「カイン」
私は手を組んで懺悔の姿をとっていた。
「何だい?可愛い可愛いアベル」
金色の髪の下の端正な顔が、慈悲に満ち溢れた笑顔を私に向けた。
私は知っている。この笑顔はペルソナ。本当のカインは惡虐を繰り返し奈落の底に堕とされるに最も相応しい存在。
私の…片割れ。
「私は只、皆さんが幸せに…争い無く殺し合わないでと願っただけ…」
「ああ、泣かないで。アベル。君の願いは叶ったんだ…」
何て美しい惡魔。
どんなに美しい天使よりも、この惡魔の方が美しいに違いない。
美の神、アフロディーテよりも美しいのではないか。
白く陶器の様に滑らかな肌が私の肌と重なった。
「人間が争わない、殺し合わないようになったでしょ?」
「でも…ッ!!」
「だから、人間みぃいんな殺してあげたじゃないか」
人間が争わない、殺し合わない世界。
皆殺しする以外に他の策はないよ?
金色の天使の皮を被った惡魔が微笑んだ。
ああ、そうかもしれませんね。
そう、私はそう呟く。
「アベル…っ!分かってくれたんだね、愛しい愛しいボクのアベル!!」
「あ…あ……」
私は金色の惡魔に抱かれる。
一番悲劇的な願いを叶えられながら。
不自由なく、永遠に空虚に生かされながら。
「争いの無い幸せな世界で二人っきりで生きていこう」
(私が皆を殺してしまったんだ)
End
執筆:090906
改筆:110411
bkm