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 きらきら



 随分と可愛らしい双子の女の子がやってきた。年齢は7歳。2人はおれの兄貴の子どもで、その兄貴とお嫁さんは少し前に交通事故で死んだ。即死だった。おれたちも小さい頃に両親を亡くしているから、身寄りのない兄貴の2人の子どもを最初に引き取ったのはお嫁さんの両親の家だったが、片方は泣いてばかり、もう片方は口が悪く可愛げがない子どもたちについに愛想を尽かし、2人を施設に預けるとかなんかそんな物騒な方向に話が流れ始めた。もともと2人の結婚にも賛成していなかったとか言いだしやがって、おれはその話を聞きながら、その澄まし顔を殴ってやりたくて、テーブルの下で爪が食い込むほど手を握り締めていた。そんな大人たちの話なんてわかっていないだろうに、不安そうな顔をして、お互いの手をぎゅっと握って離さない2人にたぶん同情したんだと思う。もしくは、幼い頃の自分と兄貴に重ねたのかもしれない。
 おれは周りの反対も押し切って、2人を預かることに決めた。






「名前なんて嫌いだ!!」


 ミーン、ミーンと蝉がうるさい季節。おれたちは以前祖父母が住んでいた田舎の家に来ていた。今は空き家になっている大きな家の庭で雷蔵と2人で買ってきたばかりのスイカを冷やすべく、物置から引っ張り出してきたビニールプールに水を入れていたところに、三郎の声が響いた。滅多に大きな声を出さない三郎にびっくりして振り向けば、さっきまですやすや寝ていたはずの三郎が縁側に立っていた。しかも涙目。ついさっきまで水で遊んでいた雷蔵も、きょとん、と首を傾げている。一体どうしたっていうんだ。


「三郎、起きたんだな、気付かなかったよ、ごめんな」
「三郎もこっちで遊ぼうよ。冷たくて気持ちいいよ」
「お、そうだな。よし、今サンダル持ってきてやるから、そこで待ってな」


 おれは持っていたホースをビニールプールの中に突っ込み、玄関に向かう。今では珍しい引き戸の玄関を開け、きちんと並んだ小さなサンダルを持って庭に戻ると、縁側に三郎と雷蔵が並んで座っている。こうして見ると本当にそっくりだ。おれに気付いて笑顔で手を振る雷蔵に、おれも笑って手を振り返すと、三郎がおれを睨みつけた。なんでだ。せっかく可愛い顔が台無しだ。


「おれ、三郎になにかしたかなあ」
「なんかね、三郎が寝ている間にぼくと名前が買い物に行っちゃったから、さみし」
「くないっ!」
「…三郎、嘘はだめ」
「…嘘じゃない」
「まあまあ。三郎があんまりにも気持ち良さそうに寝てたから、起こせなかったんだよ。今度からは一緒に行こう。約束な」


 おれはその場にしゃがんで、俯いている三郎の顔を覗き込む。ほんのりと赤い顔をした三郎が、小さく頷いたのを見て、おれは笑った。ぐりぐりと色素の薄い綺麗な髪を撫で、ついでに良く似た雷蔵の髪も撫でてやる。三郎は「痛い」とか言いながらも、俺の手を振りほどこうとはしない。雷蔵は嬉しそうにきゃっきゃっと笑う。おれは、思わず2人の頭を抱き寄せた。
 この子たちは無条件で守られるべき存在なのだ。だってこんなに小さくて、こんなにいとおしい。この子たちの夏休みが終われば、また親戚の家に預けられる。おれが大学を卒業して、就職して、2人を迎えに行けるようになるまでは、と頼み込んだのだ。2人を預かる、なんて、学生のおれにはやっぱり無理な話だった。だけど、その一言で、誰かを動かせれば良かった。おれが迎えに行くまで、2人を預かってくれる場所を作れれば良かった。まあ、それにまんまと乗ってくれた大人もいたし、2人もそれでいいと言ってくれたし、あとはおれが頑張るだけ。応援してくれる友人もいるし、おれは本当に恵まれている。心の底から、本当にそう思う。


「あー!名字が幼女を襲ってるー!」
「勘ちゃん、やめなよ。近所迷惑なのだ」
「ここ、山の方だから涼しいな!川に魚とかいんの?」


 背後から聞こえた声に顔を上げれば、大荷物を抱えた友人たちが笑っていた。おれの腕の中から出た三郎と雷蔵がおれの手を取る。わくわくとした表情の2人に、おれはまた笑う。
 おれたちの夏休みは、これからだ。








120730

魚の目さまへ!
10000hit企画に参加していただき、ありがとうございました^^*
幼女双忍おいしいです//////
あんまり設定を活かしきれていない感が否めないですが…(´・ω・`)
そして尾浜久々知竹谷の女体化まで文章にできなくて本当に申し訳ありません。
少しでもお気に召していただければ幸いです。
素敵なリクエスト、ありがとうございました!




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