※現パロ 中学生くらい




「トリック オア トリート」


 席に着いたばっかりのわたしのところに来て、にっこりといつもの笑顔でわたしの前に手を出してきた庄ちゃんに、思わずきょとんとしてしまった。んー?、と首を傾げると、庄ちゃんは「お菓子くれなきゃ悪戯するぞ」とわざわざ日本語に直して言ってくれた。あ、ごめん、わたしそこまでお馬鹿さんじゃない。真面目で冷静な庄ちゃんがハロウィンって、似合わない、というかそういうの興味ないのかと思ってた。


「庄ちゃんがこういうイベントに参加するとは思わなかったー、はい」
「なんだ、持ってるの」
「うん。みんなで交換しようかなって思って」
「悪戯できると思ったのに、残念」


 わたしが渡したチョコレートを見ながら、庄ちゃんは本当に残念そうな顔をしていた。お、お菓子持ってきてよかった!昨日団蔵が教えてくれなきゃ忘れるところだったよ。庄ちゃんのことだから、悪戯とか何とか言って無理難題を押し付けてきそうだし。チョコレートを口の中に放り込んだ庄ちゃんを見て、あ、と思いつく。鞄に突っ込んでいた手を出して、庄ちゃんの前に手を出した。


「庄ちゃん、トリック オア トリート」


 庄ちゃんがお菓子を持っているとは思えないけど。別に庄ちゃんに悪戯したいわけじゃないけど、どうせならこれを理由に課題を手伝ってもらおうかな。にこにことしているわたしに、庄ちゃんも学ランのポケットに手をつっこんだ。え、お菓子持ってるの?残念。はい、と顔の高さに出された庄ちゃんの手からお菓子を受け取ろうと手を持ち上げると、その手を掴まれて、あっという間に視界は庄ちゃんでいっぱいになった。目を見開いて動きを止めたわたしを、庄ちゃんはいつもの調子でにっこりと笑った。


「…はっ、え、!?」
「甘かったでしょ?」
「…ここが教室だとご存じでしょうか、学級委員長さま」
「ほとんど来てないから、問題ないよ」
「そういう問題じゃないでしょ…、しかも庄ちゃんお菓子持ってなかったし、完全に騙された…」
「残念でした」


 庄ちゃんの意地悪そうな笑顔を見ていたら、昔庄ちゃんと同じ委員会だった先輩を思い出した。庄ちゃん、そんなところは似なくてもいいのよ。彦ちゃんみたいに真面目なままでよかったのよ。適当に鞄の中身を引き出しに入れながら、「でも庄ちゃん、お菓子くれなかったから、後で課題手伝ってね」と言えば、庄ちゃんは「うーん」と唸って、わたしの前の席に座った。


「それって悪戯って言わないんじゃない?」
「言うよー、庄ちゃんの出来上がった課題を、わたしの課題を入れ替えれば」
「それじゃだめでしょ。教えてあげるから、一緒にやろう」
「えー、写させてくれないの?」
「もちろん」
「結局わたしが損してる…」
「損?何のこと?」
「…なんでもないでーす」


 そうだよね、と言わんばかりの庄ちゃんに、苦し紛れでもうひとつチョコレートを投げつけた。そのあとぞくぞくと教室に入ってくるみんなに挨拶をしながら、ふと触れた自分の唇に、確かに甘かったなあ、なんて恥ずかしいことを思ったのは、隣で笑っている庄ちゃんにもばれていない、はず?





20131031
Happy Halloween!!!


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