気が付けば僕達はゲーム盤の上にいて、そして選ばれし者として駒として動いていた。だが結果的に敗者となり、悲惨な幕を下ろしたんだ。なんて身勝手に作られたゲームなのだろうと誰もが思った。
そんな中、新しいゲームが始まったのだ。
補足


Episode2:‐旧館‐針のない時計塔


「ばかアイムー!早く起きなさい!」
「っわひゃあ!?」

部屋のドアを叩かれ、飛び起きた。心臓がバクバクとしている。時計を見れば5時。さすがにまだ早い……今日は何かあったかな。

「おはようーエル…。ふわぁ〜あ…今日は早いねどうしたの?」
「はぁ?早くないわよ、もう7時よ。しっかりしてよね」
「えっ?」

朝食、と行って廊下を歩くエルの後ろをパタパタとついて行く。僕が見たとき時計は確かに5時だったんだけど…。もしかしたら僕の部屋の時計壊れてるのかな?あとでカリンさんに聞いてみよう。

「おっ、やっと来たな。はよーさん」
「三沢くんおはようございます」
「アイムくんおはようのチューは?」
「無いですよ…。おはようございますレントさん」

自分の頬に人差し指を突き刺して「いけずー」とふて腐れたレントはテーブルの上にあったナイフとフォークをそれぞれ両手に持ち机を叩いた。が、後ろからカリンがハリセンでレントの頭を叩き黙らせた。

「なぜにハンセン…」
「ハリセンだっつの」

カノンのボケに素早くツッコミを入れたのは三沢だ。ポジションがすでにツッコミ役状態である。ハリセン、つまりはハンセン病のことだろうかと何処かズレた考えをしたアイムは唸ってみた。

「あれ、そういえば架耶くんは?」
「そういえばいないね」
「ぷぷーあいつ寝坊かよだっせー!ったぁ!?」
「寝坊などしていない」

と、カノンの後ろからグーで殴ったのは架耶だ。いつの間に大広間に入っていたのだろうか。架耶の手には何冊かの本があった。見る限りでは図書館に行っていたのだろう。

「てめぇ何すんだ!!」
「黙れ、朝から騒ぐな煩い」
「ぐぁああ!!ムカツクー!!」
「カ、カノンくん落ち着いて」

椅子の上にのり騒ぎ出したカノンを苦笑いしながらエルは宥めた。架耶は掛けていたメガネを外しあくびをする。
その様子にアイムはぽっと頬を赤らめて見とれた。

「かっこいい…」
「何だ、アイムはメガネ萌えか?」
「か、架耶くんがメガネ外す所…すっごく格好良かった…」
「むっ。アイムくん、僕だって似合いますよメガネ!ほら、どうですか!」
「おいレント、」

レントはそんなアイムに頬を膨らませると幾つかの本の上に重なったメガネをとり、掛ける。意外にも様になっていてドヤ顔をするレント。

「わぁ、似合います!」
「でしょでしょう!かなりイケて「何だか真面目に見えますよ!」
「!?」
「あ〜確かに見えるな。真面目だな」
「いつでも僕は真面目ですよ!?」
「いつものアホ面よりマシだな」

架耶が上から目線で鼻で笑いながら言うとプツンとキレたレントは眼鏡を外して床に叩き落とした。

「おい、お前何する!?」
「うるさい!架耶のバーカ、カッコつけ厨二野郎!」
「弁護士に向かっていい度胸だな?」
「肩書きだけでしょうそれ」
「ほぼニートのお前に言われたくない」
「表に出ましょうか架耶」
「俺もそう思ってた所だ」

バチバチと火花を放つ二人にアイム以外は呆れて朝食を食べ始めた。アイムだけはハラハラしながら二人を見ていた。そして、ついに痺れを切らし般若の如くゆらりと二人の前に立つとカリンは思い切りハリセンを振り上げて―――。

「いいから早く食べろ!!」
「「げごふぅ!!?」」

スパーン!!!と叩いた。その時全員の意思は一つになった。“早く食べよう”と。

*****

「ごちそうさまでした、」

かちゃ、とスプーンを置き手を合わせた。今日の朝食はクリームブロッコリースープにこんがり焼かれたガーリックブレッドだった。栄養やバランスをよく考えて作られた料理は全てカリンの手作りでパンまで作るカリンに関心を抱く。

「今日もすっごく美味しかったです!」
「あ、当たり前でしょ!よし、ちゃんと全部食べたわね」
「はい!残すわけないじゃないですか」
「あ、うぅっ」

カリンはアイムの笑顔にぐらっときてしまい思わずよろけてしまった。顔から火が出そうという位に真っ赤になる。

「良かったねーぷぷっ」
「う、うるさい!お皿下げるの手伝って!」
「人使いあっら〜」

しぶしぶとレレナは言われた通りに各テーブルに置いてあるお皿をとりワゴンに乗せた。

「あっ、そういえばカリンさん、」
「何?どうしたの」
「僕の部屋の時計壊れてるみたいで…。なんか時間がズレてるんです」
「何だお前の部屋もか」
「え?もしかして架耶くんの部屋も?」

新聞を読んでいた架耶はこちらに顔を向けそう言った。と、それに続いてレントも不思議そうな顔をした。

「あれれ、君達もですか。僕もですよ」
「実際お前には時計などいらんだろうが」
「まぁそうですが、今日はたまたま見たので」

時刻がズレていたのはアイムと架耶とレントの三人だけだった。変なトライアングラーだ。

「じゃあもう古いのかもしれないわね」
「取り替える、って言っても……えぇーあそこに行くのー?」
「仕方ないじゃない、時計ならあそこに沢山保管してるんだから」

と、使用人三姉妹は何やら話している。よくわからないが時計はあるらしい。

「あの、時計って沢山あるんですか?」
「あぁ、そうよ。旧館に沢山保管してあるわ」
「旧館?」

そう誰もが不思議そうに感じただろう。“旧館”などこの館にあったことは知らなかった。一人を除いて。

「ええ。この館を造った初めの当主は時計好きでね。館のあちらこちらに時計を飾っては眺めていたわ。一際気に入ってたのが大きな鐘がついた時計だったわ。まるで時計塔で……だから皆は時計館じゃなく、時計塔と呼んでたわね。今はその当主いないけどね」

朝のおやつと出されたのがクッキーだった。ダージリンの香りがいい。レントはリスのように頬張ってもそもそと口を動かす。

「その館、かなり古くなったし当主はもう亡くなったから今は旧館として使われてないわ。だけど壊すにも時計が多すぎて壊しようもないし……何より針がないの」

溜め息交じりにステラは話しを続ける。レレナは隣にいたカリンに「今日は機嫌いいねステラ」と話すと「…何か企んでるわよ絶対」とヒソヒソと話す。

「針がない?」
「ええ。だからその時計塔は毎夜必ず12時を告げていた鐘の音が鳴らなくなったわ。それにもう古いもの、針が無くても鳴らないわねきっと」
「……」
「今その旧館には電気が通ってなくてね、とても真っ暗なのよ。もしかしたら旧館には昔亡くなった当主が出るかもしれなくて……」

ステラの話しにビクリと身体を揺らすとアイムは椅子をがたがたと架耶の方に動かした。その手のものがダメダメなアイムには怖いのだ。

「…それで」
「ふふっ、そんな真っ暗で幽霊が出るかもしれないのよ?そんな中女の子に行かせるつもり?」
「“女の子”っていう歳かよ」

カノンは飽きれながら馬鹿くさい、と言った。だがカリンとレレナは「馬鹿…」と呟いた。その瞬間、
ガッ!!!!

「っ!!!?」
「お・ん・な・の・こ」

それは一瞬で、新幹線の秒速よりも早いほどの一瞬でカノンの頭の上スレスレを通った風……いや、ナイフは縦に振動し壁に突き刺さっていた。

「す、ススミマセン、可愛らしい女の子です!!!」
「うふ、わかればいいのよ」

年齢不詳で歳を聞けば18よ、と即答が返ってくるステラは片手を頬につき、もう片方の手はナイフを投げた時の状態で止まっていた。

「何だこのデジャヴュ…」
「乙女心がわからない奴だねアンタ」
「カノンくん酷いよ!」
「エルさん!?ミユキさんまで!?」

助けを乞おうと三沢を見たが目を合わせようとはせず、むしろ逸らされてしまった。これには誰も何も言えない。

「わかった、旧館に行き時計をとってくればいいんだな」
「ええお願い」
「か、架耶くん行くの!?」
「ああ。……旧館のことをよく知りたいしな」
「それっておじいさんの手紙が関係してるの?」
「……ああ」

櫂がお祖父から託された手紙。そこにも旧館のことは書かれていた。まだ謎が謎のまま迷宮入りで誰にも解けない……

「じゃあ僕も行く!」
「アイム?いや、お前は危険だから残ってろ」
「架耶くんが一人で行く方が危険だよ!お願い…!」
「アイム……。わかった、ちゃんと俺の後ろにいるんだぞ」
「うん!」

二人は立ち上がった。そんな二人を見てエルは微妙な顔をし、三沢は面白そうに手を振る。

「架耶さんに迷惑かけちゃ駄目だからね!」
「わかってるよ〜。じゃあ行ってきッわぁ!?」

と、前を向いた瞬間背後からレントに抱き着かれた。抱き着かれた、と言うよりむしろ飛び乗ってきたと言う方が正しいのかもしれない。

「レ、レントさん!?」
「二人だけはズルイですよ!僕も仲間に入れて下さい!」
「お前って奴は…」
「あ、架耶はいらないです」
「ふざけるな!」
「ま、まぁまぁ、人数多い方がいいじゃないですか!仲良くしましょうよ!」

またしてもバチバチと火花を散らす二人を仲介し「「アイム(くん)がそう言うなら…」」と仕方なく了承し今度こそ旧館を目指して大広間から出て行った。

「あいつら本当に大丈夫か?」
「あんまり言い切れないけど…。まぁアイムがいるから大丈夫じゃない?」
「アイムがいるから心配なんだよ…」
「あぁ、そっか」

飲もうとした紅茶のカップを置き三沢とミユキは顔を見合わせた。だが行ってしまったのは仕方ない、そうゆう事にしようと思った二人だった。


旧館には死者が出る。そしてその死者は夜12時になると必ず鐘を鳴らすのだ。
時計塔には針がない。針が無ければ鐘はならない。足を踏み込めば最後、戻って来れるとは言い切れない。
だが。もし運よく戻って来れても死者は呪いをかけるだろう。必ずしも、誰かは死ぬ。いや違うな……
自分の目を疑うな。目の前を死と受け入れろ。そして鐘の音を聞いてはいけない。

死者が来る。
追いかけて来る。
殺しに来る。
目を離した奴らは死ぬ。
振り返るな。
生き残るんだ。

そして針を捜せ!!



















スイコ「今回の第2ゲームにはルールがあるからよく聞いてね。
・第1ゲームを覚えていない
・皆、駒である
・この館には10人いる
・櫂(架耶)のお祖父の手紙は存在する
・傍観者も参戦


あぁ、あと大事なこと忘れていたわね。傍観者の私達も参加するから行方不明にはならないわ。ついでに駒を創っておいたわ。


・スイコ
⇔ステラ
年齢:不詳(本人曰く永遠の18歳)
職業:館の使用人。使用人長であり三姉妹の長女。

・コーリン
⇔カリン
年齢:21
職業:館の使用人。主に料理担当。次女

・レッカ
⇔レレナ
年齢:18
職業:館の使用人。主に掃除担当。三女
さて、ごゆるりと堪能し、存分に殺し合って下さいませ」








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