※拍手ログ



「富松くん、こんにちは」
「っ、こん、にちは」


 にこにこと愛想の良い笑顔で、委員会の仕事をする俺の手元を背後から覗き込んできたくのたまの先輩。びっくりして振り向いた瞬間に絡まった視線を慌ててそらし、手元の板に視線を戻す。いつものように隣にしゃがみ、「もし邪魔じゃなかったら、ここにいてもいいかな」と顔を覗き込まれる。それ、本当にやめてほしい。死にそう。ばくばくと高鳴る心臓の音に気付かれるんじゃないかと、俺の頭はいつもそんな考えでいっぱいだ。


「は、はい。どうぞ」
「ありがとう」


 またふわりと笑う。カッと顔が熱くなって、顔を思いっきりそらした。もう本当に、心臓が痛ぇよ!先輩の視線が俺の手元に向いて、俺はほっと息を吐く。顔を覗き込まれると自然と上目遣いになるから、そんなの、もう…!かわいいにも程があるだろ!痛いくらいに、というかもうすでに痛い心臓を落ち着けようと、目の前の作業に集中する。しかし先輩があまりにもじっと見つめてくるものだから、まったく集中できない。


「富松くんの手、好きだなぁ」
「な、なななに言って…!」
「えー?だって男の子って感じの手してて格好良いんだもん。手つないだりなんかしたら、きっとそれだけで安心しちゃうんだろうな。富松くんって面倒見もいいし、しっかりしてるし、」
「も、もう、やめてください!」


 指を折りながら挙げられる褒め言葉に、耐えられなくなって先輩の言葉を中断した。これ以上は顔から火が出て死ぬ。頭を抱える俺の隣で「え、まだまだあるのに。えっとね、」なんてまた指を折ろうとする先輩。俺はどうしてもやめさせたくて、これ以上言われたら本当にしあわせで本当に死んでしまいそうで、その小さな手をつかんで、ぎゅっと握り込んだ。


「もう十分ですから!そ、そうやって先輩は、いつも俺のことをおちょくって…、って、先輩?」


 じっと手を見つめる先輩につられて視線を移して気付く。おおお俺、先輩の手を…!「すみません!」と手を引こうとしたら、先輩のほうが先に手を解いて、ふわりと俺の指と先輩の指を絡めた。いわゆる恋人繋ぎというやつで、俺は、息が止まる思いだった。むしろ止めた。そんな俺の目の前で、先輩はまたふわりと笑った。


「ほら、やっぱり、富松くんの手は安心する」


 ああ、どうしよう。死んでしまいそうだ。






120214〜120313


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