※24歳円堂×14歳風丸
超次元で雰囲気な小説です
そんなのでも大丈夫な方だけどうぞ
顔を圧迫されているような変な息苦しさを感じて、オレは思わず目を覚ました。
目の前にはよれた白いTシャツ、寝息をたてて上下する広い胸。
かすかにするのは、いつも隣にある太陽みたいなあの匂い。
そしてオレの腰には、程よく筋肉のついた腕がぐるりと巻き付けられていた。
「……、え…?」
起きぬけのぼんやりした目を擦って、何度も何度も瞬きを繰り返す。
今目の前に映る、オレを抱き締めている人物が、にわかには信じられない姿に見えるのだが。
「……円堂?」
震える声で名前を呼ぶと、目の前の人物はもぞもぞと身動きし、ゆっくりと目を開けた。
「…ん?かぜまる?」
まだ眠そうにオレを呼ぶ声は、いつもより幾分低かった。
それだけじゃない。
トレードマークの跳ねた茶色い毛は無造作に立たせられているし、丸かった顎のラインもすっきりしているし、肌の色だって焼けていて、なんだか精悍な顔つきになった。
そして今オレの額に伸ばされた円堂の手は、明らかにいつもより大きくなっている。
「あれ?風丸なんか小さくなったか?」
まだ寝ているような顔をして、それでもオレの額を撫でる円堂に、軽く目眩がした。
「…円堂お前、なんか大きくなってないかっ…?」
寝ぼけるなと軽く頭を叩くと、円堂はうわっと小さく声を漏らして、ごしごしと目を擦った。
「……、」
ようやく覚醒した様子の円堂は、改めてオレを見ると、何度かパチパチと瞬きをした。
その姿は完全に、円堂の面影はあるがいつもの円堂ではなく、成長した大人の男だった。
「風丸…、なんか中学生の時みたいだな」
「…そりゃ中学生だからな。そういうお前は中学生に見えないぞ」
「え?中学生?ていうかオレ24歳だし…」
―――え、?
24歳だって?
オレは慌てて円堂から身体を離し、部屋全体をキョロキョロ見回した。
そうして、思わず言葉を失ってしまう。
そこはオレたちがさっきまで寝ていた円堂の部屋ではなく、小綺麗などこかのマンションのようだった。
棚の上にはトロフィーや盾がいくつも飾られていて、オレが見たことがあるのもあれば、見たことがない物もあった。
イナズマジャパンの皆で撮った写真や、明らかに中学生ではない円堂とオレがトロフィーを持って笑っている写真も飾られてある。
一体ここは誰の部屋なのだろう。
しかし何より驚いたのは、その部屋の壁に掛けられているカレンダーが、今より十年も後の年号だったのである。
「…、夢でも見てるのか?」
まさかタイムスリップでもしたというのだろうか。
そんなまさか。
でもそうでもなければ、この状況に説明がつかない。
事態が全く呑み込めず、一人焦るオレに、何故か円堂は落ち着いた様子で身体を寄せてきた。
「大丈夫だ、風丸」
そして耳元で低くそう囁く。
何が大丈夫なんだよと言いたかったけれども、しかしいつもの円堂よりも大人びた声で、しかも耳元でそう囁かれてしまっては、オレは途端に何も言えなくなってしまう。
黙ったままのオレに円堂は小さく笑い、大きくなった手でオレの襟足のあたりをさらりと撫でた。
「ポニーテールの風丸懐かしいなー。今はもうしてないから」
そうして楽しそうに束ねた後ろ髪を弄ぶ。
オレはふいに気付き、円堂に尋ねた。
「…10年後のオレは、ポニーテールじゃないのか?」
聞くと、円堂は真面目な顔して「知りたいか?」と聞き返してきた。
それに小さく頷き返す。
「…それだけか?聞きたいこと」
「え?」
円堂が変わらない強さを持った目で、じっとオレを見てくる。
意図が分からなかった。
聞きたいことなんて、そりゃあたくさんある。
それが円堂に分かるかどうかは分からないけど、どうしてオレが10年後にいるのかとか、ここは一体誰の部屋なのかとか。
未来のオレはどうしているのかとか。
…それに、10年後、円堂のそばにオレはいるのだろうかとか。
そんなことを考え始めたら、怖くて仕方がなくなった。
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