足の爪を切っているなまえの体を後ろから抱き込んで、髪に顔を埋める。お風呂上がりだから石鹸の匂いがするし、ぽかぽかと体があたたかくて気持ちいい。すり、とすり寄れば、なまえが小さく身じろいだ。くすぐったいのかな。手元が狂って怪我をしたらいけないとは思うけど、なまえから離れたくない。せめて邪魔にならないようにじっと動かないでいると「伊作ー」と不満そうな声でなまえが僕を呼んだ。
「くすぐったい」
「邪魔しないから、早く爪切って」
「もう邪魔だよ。ちょっと離れて」
「えー」
「足の指、切っちゃいそう」
「それはよくないね」
「でしょ?だから離れて」
「んー」
「なんだよもう」
離れようとしない僕に呆れたなまえが爪切りを置いた。
「」