「僕が……主催者…?」
「ああ、そうだ」

静かに、櫂は言った。
だが信じられないとばかりにカムイは驚愕し頭を横に振る。

「ッ、おい櫂!!てめぇ何言ってんだよ!お兄さんが主催者!?な訳ねぇだろ!!」
「そうだぜ、櫂。お前の冗談はキツすぎるっつうの」

三和も同時にため息を吐きながら櫂を見て呆れるように言った。だが櫂はそれ以上何も言おうとはせずにアイチを見る。

「……レン、お前は薄々気付いていたんじゃないか?」
「………そう、ですねぇ…。いえ、アイチくんが主催者と言うことではなく――僕達が"孫"なんかではないという事ですがね」
「ど、どうゆう意味だ、よ…?」

眉を潜め珍しく難しい顔をするレンにカムイはわからない、とばかりに聞き返す。

「"実際には祖父などいない。自分達は70年前の自分達である。70年前にいた悲劇の中心人物である。それはまるで、死んだはずの自分達は何らかで生き返されたような存在―――輪廻転生と考えてみるのが1番当て嵌まる…かもしれません"」
「輪廻…転生……?」

輪廻転生、それは簡単に言えば前世の記憶を持ったまま生まれ代わること。
記憶を持たないまま、生まれ変わることもあるが―――つまりレンは自分達は輪廻転生をした者であると言うこと。

「現に…僕は思い出しましたがね。70年前を。薄々ですが勘づいてはいました。何より櫂は遅かったですがね」
「まぁ…な。反省はしている。だがアイチ。お前は…お前だけは最初から知っていたんじゃないか?この、俺らと出会う前から」
「お兄さ、ん…?」
「アイチ…?」

三和もカムイを息を呑んでアイチを見る。アイチは今だ目を開いたまま、俯き震える手で頭を抑えた。

「そんな…ぼ、く……僕……!!








いつ気付いたの?」

そう一言、アイチは嘲笑うように、吐き捨てるように言った。壁にもたれくるりと髪の毛を弄る。表情には、内気だが一生懸命さをもち頬を染めて笑うアイチのカケラなどなかった。

「そうだよ。僕がこのゲームを作った。だけど用意したのはスイコさん、お手伝いをしてくれたのは愛する僕の傍観者。僕が主催者だよ」
「お、お兄さん!?」
「ごめんねカムイくん、でも思い出したら辛いだけだろうから思い出さない方がいいよ。
じゃあ――…此処からはスイコさんに変わって僕は主催者らしく櫂くんに質問をするよ」

にこりとアイチは笑っていう。思わず身構えてしまう気迫で。信じられない、とばかりにカムイは腰が抜けたのかへにゃりと床に倒れてしまった。
此処からは、三和、カムイ、レンが傍観者となりアイチと櫂の二人だけの戦いになる。

「Episode1について……全て、僕がよくわかるように説明して」
「ああ、言われなくても。
まず一つ目。お前の部屋にあったはずの日記帳が失くなった、これはEpisode1で説明した通りに誰かがお前の後をついていった。それは先導エミだ」
「エミさん…?!」

カムイが驚愕する中、櫂は静かに頷いた。

「先導エミはお前のことを極度に心配したがる。ついでに言えば嫉妬深い。まだ慣れない環境でありながら、俺とアイチが仲良くなることが気に入らなかった。そして俺とアイチが、一緒にアイチの部屋に行き、あろうことかアイチの部屋で何かしら話、中々出て来ないとなると怪しむだろう。
だからこそ、不安と興味が湧いた。鍵は確かに閉じた。しかしそれは先導エミが入ったあとだ。そうして驚愕しただろう。興味本位で読んだ日記帳には、あろうことか日記帳の著者……先導アイチの名前が載っていたのだから。
そこで先導エミの記憶は呼び戻され、70年前を思い出す」

だから、あの時……エミはふらついた足取りで廊下を歩いていた。信じることが出来ず、まだ頭の中ではぐちゃぐちゃになっていたのだ。記憶と現在の狭間に囚われたかのように。

「だからこそ、先導エミは日記帳を隠した。隠した場所はもちろん図書館だ。あそこなら無数に本がある、わからないだろう。無かったことにしようとした結果なのだろうな、あまりにも焦っていたんだ。そうしてふらつく足取りでお前に会った。
次に葛木だ」

ちらりと横目でカムイを見た。はっきりとは思い出していないカムイに何も言わず口を動かす。

「単刀直入に言えば、三和も戸倉もお前が殺したんだろう。
館のことを良く知っているお前なら造作もない。悪魔の伝説を使い、まるでいると見せ掛けた殺し方を葛木にした。廊下には窓はなく、だいたいは暗い。シャンデリアがついてなければ尚更だろうな。暗闇だからこそ、狙い易い。
戸倉ならば元からシャンデリアをひく糸を緩めていたんだろうな。あえて三和の前で殺すことにより、三和を混乱させる。それによりまた一層殺し易くなった」

ふぅ、とばかりに一息段落を櫂はつく。噛まずに弁舌に話すのに疲れたのだろうか一旦休憩をとるかのように近くにあったソファにもたれた。

「そして、レンだ。
葛木を殺してしまうことになったんだ。アイチ、お前がやることを妹……先導エミはやってくれた。ただあれは事故だったんだろう。
戸倉は死に、葛木もあんな状況になった時にもはや逃げてる場合ではないと感じたんだ。――…それが裏目に出てしまった。
先導エミは、改ざんをしてしまった。アイチ、お前ではない、違う人物なのだと記憶を改ざんしてしまったのだ。自分は殺さなければいけない、まるで狂気にとり憑かれたかのように勢いあまり……葛木を殺してしまった。それに驚愕してしまい、レンにまで被害を及ぼした」

その時のエミは気が正気ではなかっただろう。ありえない事実にほぼ自暴自棄だったに違いない。だが、これは止めなければならない、とばかりにエミは走った。走った先は医務室。手にはこの館の護身用として掲げられている武器、スティレット。
そしてあろうことか、エミは唸り苦しむカムイに『幸せにしてあげる』そう"悪魔の呪文"を称えてしまった。それは全て悪夢の逸話に書かれたEpisode1と全く同じシナリオだったのだ。

「そうして、結果的にレンは死んだ。次に先導エミは進路を変えた。大広間に迎い、真実を兄であるアイチに聞きに行こうとした。そこでようやく気付いた。自分が犯してしまった戮に。そしてこれ以上広がらないためにアイチを止めようと。
だから―――あの時、三和を呼び止めた。暗闇の中、先導エミは三和だけでもと腕を引いた。間抜けなことに三和は素っ頓狂な叫び声をあげてたがな」
「うっせぇ」

仕方なかったんだ、怖かったんだから、そう三和は自分に対しぶつぶつと言う。アイチは可笑しくてくすりと笑ってしまった。

「Episode1、結果的に纏めればお前は最後、俺を殺した。そして三和、先導エミまでも。どうやったかと言えば、」
「三和くんとエミが図書館へと続く螺旋階段を登っている間に櫂くんは"気付いて"僕から離れてわざと悪魔が来た、と脅した。最もいるはずがないのは僕が一番わかっている。けどあえて櫂くんは演技を続けた。
そして僕は櫂くんを殺し、図書館にやってきた三和くんとエミを殺した。
櫂くんは後ろからスペツグナイフで刺して、階段から転がした。身体の軽いエミを螺旋階段の上から突き飛ばして死亡させた。螺旋階段の手すりには多くの飾りとしての棘がある。曲がりくねった螺旋階段の手すりにエミは喉を直撃。
三和くんはちょっと手こずっちゃったかな。だって心臓を刺すはずが、三和くんがバタバタするから間違えて首はねちゃったんだもん!」

笑っていえるような事ではない、そんなはずなのにアイチは平然として言う。思わず三和は思い出すかのように首元を抑えた。ぞわり、と身震いをしてしまうほどで――――。
気に入らない、とばかりに櫂はアイチを見た。

「櫂くん、早く言ってよ。Episode2は?お手上げなんて言わないでよ?だってこれは、僕と櫂くんが創ったお話なんだから。わからないはずがないよね」

そう言って、次はアイチが睨む番だった。同じ境界線にいるはずの両者は全く掛け離れた場所にいるかのようで。それはかつての恋人とは思いも出来ない状態であった。

「なら、さっさと解いて次は俺がお前に聞こう。そして終わらせるんだ、この逸話を!」
「書くのは僕、だけど創るのは櫂くん、だったはずだよ。……なら、僕に教えてよ。僕がどうやった経緯でみんなを殺したのかを!

舞台は孤島。解かれるのは館。
ゲーム盤の上に立ち踊らされる駒をたった一人、駒に交じって残虐に殺す主催者がいた。
それは一体何のために創られた物語だったのか。誰のために創られた物語だったのか。
戮を背負いし幻になる傍観者は何と応える?全てはノーとしか言えないのだ。
最後に主は何と言って命を絶ち、幻に何と伝え……一体何の謎を残していったのか。

それこそが、知りたい最後の謎であり真実。この、悪夢の逸話の最終地点になるのだ。




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