※ヒロトがアイドルという色々ふざけたパラレルです
完全に俺得
ヒロトの性格がちょっと悪いのでどんなヒロトでも許せる方はどうぞ














おいしいドーナツ屋が駅ビルの中に入ったと聞いて、甘い物が意外と好きな晴矢と風介と一緒に、学校帰りに寄り道をすることにした。

お目当てのドーナツをいくつも注文し、おひさま園の皆にもいくつかお土産として包んでもらった。
お腹も満足したし、ついでだからいろいろ見て回ろうということになり、オレたちは今ビルの中をブラブラしている。


本屋の前を通り掛かると、女の子が数人固まって雑誌を立ち読みしていた。
オレたちと同じ年くらいのその子たちは、普通に喋っているつもりだろうが、とても声が大きい。

「ねぇねぇ、この人かっこよくない?」

「あー、イナズマジャパンでしょ」

「知ってるー、最近すごい人気だよね!」

雑誌を覗き混んで楽しそうに話す女の子たち。

イナズマジャパンは、最近デビューしたアイドルグループだ。
メンバーはとても個性的な面子が揃っていて、それがウケたのか今男女問わず絶大な人気がある。

オレたちは何となくその女の子たちの話に聞き耳を立ててしまう。

「誰が好き?」

「そりゃもう吹雪くん!かわいいもん」

「えぇー、あたしはキャプテン派」

「あたしはダンゼン基山くん!」

その言葉にオレはどきりとした。
基山くん。
基山、ヒロト。


「…なんか変な感じだな、」

晴矢がぽつりと呟く。

そうなのだ。
基山ヒロトはイナズマジャパンのメンバーの一人であるが、オレたちと同じおひさま園で一緒に暮らす仲間なのだ。

「こんな風になるとは思わなかったがな」

うんうん頷きながら風介も言う。

そもそもヒロトがアイドルなんかになった発端は、マキたちが面白半分でヒロトの履歴書を送ったことだった。
それが激戦を極める審査を通って、晴れて今アイドルとして活動を行っているわけである。
(晴れてと言っても、ヒロトが自発的にやったわけではないけど)

しかし、もともとヒロトは勉強も運動も出来るし、女子にもモテていた。
それを自分でも分かっていて、上手く利用しているようなところがあったから、(例えば、クラスの係決めなんかでは女子を味方につけてラクな係をやったり)、アイドルはヒロトにとって天職かもしれない。

…それにしても、小さい時からずっと一緒にいるヒロトが雑誌やテレビに出ているのは、何とも不思議な気持ちだ。
こうして、知らない女の子たちに騒がれていることも。




おひさま園に帰りつくと、食堂から夕飯のとても良い匂いがしてきた。

もう夕飯の時間なのか。ずいぶん長く寄り道しちゃったな。

「遅かったね」

食堂のドアを開けると、ヒロトがニコニコしながら立っていた。

「…ヒロト、帰ってたんだ」

ヒロトは最近仕事が忙しいらしく、帰りが遅いことなんかザラだ。だからこんな時間に帰ってきているのは珍しい。

「うん、今日は仕事が早く終わったんだ。…それ何?」

そう言ってヒロトはオレの右手に持ってる箱を指差す。

「ああ、今日の帰りにドーナツ屋に寄ったんだ!これはみんなにお土産」

オレは箱をちょっと開けて、中身をヒロトに見せた。

「おいしそうだね」

「うん、どれもすごくおいしかったんだよ、オレのおすすめはこのイチゴのヤツ!晴矢と風介なんてこっちのチョコのヤツで取り合いになってたし…」

オレが熱くドーナツの説明を始めると、ヒロトが待ったとストップをかけた。

「取り合いになってたって…、晴矢と風介も一緒に行ったの?」

「え?うん」

そう言うと、ヒロトは黙って俯いてしまった。

「…ヒロト?」

おそるおそる様子を伺うと、ヒロトはぱっと顔を上げて言った。

「…オレもそのお店行ってみたいな。今度はオレと二人で行こうよ」

「あ、え、そうだね」

ヒロトのその笑顔に、ちょっと安心した。
ヒロト、忙しいだろうから誘わなかったんだけど。
仲間はずれにされたみたいで寂しく思ったのかな。

「ねえ、じゃあこのドーナツ、今食べてもいいかな?」

「え、夕飯前なのに大丈夫なの?」

「平気だよ。緑川がせっかく買ってきてくれたんだから今食べたい」

そう言ってヒロトは、オレのオススメのイチゴクリームのドーナツを選んだ。

「うん。おいしい」

そうやって笑うヒロトは、ただドーナツを食べているだけなのに絵になった。なんかCMできそう。
…ダテにアイドルをやっているだけあるなぁ。
自分がモテるのを自覚してる辺りは、ちょっと問題あるかもしれないけど。

そこでオレは、さっきの女の子たちを思い出した。

「…今日さ、ヒロトのファンだっていう女の子を見かけたんだ」

本屋でね、と言うと、ヒロトはこちらを向いた。

「結構可愛い子だったし…。ヒロトすごいね、ホントにアイドルって感じ」

自分で言い始めたことなのに、なんだかちょっと寂しくなってきてしまった。

一人でしんみりした気分でいると、ヒロトはオレの肩に手を置いた。
それにちょっとドキッとしてしまう。

そして、オレの目をじっと見つめて、女の子たちが見たら騒ぎそうな笑顔でこう言ったのだ。

「雑誌やテレビで見たくらいで好きって言われても、嬉しくないよ」

……前言撤回。
ヒロトはかなり性格に問題がある。
オレがちょっぴり軽蔑の眼差しでヒロトを見ると、ヒロトは苦笑いして肩から手を離した。

「…って今のはちょっぴり言い過ぎたかな。応援してくれてるのは素直に嬉しいよ。要するにオレはさ、自分が好きな人に好きって言ってもらえないと意味がないって言いたいんだ」

オレは思わず言葉を失った。

好きな人、だって…?

初めて聞いたその話に、オレは何故か胸が苦しくなった。

ヒロトは相変わらずオレの目をじっと見つめている。

「…ヒロト、好きな子いるんだ」

そう呟くと、ヒロトはえっと驚いたような顔をした。

「……気付いてないんだ」

見るからに落ち込んだ様子のヒロト。

「え?どういうこと?」

その言葉の意味が分からずに聞くと、ヒロトは何でもないと首を振った。

「とりあえず夕飯食べようよ」

冷めちゃうしさ、とオレの手からドーナツの箱を取り、戸棚にしまった。

「あとでもうひとつ食べたいな」

そんなことを言ってヒロトは笑う。

何だかんだ、ヒロトは気が回るのだ。
こんなのは、雑誌やテレビを見ているだけじゃ分からない。
…性格には難があるかもしれないけど。
それを知っているのはオレだけの特権なのだから、まあ良しとしよう。



(そしてそれがこんなにも嬉しい理由に気付くのは、もう少し先の話)










憂鬱はみどりいろ



title:LOVE BIRD


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イナズマジャパンは最初INZM11(A●B48的な)にしようと思ったけど
さすがにないわwwと思ってやめました

あとこの話
アイドル設定を全然生かせてなくて悔しいので
いつか続きを書きたいです







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