紹介します。今目の前でわたしが作ったハンバーグを頬張っているのは、幼馴染で恋人の竹谷八左衛門くんです。わたしは小さいころから、はっちゃん、と呼んでいて、最近ふたり暮らしを始めました。


「なまえはおれがいないとだめだからなあ」


 ちなみに、これは小さいころからのはっちゃんの口癖です。たぶんほとんど毎日言われている気がします。今もはっちゃんに口を指で拭われながら言われてしまいました。どうやら口の端っこにハンバーグのソースがついていたみたいです。はっちゃんに「ありがとう」とお礼を言ったら、「ちゃんと食べてからしゃべろうな」と言われてしまいました。こくん、とひとつ頷いて、食事を再開。次々に口の中に食べ物を放り込むわたしを見て、はっちゃんはやっぱり「仕方ないなあ」と言いたげに、笑うのです。そのやさしい顔が、だいすき。はっちゃんが取り分けたサラダをわたしの前に置きながら、「そうだ、なまえ」と口を開いたので、わたしは「なあに」と首を傾げました。


「おれ、バイトをもうひとつ増やすことにしたんだ」
「、そう、なの」
「だからなまえをひとりにする時間が少し増えるけど、心配しなくてもいいからな」
「…ねえ、はっちゃん」
「なんだ?」
「わたしも働いたら、はっちゃん、少しは楽になる?」


 そう言ったわたしに、はっちゃんは一瞬だけ顔をしかめて、すぐにまた、あの笑顔を作りました。はっちゃんはとても心配症です。わたしがひとりでは何もできない、だめな人間だと知っていても、見捨てず、呆れず、いつもそばにいてくれるのです。だから、わたしにはこの人しかいないのです。はっちゃんがだめだと言うことは、きっとだめなのです。はっちゃんの知らない人と友達になることも、友達ではない人と連絡先を交換することも、必要のないときにひとりで出歩くことも、はっちゃんに隠し事をすることも、ぜんぶ、はっちゃんがだめだと言うのなら、だめなことなのです。
 太陽みたいに笑うはっちゃんは、やっぱりわたしの太陽なのです。ときどき眩しくて、目をそらしたくなるけど、わたしにはこの人だけなのです。


「大丈夫だって!おれが頑丈なのは、なまえが一番わかっているだろ?」
「うん」
「それに、なまえ、ひとりで平気か?」
「………」
「な?なまえは大学に真面目に通って、まっすぐ帰ってきて、ここでおれの帰りを待っていてくれれば、それでいいから」
「…うん、」


 そうだね。ゆっくりと頷いたわたしを慰めるように、はっちゃんが頭をなでてくれました。くしゃくしゃと髪が揺れるのがくすぐったくて、思わず口元が緩んでしまって、きっと今のわたしはだらしない顔をしていることでしょう。わたしたちを指差して「お前たちはおかしい」と言う人がいても、何も心配はないのです。だってわたしにははっちゃんがいるのですから。









■竹谷相手で、頭の少し弱い夢主を丸め込んででろでろに甘やかしつつ、ちゃっかり軟禁してるお話/遠野さま





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