私の灰色、闇と金色の世界


私の灰色の世界に、真っ黒と神々しいまでの金色の光が輝いた。

『君がぼかぁを拾ってくれたのかい?』





何も無い、寂れた路地。
まるで私のようだ。
しかし、一点に不自然なまでの黒が存在感を主張している。
それはどんな影よりも、星の無い夜空よりも暗い。
私は光に魅せられた蛾の如く闇へと足を運ぶ。
蠢く闇の中に粉のようなモノがあった。

(……灰か?)

手に採ってみると、今まで触った砂・粉よりも滑らかであった。
ざらついた手触りは無く、ただただ滑らかで手からさらさらと零れ落ちていく。まるで、人の手には納まらないのだと言っているようだ。

零れ落ちる灰が闇に吸い込まれていく。
私は見たことの無い光景に唖然としていた。
闇へ吸い込まれていく灰と共に、私は手を闇へと伸ばす。
このまま吸い込まれることが出来たなら、私とこの闇は一緒になるのだろうか。

夢を抱く生娘のように私の心が鼓動する。
だが、闇とは正反対の真っ白い手が私を阻止した。
細い指に似つかない強い力。
手から手首、腕・・・奇妙な光景だった。
闇から産まれ落ちてくる(いや、上がってくる)生命、と言うべきか。

人形のように造りものめいた顔。
月に似た輝きを放つ金色の髪。

そして、朱い艶やかな口唇が言葉を紡ぐ。

「君がぼかぁを拾ってくれたのかい?」





「ぼかぁカインってんだ。君の名前は?」

私は神の名前の口の中で連呼する。

「ねぇ、君の名前は何だい?」

神が私の名前を聞いた。
数ある詐りだらけの私の名前を。

「私は…イザーク・フェルナンド・フォン・ケンプファーです」
「そう…イザークかぁ」

神が私の名前を呼んだ。歓喜で膝が笑って崩れ落ちそうになる。
私の淀んだ灰色の世界を金色が侵食していく。

「ありがとう、拾ってくれて。さようなら」

私を、神の背後にいた闇が貫いた。
闇に吸い取られていく私を、神は不思議そうに見ていた。
闇と同化してゆく私は、私であって私ではない。
この私は贋作だ。

「君は人間にしておくのには勿体ないね。こんな力があるのに」
「つまらない力ですよ。弱い人間をいたぶって殺すのも、難無く出来てしまって」

神が「あはは」と無邪気に笑った。

「そんな風に考えるってことは、君はもう人間から掛け離れたね」

でも、ぼかぁの前では一人のちっぽけな人間だ。
本体である私を真っ黒な闇が飲み込む。ズブズブを腰まで飲み込んで、それは止まった。
この闇と一緒になるのもいい、その考えを否定するように。

「本当に君は面白い。狂って叫ぶこともしない」
「お望みでしたら、そうしますが」

神が私の髪を掴んで闇から引き上げた。

「君の髪はぼかぁの闇に似ているね」
「有り難う御座います」
「どうだい、一緒にくるかい?」

私は灰色の世界から引きずり出され、金色と闇の世界を魅る。


End

神が私の髪を掴んで闇から引き上げた。
⇒イザークの髪の毛抜けちゃうよう(^p^)
執筆:091114
改筆:110411


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bkm




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