まだ外は薄暗い、早朝。タカ丸さんの隣で目覚めた私は、慌てて身体を起こした。タカ丸さんは寝惚けて、むにゃむにゃと何かを話している。私はゆっくりと布団から抜け出し、タカ丸さんに布団をかけ直す。気持ちよさそうに眠っているタカ丸さんを見て、思わず深いため息がこぼれた。酒に酔うと思わぬ行動に出るから良くない。
 タカ丸さんを起こさないように廊下に出て、自分の部屋に向かう途中で、土井先生に遭遇した。ぎょっ、として咄嗟に方向を変えようとした私は、土井先生に腕を捕まれ、あっさりと捕獲された。逃げられるとは始めから思わなかったけど。


「お、はようございます、土井先生」
「おはよう、名前。ずいぶん早い目覚めだな」
「珍しく目が覚めちゃったんですよあはははは」
「あはははは、じゃないだろ。具合は悪くないのか」
「平気です、けど、土井先生、気付いていたんですか」
「あれだけ騒いでいて、気付かないわけがないだろ」


 嗚呼、確かに。昨日のあの様子を思い出し、私は苦笑した。土井先生は私の頭に軽く手を置き、「お前はまだ酒を飲むには早い」とか「そもそも学園で隠れて酒盛りをしようと思うことが間違っている」とか説教が始めたが、私は完全に巻き込まれた側なので、特に心が痛むこともない。むしろ、久しぶりに土井先生と二人で会うことができたことが嬉しくて、私はふへへ、とだらしない笑みをこぼしていた。一年は組のことで常に手一杯な土井先生とは、なかなかゆっくり会う機会がない。


「ところで土井先生、何故ここにいらっしゃるのですか。あ、もしかして、私に会いに来てくださったとか?」
「名前を叩き起こしにきたんだよ」
「おや、ということは、急な任務が入りましたか」


 私が納得したように手を叩くと、土井先生は苦々しげに頷いた。土井先生ったら、私のことをいつまで子ども扱いするのやら。世に出れば、結婚していてもおかしくない年齢だというのに。それがまたくすぐったくて、私は口角が上がってしまう。土井先生も早く結婚すればいいのに。引く手あまただろうに。
 早朝に通達が来る場合、すぐに学園を発たなければならないことがある。土井先生の嫌そうな顔を見る限り、今回もそうなのだろう。土井先生は私が任務で授業を休むことを嫌がる。まあ、あんな点数を見たら、先生なら誰でも嫌がるだろうけど。


「今回はある城に密書を届けてもらうだけなんだが、その城が遠く、行って帰ってくるだけでも三日はかかる。詳しいことはあとで学園長から説明があるから、朝食が終わったら学園長の庵に行ってくれ」
「はい」
「…今日は授業があって見送りに行けないから、今言っておく。絶対に無理はするな。自分の安全を第一に考えろ。それから、」
「必ず帰ってこい、でしょう?」


 土井先生の父親のような発言がくすぐったくて、私はくすくすと笑う。そんな私に土井先生はふっと息を吐いて、ふわりと優しく微笑んだ。

 嗚呼、お願いだ。せめて今だけは、この幸福に浸らせておくれよ。










120402

文章がぐちゃぐちゃ過ぎる。
土井先生がお父さんな話が書きたかった。