある」
「そうだねわかぴー、かきぴー?おいしそう」
「やめろ」
「日吉の名前楽し!」
「人の名前で遊ぶな」
意味のわからない言葉を続け様に吐いてけらけら笑う。こいつはいつもこうだ。さっきのも、ちょっと怒ってるように見せようとしても自分からこんな方向へ話が脱線してひとりで楽しんでる。今更ながらほんと意味がわからないなんだこいつ。
無邪気というより馬鹿 (精神年齢何歳だよ)
080730
わっかし!わっかし!、気に入ったのでAさんより使わせてもらいました。
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