※基緑+豪吹前提のふぶきやま





ある日、オレは吹雪くんにひとつ提案を持ち掛けた。

「ねえ吹雪くん、協力してほしいことがあるんだ」

「…なに?」

ベンチでオレのすぐ横に座り、エースストライカーのシュートの様子をぼんやり眺めていた吹雪くんは、何とも気のない返事を返した。

彼の動きを追うのに夢中で、どうもあんまりオレの話を聞いていなさそうだ。

「…豪炎寺くんが、やきもち妬くのを見たくはない?」

構わず続けたその言葉に、吹雪くんの肩がぴくりと動く。

「…どういうこと?」

あ、ちょっと食いついてきた。

オレはしめたとばかりに話続ける。

「吹雪くんはさ、豪炎寺くんが本当に自分のこと好きなのかとか、不安になったりしない?」

「……うーん、」

吹雪くんはしばらく考える素振りを見せる。
オレは畳み掛けるように、密かに考えていたある計画を打ち明けた。

「ねえ、こんな提案があるんだけど―――、」


***


オレは緑川と付き合っている。

と言ってもまだ付き合いたてで、二人の関係は未だ変わらないと言ってもいいくらいだ。

一度、思いきって手を繋ごうとしたら、緑川は手が当たっただけで変に意識してしまったらしく、手をポケットに突っ込んでしまった。

それが緑川の照れ隠しだということは充分分かっている。

自惚れかもしれないけど、オレのことを好きだと思ってくれてるから、そうした行動に出てしまうのだろう。
緑川のそんなところも可愛いし、そんなところも含めて好きだと思う。

だけどたまに、本当にたまに――オレも欲張りになったりするのだ。

緑川に、自分から具体的に好意を見せてほしい、だなんて思ってしまう。
あわよくばやきもちなんて妬いてくれたりしたら、だとか。

そう思うのは、オレの勝手な我が儘なのだけれど。




「じゃあ吹雪くん、打ち合わせ通りに」

「うん」

吹雪くんは、思いの外容易く計画にのってくれた。

――オレの考えた計画というのは至って簡単、練習中にひたすら二人で仲良くして、緑川にやきもちを妬かせようという作戦だ。
実に単純明快だけれど、緑川にはこういう直球なのが一番良いと思う。

オレの真意は隠して、あくまで吹雪くんのためにというテイで話を持ち掛けたので、正直彼が作戦にのってくれるとは思わなかった。
けれども、「オレと仲良いふりして、豪炎寺くんにやきもち妬かせてみようよ」と言ったら、彼はしばらく考えた後「面白そうだね」と笑ったのだった。

あまりにも簡単に頷いたものだから、こんなに上手くいくものだろうかと思ったけど、とりあえず提案にのってくれて一安心する。
こういうのは、吹雪くんならなんとなく上手くやってくれる気がするから。


「今日は二人一組でパス練習だって」

さっそくオレの隣でボールを抱えて、一緒に組もうと吹雪くんは笑う。
オレも「いいよ」と微笑み返して、ちらりと緑川の様子を伺った。

しかし、緑川は全然こっちに気付かない様子で、楽しそうに風丸くんと喋っている。

「ほら、行こうよヒロトくん」

そう言って吹雪くんはオレの腕を掴んで引っ張る。

「…あ、うん」

オレはひとまずグラウンドに走った。

緑川がこっちを気にしてくれないと、この作戦の意味がないんだけどと思いつつ、必死に頭を練習モードに切り替えた。




練習中のペアも、休憩中も、ちょっとした会話だって、これでもかというほど吹雪くんと絡んでいるのに、緑川はまったく意に介さない。
それどころか、今日の緑川は風丸くんにべったりだった。

…なんか、ちょっとくらいこっちを気にしてくれてもいいんじゃないか。

逆にこっちがやきもちしてきたぐらいだ。
視界の端で、たまに豪炎寺くんがこちらを見ているのは痛いくらい感じるのに。

「…やっぱり緑川って、鈍いのかな」

本日最後のクールダウンの最中、諦めムードでぼそりと呟くと、隣で吹雪くんが「何か言った?」と機嫌良さそうに尋ねてきた。
機嫌が良い理由はもちろん、豪炎寺くんが思惑通りこちらの様子を気にしているからだろう。

「…別に。良かったね吹雪くん。豪炎寺くん、こっち気にしてるみたいだよ」

そう言うと、吹雪くんはにっこり笑った。

「うん。ヒロトくんの提案のおかげだね」

その嬉しそうな顔に何だか羨ましくなり、オレは遠くで相変わらず風丸くんと喋っている緑川を見つめた。

この作戦、失敗か…。

「あ、ヒロトくん安心して。緑川くんには、この作戦のことちゃんと言っておいたから」


………………は?


「え?どういうこと?」

思わず立ち上がり、吹雪くんの肩を掴む。

「だって言っておかなきゃ、緑川くんが誤解するかもしれないし」

ね?と吹雪くんが首を傾げる。

その誤解を期待して吹雪くんに提案を持ち掛けたっていうのに…!

だから緑川はまったく意に介さない様子だったのか。

しょうがない。
これが真意を隠して上手くやろうとしたがための結果、というやつだろうか。

「あ、あとね」

吹雪くんはさらににっこり笑って、こう続けた。

「緑川くんに、風丸くんと仲良くしたらって提案もしてみたんだ」

「…え、」

何だそれ、それってもしかして。


「僕、ただ使われるだけっていうのは嫌だからね」


…全部、お見通しだったってことじゃないか!


「でもヒロトくん、一つだけ良いこと教えてあげる。緑川くん、すごくヒロトくんのこと好きみたい」

「え?」

「だって、この作戦の話をしたら、あんまりベタベタしちゃ嫌だよって言われたんだ」

可愛いよね、って吹雪くんは楽しそうに笑った。



吹雪士郎というやつは、どうも一枚上手だ。
緑川だって、まさかバラされるとは思っていなかっただろう。
それを聞いて、オレが今すぐ緑川の元に行って、思いっきり抱き締めてやろうかと考えていることも、まさか考えつかないだろう。

「吹雪くん、君は結局オレの味方なの?」

「違うなあ。しいて言うなら、正義の味方だよ」

そうして微笑む彼に、オレはひとまず感謝することに決めたのだった。






正義の味方は微笑んだ



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Helloのさやさまに相互記念で捧げます!

本当に意味の分からない話だよね…
ごめんなさい><
しかも緑川と豪炎寺空気だしね!!
どうしようもないね!!
こんな話ですが
愛だけは詰めました^^

相互ありがとうございました!(^O^)




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