アイチが女の子
櫂アイの子供がエミとカムイ



わたしのお母さんはとっても綺麗で可愛くて、それでいていろんな所が抜けてたりする。お父さんは、いっつもお仕事を頑張っていて、目つきは悪いけどお母さんが大好きでとても仲がいい。わたしには一個上のお兄ちゃんがいて、とても頼りになるけど前ばっかりみてるから、周りを見ないちょっぴりそこが、お母さんに似てたりする。あとはよく、お父さんと喧嘩してて、カードゲームばっかりしてるの。
わたしはよくみんなに、『お母さんにそっくりだね』って言われる。自分ではわからないけど、それを聞くたびにわたしはお母さんの子供なんだ、って安心しちゃうの。

お母さんの名前はアイチ、って言って、お父さんはトシキって言うの。ちなみに兄はカムイ、って言ってわたしはお母さんの真似してカムイくん、って呼んでるの。でも、お母さんはわたしのことだけは『エミ』ってそれだけで呼んでるから、なんだかつまんない。
それと、カムイくんは何かのテレビに影響されたのかわからないけど、"レディーには優しくする!"って決めたみたいで、お母さんとわたしには丁寧な言葉を使うの。相変わらず、お父さんにはちょっぴり口が悪かったりするけど…。
そんなお母さんとお父さんでも、わたしがいなきゃダメなの。だって、わたしが起こさなきゃ全然起きないんだもん!


「おかーさん、おとーさん、いつまで寝てるのー!きょうはお出かけって言ってたでしょお!」


お父さんとお母さんのお部屋は一緒で、いつも二人でおっきなベッドで寝てるの。本当は、勝手に入ったらダメなんだけど朝はしょうがないと思わない?
おっきめなスリッパは、ぱふぱふとフローリングと足の裏を行き来して、引きずってしまう。布団を被って、お母さんの青色の頭の上に生えた髪の毛がぴょこんと出ている。
きょうはお出かけだから、おめかししたのに中々起きないお寝坊さんなお母さんとお父さんにちょっぴりムッとしちゃう。カムイくんも中々起きないし…!


「おかーさん、おーきてー!いつまで寝てるのー!」
「ひゃっ!」


ばさっ、と被ってたお布団を引っ張ろうとしたら、それに気付いたお母さんはぱちっと目を開けてがっちりとお布団を掴んで起き上がる。


「エ、エミ!」
「なんでいっつも、わたしが起こすまで起きないのー!…って、なんでお母さん服着てないの?風邪引いちゃうよ?」
「!!」


そうわたしが言えば、お母さんは顔を真っ赤にしてお父さんを起こすから、よくわかんなくて首を傾げてみた。お母さんだけが服着てないのかと思ったら、お父さんまで服着てなかったから、ますますわからないわ。
そしたらお母さんはお父さんに何か言ってて、お父さんはなんだか今だに眠たそうにお母さんの話を聞いている。


「…エミ、お前は妹と弟のどちらかは欲しいか?」
「妹と弟…?」
「か、櫂くん、エミに何聞いてるのっ!?」
「お前も櫂だろうが」
「それはそうなんだけど…。じゃ、じゃなくて!」
「もぉ、別にどっちでもいいよぉ!それよりも早く準備してよね!お出かけするんでしょお!」


今のわたしには、妹だとか弟だとかは頭になくて。
だってお休みの日に早く出なきゃ、高速道路が混んじゃうって三和さんから聞いたもの。ずっと車の中にいたら飽きちゃうわ。
そんなわたしに気づいてくれたのかわかんないけど、お母さんはごめんね、って謝ってぽふりと頭を撫でてくれた。別に怒ってるわけじゃないのに……。
着替えるからカムイくんを起こしてきて?ってお母さんが言うからわたしは部屋を出る。
優しくて綺麗で可愛いお母さんを、お父さんは毎朝独り占めするからずるい!わたしもお母さんと一緒に寝たいのに、そう言いたいけど小学一年生になったわたしには、なんだか恥ずかしくて言えないの。


「ふぇえ、エミにおかしく思われちゃったよね?」
「別にいいだろう、減るもんじゃないんだ」
「そうやってトシキくんは〜〜!!」
「ああ、そうだ。鍵でもつけるか」
「そ、そっちの方が不思議に思われちゃうよぉ〜!」
「そう怒るな、」
「んっ…、と、トシキくん、だめだよ、エミにまた怒られちゃう…」
「カムイを起こしにいってる、大丈…」
「大丈夫じゃないのー!!朝からいちゃいちゃしないでって言ってるでしょお!お父さんのバカバカ!!」


油断しなくて良かったぁ!
ばん!と勢いよくドアを開ける。盗み聞きするように寝室の扉に耳を澄ませてみてて良かった。
わたしが目を離せばいっつもこうなんだもん!お母さんはお父さんに甘いから、そうやって……。お父さんもお父さんでお母さんに変なことばっかりするし…!
そんなわたしの大きな声で起きたカムイくんは、わたしが涙目になってるのを見てお父さんをきっと睨むと飛び蹴りをする。
思わず、わたしはカムイくんを応援しちゃった。


「おい、こら櫂としきてめー!!俺がHP回復をしてるときにかーさんと、エミを泣かせやがったな!」
「っち、朝から騒がしいやつだなお前は」
「てめー、したうちしだろ!けっとーだ!けっとー!今日こそは勝ってやる!」
「いいだろう、受けてたとう」
「ふふ、楽しそうだね」


……なんて、カムイくんを応援したわたしがバカだったのかも。
カムイくんはお父さんに似て、勝負バカだから何をするにも今ドハマリなカードゲームで勝負ばっかり。
お気に入りのピンクのお花のワンピースの裾をぎゅっと握れば、いつの間にか着替えたお母さんがわたしの頬に触れて、にこりと微笑んでくれた。


「遅くなっちゃったね、お腹空いてるてましょ?今ご飯作るからね」
「で、でも…」
「大丈夫だよ、今日は多分高速道路使わないから」
「…うん……。…じゃ、じゃあ、わたしも手伝う!アイチ一人じゃ心配なんだもん!」
「またエミってば、トシキくんの真似してー!」
「減るもんじゃないんだからいいでしょおー」
「またぁ〜!!」


****


「アイチ、もう出るぞ」
「ま、待って〜!えっと、火は止めたし、ストーブは止めたし、お財布持ったし……」
「何回確かめてるんだ、早く出ないとまた、チビ共がふてくされるぞ」
「あぅ〜…」


お母さんはすごく心配性だから、いつも同じことを何回も何回も確かめる。だからお父さんもちょっぴり呆れちゃったりして、最後に!ってやっと確かめて車に乗るの。
今日はどこに行くの?って聞いたら、お買い物と水族館どっちがいい?って聞かれたからわたしは迷わず水族館!って答えた。だから今日は水族館な行くみたい。わたしがシロクマさんと、イルカさんを見たい、って言うよりもお母さんの方が見たそうだったから水族館って答えておいたの。

多分、わたしよりもお母さんの方がはしゃぐと思ったし…何よりお母さんが行きたそうだったから……。
それにお父さんは久しぶりにお仕事がお休みだっから、わたしはみんなでお出かけできるんなら何処にでも良かったの。


「って、なんでおれさまがお前のとなりなんだよー!おれも後ろに行きたかった!」
「俺も隣ならアイチが良かったが、ふてくされたエミの機嫌を直すためだ。仕方ないだろう」
「元はと言えば、お前がげーいんだろー!じゅーしんあずーるどらごんで、今度こそやっつけてやる!」
「その減らず口、ドラゴニックオーバーロードでまた焼き尽くしてやる」
「むっかー!!」


後部座席にはアイチとエミが座り、運転席には櫂、助手席にはカムイが座っている。時折櫂はちらりとミラーで後部座席を見ていた。
どうやらエミの機嫌は直っているようで、何やらアイチと楽しそうに話をしている。カムイが独り言のようにデッキを眺めてるためか、あまり聞き取れないが学校の話しだろう。新しい友達が小学校で出来ただとか、給食のデザートが美味しいのがあっただとか、そんな話。


「トシキくん、みんなで水族館っていつ以来かな?」
「さぁな。四年振りくらいじゃないか」
「おれたちを三和に預けて、二人で行ったときだろー」
「えっ」
「むぅ、おかーさんってば忘れちゃったの?忘れん坊さんねー」
「そういえば、そうだったな」
「あ、あれれれ?じゃ、じゃあ皆で行くのは初めてなのかな…?」
「そーゆーこと」


そう、あのときはカムイくんとわたしを三和さんのとこに預けて二人で行って来ちゃったの。結婚記念日だとか言ってた覚えがあるけど、正直わたしは泣いた。だって、まだお母さんと一緒に居たかったし、いつもお父さんがお母さんを盗っちゃってる気がして悔しくて堪らなかったから。
お母さんはお土産に、っておっきなシロクマのぬいぐるみをくれたけど当たり前に、それくらいじゃあわたしの機嫌なんて直るはずもなくて。カムイくんだって、わたしと同じだったと思う。でもカムイくんは強いし、わたしよりお兄さんだから泣いてはなかったけど…。


「あ、ほらもう着くよ」


イルカの絵が描かれた看板を見るなりお母さんは嬉しそうにわたしに言ってくる。思わずわたしも気分が上がっちゃって、歓喜の声を漏らすとお母さんは嬉しそうに笑ってくれた。





続き




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