さんこめ





この日は珍しくも兄は書斎ではなく、妹と屋敷の外にいた。花を摘んでいる妹の傍ら、彼は木陰で本を開き静かな時間を過ごしていた。

そこで、丘に続く道から犬を連れた老婆が歩いてくるのを見る。上品な身形をした老婆はふたりを見て優しげに笑った。

「こんにちは。今日はいい天気ねぇ」

ダンテは花を摘む手を止め、元気よく挨拶をし返す。バージルも一歩遅れて挨拶した。可愛らしい小型犬がダンテの元にすり寄り、ダンテは嬉しそうに頭を撫でた。

「こんなきれいな花畑があったなんて知らなかったわ」
「おばあさまはおさんぽ?」
「ふふ、そうよ。あなたたち仲が良いのねぇ、兄妹なのかしら?」

ダンテはバージルの腕を引き、こくりと頷いた。

「わたしたちふたごだもの、ね!」

バージルは恥ずかしさにそっぽを向く。老婆は二人を交互に見た後に、こう言った。

「まあ、双子だったの。あなたたちは、しんじゅの生まれ変わりね」

しんじゅ。真珠。
白く煌めく宝石の名に、ダンテは目が点になる。老婆に褒められたのだと気付いた途端、ひどく嬉しくなった。


* * *



「ママ、ママ!聞いて」

帰宅直後、ダンテは必死にエヴァにすがりついた。

「なぁに」
「さっき外で会ったおばあさんにね、ほめられたの、バージルとわたしは、真珠のうまれかわりっていってくれたの」

エヴァは一時目を丸くしたが、すぐに微笑んで「そうなの、素敵ね」と言った。



しかしダンテの姿が見えなくなってから、エヴァの顔は悲痛の色に染まった。

「ごめんね」

エヴァは誰にも聞こえない声でそう呟いた。








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補足)真珠ではなく心中
昔は男女の双子は前世で心中してしまった男女の生まれ変わりとされていた

実話コピペが元ネタ


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