二週間ほどかかった任務を終え、久しぶりに学園に帰ってきた。夕焼けに照らされる忍術学園の門をくぐってすぐに小松田さんに抱き付かれ、ぐずぐずと泣かれた。任務の途中で学園への連絡を絶ったことで、みんなを不安にさせてしまったらしい。離れてくれない小松田さんを背中に張りつけたまま、学園長先生の庵へ向かう途中に食堂のおばちゃんに会い、ここでも熱い抱擁をいただいた。いまだ泣いている小松田さんをおばちゃんに預け、学園長先生を訪ねると、なぜか他の先生方も集まっていた。どうやら私のことを大層心配してくれていたようで、一発目に怒られてしまった。土井先生なんて泣き出しそうな顔をしていた。ごめんなさい。そう謝ると「おかえり、無事で良かった」って頭を大きな手で撫でてくれて、やっと任務が終わったことを実感した。

 湯浴みを終え、四年長屋へ向かう途中、可愛い可愛い小さな後輩たちに見つかり、その大きな目に涙を溜めて「先輩、おかえりなさい!」って抱き付かれた。嗚呼どうしよう、可愛くて仕方がない。一年は組の教室に招き入れられ、私に集まってくる一人ひとりの頭を撫で、慰め、たくさんの愛を返した。嗚呼、愛しい後輩たち。心配をかけてごめんね。
 誰が呼んできたのか、気付けば他の学年のみんなも集まっていて、そこからはとてもとても騒がしかった。「ごめんなさい」と「ただいま」を繰り返して、怒鳴られたり、抱き付かれたり、頭を撫でられたり。泣いたり笑ったり怒ったりしているみんなを見て、私はまたここに帰ってこれたことを実感した。

 ふと、私の愛しい同輩たちがいないことに気付く。こんなに人が集まっているのに、四年生は誰ひとりいなかった。私の膝を占領していた可愛い後輩を降ろし、私はみんなに別れを告げ、長屋へ足を進める。辺りはすっかり暗闇に包まれていた。四年長屋でひとつだけ、灯りが灯っている部屋がある。話し声はない。部屋の主である喜八郎と滝夜叉丸の名を呼びながら、ゆっくりと戸を開けると同時に、抱き付かれた。思わぬ衝撃に尻餅をつく。きつくきつく抱き締めてくる愛しい同輩たちに、私は笑みを浮かべ、静かに涙をこぼした。


「ただいま、みんな」


愛しい愛しい同輩たちが声もあげずに泣くのを見て、私は生きていることを実感した。



(私の世界は、それはそれは小さくて、とても優しい、箱庭なのです)





120214


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