01





魔剣士スパーダが姿を消したのは何時の頃だったか。取り残された四人の娘達は、悪魔の脅威から逃れながらもひっそりと生き続けていた。

しかしそれも今日で終わりだった。住処を探り当てた悪魔達が奇襲をかけ、ついに娘達は離散してしまった。

「…っ、…」
「ふっ、うぅ…っ」

深緑の森林の中を四女が、長女に手を引かれながら走り続ける。長女は冷静を欠く事無くただ只管に追っ手から逃れる術を考えていた。四女は幼い顔を悲しみに歪めながら、すすり泣く事しか出来なかった。


敵の気配はどんどん増加する一方で、長女は足を止めた。

「…にさま…?」
「二人でいると危ない。私が囮になるから、お前はお行き」

四女は激しく首を振り、長女の腕にしがみ付く。

「でもっ、にさまはどうするんだよ!」
「…私は、大丈夫だから」

長女は片手に提げていた棒状の何かを構え、布を解いた。現れたのは、父が残した剣・リベリオン。人間に扱う事は不可能といえる程の重量を誇る剣だが、悪魔の血を半分受け継いでいる娘達にとっては問題無く扱える代物だった。


娘達の気配を嗅ぎ取った悪魔達が大量に姿を見せ始める。

「ひ……!」
「走れ、早く行けッ!!」

長女の叫びに呼応する様に、四女は地を蹴った。




何故、どうしてこんな事に――。

娘達は父親を憎んではいなかった。ただ、いつか人と同じ様に生きられる事を夢見ていた。だが愛してくれた父と母はもう居ない。


魔界では上級とされる悪魔が、翼を広げ四女を見下ろしていた。最果ての断崖から足を滑らせ、宙を舞う彼女の姿を。


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