放課後、一緒に部活に行こうと風丸のクラスに顔を出すと、そこに見慣れたポニーテールの姿はなかった。
もう先に行ってしまったのだろうか、珍しいこともあるものだ。
いつもなら、お前用意するの早すぎだろ、と逆に苦笑されるくらいなのに。
「あ、半田!マックス!風丸もう部室に行ったのか?」
しょうがないのでオレも部活に行こうと踵を返すと、風丸と同じクラスの半田たちが丁度廊下を歩いていたので声を掛けた。
「あー、風丸ならさっき…」
「女子と二人で裏庭に行ったよ。結構可愛い子だったなー」
「え?」
何故かニヤニヤして言うマックスに、半田がおい、と肘で肩を突く。
それを押し返すように、マックスは半田より一歩前に出た。
「やっぱり円堂としては焦る?幼なじみに先に彼女が出来たら」
「え、彼女って…?」
全く話が読めなくて首を捻ると、マックスはますます機嫌良さそうに笑った。
「決まってるでしょ。放課後に男女二人で裏庭に行くなんて、告白ぐらいしかないじゃん」
………告白、だって?
知らない女子が、風丸に?
「もしかしたら風丸、OKしちゃうかもなー。どうする…、って円堂?」
マックスの言葉を最後まで聞き終わらない内に、オレの足は勝手に裏庭に向かって走り出していた。
「…おいマックス、何であんな嘘言ったんだよ」
「別にー?嘘ではないでしょ、ちょっと主観入ったけど」
「…お前絶対楽しんでるだろ」
だから、マックスたちがオレが立ち去った後そんな会話をしていたのも、オレは知るよしもなかった。
緑の芝生を蹴って、たどり着いた裏庭に揺れる水色の影を見つけた。
「風丸!」
思わず大声で名前を呼ぶと、風丸は振り返って少し驚いた顔をした。
「円堂?どうしたんだよ、そんなに慌てて」
そうしてオレの元まで寄ってきた風丸は、何故か手に大きなゴミ袋を下げていた。
「…あれ?女子は…」
周りを見回しても、普段人気のない裏庭にはオレたち以外誰も見当たらなかった。
「女子?」
風丸がキョトンとした顔をする。
「マックスが、風丸が女子と裏庭に行ったって…」
何故かしどろもどろになってしまいながらもそう告げると、風丸はああ、と納得したような顔をした。
「オレ今日日直だから、当番の子と二人でゴミ捨てに来たんだ。でもゴミ袋一個だけだし、その子はもう先に戻ったぞ」
それがどうかしたのか?と風丸はオレの顔を覗き込む。
その顔を見て、オレは途端にホッとしてしまった。
……何だ、そういうことだったのか…。
「よかった…。風丸に彼女が出来たらと思ったら…オレ…」
急に肩の力が抜けた気がして、大きく息を吐く。
風丸は一瞬、は?というような顔をした。
「えーと…マックスに、風丸が告白されるって聞いて、なんか焦って…」
そう言うと、風丸はすぐに苦笑いした。
「お前、マックスにからかわれたんじゃないか?」
「……そうかも」
がさがさ音をたてるゴミ袋を持って、裏庭のひっそりとしたゴミ置き場まで二人で一緒に歩く。
「なあ風丸」
「何だ?」
オレにはひとつ、胸の中に引っ掛かったものがあった。
風丸が告白されているんじゃないかと聞いて、反射的に裏庭まで駆け出したのは何故なのだろう。
幼なじみに彼女が出来るのが寂しいとか、ましてや悔しいなんて感情ではなかった。
それなら、この気持ちは一体。
ふと隣を歩く風丸の表情を見ると、何故か少し機嫌が良さそうだった。
「何か機嫌良いな」
「…ああ。円堂が来たからかもな」
「え?」
どういうことだ?と思ったけど、オレはやけにその言葉が嬉しいと思っていることに気付く。
さっきから胸の中にくすぶっているこの気持ちを、オレはなんとなく理解し始めているのかもしれなかった。
「風丸、今度ゴミ捨てに行く時はオレを誘ってくれよ!」
「はぁ?何でだよ」
風丸が右手に持っているゴミ袋を引ったくって、オレは笑った。
「いいから、約束な!」
今はとりあえずそんな約束をして、この気持ちをお互い伝えるのは、もう少し先の話なのである。
ありのままの気持ちを誓え!
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風水桜のミクルさまに相互記念で捧げます!^^
私の趣味全開な上に
意味の分からない話ですみません><
相互ありがとうございました!(^O^)
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