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 大学生パロ
 主人公出てない



「季節は春に移り変わろうとしています」


 いつものように食堂でだらだらと空き時間を過ごしているところに勘ちゃんがやってきて、突然意味のわからないことを言い始めた。課題のレポートをしていた兵助も、雑誌を読んでいた三郎も、食堂のおばちゃんからもらったというパンを食べていたハチも、本を読んでいた僕も、全員がぽかんと勘ちゃんを見た。勘ちゃんは何が楽しいのか、にこにこと笑っている。三郎が「どうしたんだ、勘右衛門」って僕に耳打ちしてきたけど、僕もまったくおんなじこと考えていたところだよ。


「春といえば!はい、雷蔵!」
「え!えっと、お花見?」
「おっといきなり正解!ではお花見といえば!はい、ハチ!」
「うまい飯と酒!」
「ピンポーン!ってことで、今日お花見しない?」


 勘ちゃんの唐突な提案に、またまた僕たちはぽかんと口を開けた。勘ちゃんの言うとおり、今は春に移り変わる時期。確かにだんだんと温かくなってきて、分厚いコートや長いマフラーもいらなくなってきているけど、まだ春とはいえない微妙な季節だ。こんな時期にお花見したら、白い目で見られると思うんだけど、うーん。


「まだ桜は咲いてないじゃないか」
「満開になってからじゃ遅いの!人が多過ぎて疲れるじゃん!兵助も人が多いの嫌だろ?」
「嫌だけど、でも、」
「おれは勘右衛門に賛成!うまい飯と酒があれば、桜が咲いてなくてもいいし」
「僕は桜見たいけどなぁ」
「いや、ちょっと待て。花見ってどこでやるつもりだよ」
「最初は外でやってー、寒くなってきたら三郎んちかな!」


 笑顔で言い切った勘ちゃんに、三郎の顔が引きつった。三郎の家からは、桜並木の桜が少しだけ見えるのだ。去年そのことに気付いた僕たちは毎晩のように集まっては騒いでいたっけ。


「おれとハチと雷蔵がお酒担当で、三郎と兵助が料理担当で異義ある人ー」
「いつもこの分け方してるんだから、今さらだろ。何か食べたいものあるか」
「豆腐」
「兵助、それは僕たちが買ってくるね。僕はそうだなぁ、お稲荷さんも食べたいし、煮物も食べたいし、うーん」
「雷蔵のはどうせ三郎が全部作ってくれるって。おれは甘いものが食べたい!団子も!」
「俺はあれ!あの、名前思い出せねぇけど、去年食ったやつ!」
「とりあえず去年作ったやつ作っておけばいいな。外で食うのなら、手拭くやつとか忘れるなよ」
「はーい!」


 買い物組が3人同時に返事をして、馬鹿みたいに笑いあった。どこでお花見をするかを相談しているみんなを見て、去年もこうやって計画立てたなぁ、と思い出す。そこでふと1人の女の子のことを思い出した。ああ、そういえば、去年の春に僕たちはあの子と知り合って、この1年、一緒にたくさんの時間を過ごしてきたんだった。僕はわいわいと騒いでいるみんなに向かって、いつもの言葉をかける。


「ねぇ、あの子のことも呼ぶんだよね?」


 そしたら全員が笑顔になって、「もちろん!」って返ってきた声に、僕も自然と笑顔になった。


 今年の春は去年とは少し違う色をしている。







120313〜120328

タイトルがややこしくなった。



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