目を開けると、視界いっぱいに円堂の顔があった。
オレは昨日円堂の家に泊まりにきて、一緒のベッドで眠りについたのだ。
朝起きて一番に目に入るのが、好きな人だとは嬉しい。
今日は部活もないし、このまま少しゆっくりしていよう、と寝息をたてる円堂をぼんやり見つめる。
すると、その唇がわずかに動いた。
そのままじっと見ていると、円堂は薄く唇を開いて、そしてちょっとだけ笑った。
…どんな夢を見てるんだろう。
あまりにも幸せそうに笑うものだから、少し気になった。
その夢にオレは出ているだろうか。
そんな女々しいことを考えながら、隣で眠る円堂の左手を触った。
円堂は体温が高いので、少し手のひらに汗を掻いている。
それを感じながら、そのまま円堂の手に自分の指を絡めて手を繋いだ。
しばらくそうしていると、段々手のひらがじっとりしてくる。
だけど、手を離したいとは思わなかった。
むしろ、オレの手も暖かくなっていくのが、円堂に体温をもらっているみたいで嬉しい。
こうして繋いでいる手のひらから、オレの気持ち全部が伝わればいいのに。
最近、身体を繋げた日の朝は、どうしてもこんな気持ちになってしまう。
幸せな気持ちと、ほんの少しの切なさ。
この切なさはいったいどこから来るのか、それは自分でもよくわからなかった。
今までオレたちの間には本当にいろんな出来事があったけど、いつだって円堂は変わらないヤツだった。
オレの強いところも弱いところも、全部受け止めてくれる。
だけど、肝心なところは鈍感で、子供っぽかったりする。
そんな円堂だから、オレは少し切なくなるし、幸せな気持ちになるのかもしれない。
未だに寝息をたてる円堂が愛しくて、オレは思わずその手に唇を押し当てた。
「…風丸?」
その感覚に気付いたのか、円堂はぼんやりと目を開けた。
「おはよう、円堂」
オレは笑って、朝一番の挨拶をする。
まだ起きたばかりの円堂は、ごしごし目を擦っていて、それが子供みたいで何だか可愛い。
「お前、寝ながら笑ってたぞ。何の夢見てたんだ?」
円堂のことだから、きっとサッカーとかなんだろうけど。
手は繋いだままちゃかすようにそう聞くと、円堂は何度か瞬きして、何やら思い出している様子だった。
「あんまり内容覚えてないけど…、風丸が隣にいたのは覚えてる。すげー幸せな夢だったよ」
へへっ、と笑う円堂が眩しく見えるのは、射し込む朝日のせいだけじゃない。
オレは恥ずかしいけど嬉しかったから、繋いだ手にぎゅっと力を込めた。
それに気付いた円堂はじっとこちらを見つめて、オレの顔の横にかかる髪に触れた。
そのまま髪を何回か撫でるのが心地よくて、オレは思わず目を瞑った。
すると、瞼にキスが落とされる。
でもそれだけじゃ足りなく感じて、もっと、と唇の動きだけで伝えると、円堂はすぐにオレの唇を塞いだ。
円堂は唇まで暖かい。
わずかに唇を開くと、そこから入り込んでくる円堂の舌の熱さに、オレはくらくらした。
「んんっ…」
寝起きなのによく動き回る舌に翻弄されてしまう。
苦しくなって胸を叩くと、円堂はようやく唇を離した。
「…風丸、すっげー熱い」
オレの頬を撫でながらそう言う円堂に、オレは苦笑してしまった。
「…お前もだよ、」
嬉しくなるのも切なくなるのも、熱くなる唇も、全部お前だからだよ。
そんな気持ちが伝わるように、オレはまた円堂の手を握った。
ぎゅっ、と握った手が伝えた"すき"
title:LOVE BIRD
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大好きな歌手の
シアワセという曲から
最初の方のくだりをいただきました
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