目を覚ましてすぐに、あの一年生にわあわあと怒られた。医務室の先生や他の一年生に宥められているのを、布団の上に座ったままぼんやりと眺めていると、いつも医務室にいる先輩に「きり丸ね、君のこと、ずっと心配していたんだよ」と笑いかけられて、あの一年生の名前はきり丸というのか、とおそらく見当違いなことを思った。きり丸、という一年生は今にも俺に殴りかかりそうな勢いで怒っているけど、俺の耳はその言葉のひとつも聞き取ってくれなかった。首を傾げた俺を見て、先生が一年生たちに何かを言って、部屋の外に出してしまった。部屋を出る前にきり丸がこっちを振り向いて、ゆっくりと口を動かした。 よるに へやで。 夜に部屋で。
 医務室から自室に移動した後も、先輩や先生が代わる代わる様子を見に来てくれた。運ばれてきた食事に少しだけ手をつけたら、それに睡眠薬か何かが混ざっていたようで、そのあと深い眠りに落ちた。いつも見る悪夢も見なかった。ふと目が覚めれば周りは暗く、そばにはきり丸がいた。暗闇で顔は見えない。


「目を…」
「…え?」
「目を覚まさないかと、思った」
「…俺も、死んだと思った」
「…夜に、部屋で」
「、うん」
「待ってた」
「うん」


 正座をして


「先輩、おれ、どケチなんですよ。欲しいものは何が何でも手に入れたいし、一度手に入れたものは死んでも手放したくない」
「…それは、いいね」
「先輩はその命、いらないんですよね?」
「、え?」
「いらないなら、おれにちょうだい」


 暗闇でもわかる。きり丸が真剣に俺を見ていることも、その目が獣のようにギラギラしていることも。


「あげる」
「…ほんとうに?」
「欲しいなら、あげる。どうせ俺には必要ないものだ」
「そうと決まったら、俺と約束をして」
「うん、なに?」
「生きて。勝手に死んだら、許さないから」
「うん、わかった」
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